w/Jo(4)
男というのは、好きでもない女に「デートしよう」だなんて言うものだろうか。なんでもない日ならまだしも、クリスマスである。
"男友達とクリスマスにデート"
この恋に、勝機はあるのだろうか。あるとしたら、それはいつ分かるのだろう?
私はジョウに恋をしてからというもの、自分が案外早く答えを求める女だということが分かった。
嫌いなら嫌いで、早く言ってほしい。それならあなたのことを早く忘れられるし、今ならまだ引き返せる気がする。きらきら輝く20代の大事な1年と少しを、私はもうあなたに捧げているのに。
本音は、こんな所だろうか。自信のなさを隠すように、そんなことを考えていた。
クリスマスのプランは、デザートビュッフェを食べたあと、表参道のイルミネーションを見て私の家に泊まるというものだった。
甘党のジョウは、お洒落な見た目のスイーツに舌鼓を打ち、ひとつひとつに彼らしい言葉で感想を言った。
すっかり、彼に対して冷めきっている自分がいた。彼がクリスマスにデートをしようと誘ってきた理由も、どうせ邪な、下心があっての事だろうとすら思い始めた。
自分勝手な女である。
「クリスマスの表参道ってこんなに人がいるんだね」と言う彼に「表参道はいつも人がいっぱいだよ」なんて、冷たく言ってしまった。
もう、好きな気持ちは5%くらいしか残っていない。
家に来た彼にも、「掃除があんまり行き届いてないけど、ゆっくりしてね」としか声をかけられなかった。彼にとって、私はホテル要員でしかないのだろう。
東京にうまいこと、自分を泊めてくれる優しい女がいる。味をしめて、会いに来たんじゃなかろうか。
まぁでもいい。
クリスマスにバイトをしなくていい安堵感は何にも変えられないし、今の気持ちはどうであれ彼との時間に楽しい瞬間があったのも、また事実なんだから。
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彼は山に登る趣味があって、寝袋を持っているという話は前に聞いていた。
秋にジョウと会った時、半分冗談で「泊まる時寝袋持ってきたらいいよ!」と言っていたのだが、彼の持つ大きな荷物の中には寝袋も含まれていた。
嬉しそうに寝袋の機能の説明を始める彼を見て、なんというか、彼との空間を俯瞰して見ている自分に気が付いた。
これが冷めているということなのか。
彼に対して、もう今は1%も、気持ちが残っていなかった。
嬉しそうに話す彼の声はだんだん遠くなっていく。
もう、なんの感情もわかない相手の話を聞くと言うことが、無駄にすら思えていた。
彼もそんな私の気持ちを感じ取ったのだろうか。
はたまた、彼も同じ気持ちだったのだろうか。
彼と肌を重ねるなんて世界線は、少なくともその年のクリスマスには存在していなかった。
1ヶ月前、彼はどんな気持ちでクリスマスデートに誘ったのだろう。
キスのひとつでも、したかっただろうか。酒の勢いに任せてでも、なにかが私と彼の間に起こるべきだったのだろうか。
もう、その答えは今となってはわからない。
あれから1年経った今でも、私は彼のことを時折思い出す。
好きな人は、まだいない。
彼はまだ、私の心にいる。
私は随分、身勝手な女だった。
そして最後に。
男も女も関係なく、人間は好きでもない相手とでもクリスマスにデートはできる。