【J1開幕】vs.アルビレックス新潟―たとえば産まれたてのバンビちゃんのような(2/28 加筆いたしました)



試合は週明けにまた見直し、試合内容についてはおいおい加筆いたします。とりあえず開幕戦でテンション上がったので取り急ぎの感想だけ。


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(2/28加筆)試合内容について加筆しました。新潟の仕上がりっぷりと広島の型破り=脱皮の困難さがまざまざと…という試合だったと言えそうです。


◆メンバー



広島は林卓人、柴崎晃誠、森崎和幸、佐々木翔、アンデルソンロペスと昨年の主力が続々と離脱中。過密日程の調整不足はまだ弁解の余地があるにしてもこのガラガラ日程で負傷者続出というのは…w そういうのは"選抜"とはいわないんじゃないでしょうか

新潟は三浦文丈新監督の船出。ヤノキショーさんはやはり貫禄のSB。高卒ルーキーの原の出場も話題となりました。工藤壮人と冨澤清太郎の50番対決も見もの。


◆試合展開


・不徹底と徹底

広島は立ち上がりからキャンプで見せた高い位置取りのサッカーの意欲を見せていましたが、新潟の徹底した4-4-2の狭い守備網と完全に噛み合ってしまい、自分で自分の首を絞めてしまった試合になってしまいました。

キャンプ中はフェリペのキープ力を頼みにした柏好文と青山敏弘との3人の関係で敵陣に攻め込むことで得点を重ねてきていましたが、それがほとんど出せず。カウンター時には出せていたものの新潟の戻りの方が早くフィニッシュまでは持ち込めませんでしたし、奪われた際の奪い返しの動き自体はありましたが、プレッシャーのタイミングが合わず逆に相手にチャンスを与えることになってしまいました。

新潟の守備は2トップと2列目が青山とシャドウへのパスを優先して塞ぐオーソドックスなものでしたが、なにせ動きにムラがなく、CB→SB→WBまたはシャドウへの各駅停車ののちSHが急襲して3人で囲むという狙いが徹底されており、非常に難儀しました。新潟の右サイド加藤と原がフェリペと柏に全く余裕を与えていませんで、見事でした。前半の走行距離のトップ2であったのも納得の徹底ぶり。

攻撃時は広島のポジションチェンジによって生じるWBとストッパーの間の位置でスピードのあるホニが仕掛ける攻撃に集中し、ラインのコントロールやスペースのケアに難のある…ぜんぶ千葉ちゃんがケツを拭くスタイルになっている、これが失点の理由にもなりましたが…広島の守備陣を四苦八苦させました。立ち上がりの広島のミスを突いた決定機2つのうち1つでも決まっていれば新潟の圧勝であったかもしれません、というくらいの、ちょっと前の浦和戦くらいのハメられぶりを感じました…w

それに対して広島も千葉→工藤の一つ飛ばした展開や、ミキッチが縦をにおわせることで空けた横の空間(贔屓目)を活かす森島司を中心に攻め手は出せていたものの、強かな奪取と反撃を工藤壮人さんの戻っての守備でなんとかしのぎながらという劣勢で前半は終了。


・修正と圧倒

後半、少し開始位置が下がり、SHがシャドウへの縦のコースを塞ぐことで空いたサイドのスペースをウイングが使っていって、そこで出来た時間で塩谷が上がっていこうということになりました。森島は本当に周りを見て動くのがうまい。映像の都合で見えませんでしたが、強く当たっていけ方針の新潟の守備を逆手に工藤壮人さんが動かしたのでしょうか、中盤にスペースがうまれつつありました。

位置が下がったことで逆に引き込んでのカウンターで新潟の徹底した攻守の動きに誤差を作ることが出来つつありました。残念ながら計画通り、というにはお粗末な撤退ブロックであったのですが(新潟に比べちゃうと特に持ち場に戻る速さがとろとろだし一人一人適当なんですよね…w)、結果としてカウンターは打ちやすくなり、ペナルティエリアに入り込む頻度は明らかに増えました。

ただ、ここの行きつ戻りつ展開でキャンプ最大の出来であった柏好文が負傷交代…よのなかよ…みちこそなけれおもいいる…やまのおくにもしかのなくなる…


・先制と失点

この修正を先制点という結果に結びつけたのは非常にポジティブな部分でしょう。さらには先制後なぜかこのタイミングでフェリペと森島がスイッチすることで優勢は確かなものとなりました。塩谷の兄貴が喜々として攻め込み奪われても自らとーるをやっていたのは楽しかったですね。60分あたりからの10分弱は"広島らしい"展開と言えましょう。

ただそれが60分までなぜかかったのかということ…そして”広島らしい"時間があまりにも短く、そして儚いということ…それがこの試合の最もネガティブな部分。前半から何度も見せていた欠点がそのままとなった同点シーンはその象徴であり、”メンツは変わった、だが何も変わらないではないか”というお題が今季も続くものであると示唆しておるのでしょう。この試合に関しては塩谷のマッチアップ優位が明らかであったので、もう少しゴリゴリ突破以外の選択肢を作ってほしかった。


・退場と膠着

ストッパーの前と裏のスペースの対応とともにある宿題として、ストッパーにボールを渡すときの次の展開の少なさがあります。もちろんどちらもミシャ・テンプレート研究の熟成によるところが大きいのでしょうが、”選手の質を変え密着状態を捩じりきる”以外の選択肢が今のところ見せていないのが何より優先して解決してほしい課題ですし、それは3-5-2の運用時に顕著に表れています。

この試合でも新潟の球際に強くいく守備の弊害として生まれた数的優位を活かすことなく、中央の密集地にボールをぶつけて時間を浪費して終わりました。最終ラインから佐藤寿人にアバウトなボールをぶつけるという愚行よりはいくらかはましでしたが、ズラタン・イブラヒモビッチやマリオ・マンジュキッチも苦笑いするような裸一貫の肉弾戦を皆川佑介にやらせるのはちょっと不憫。



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◆感想

・いくつかの変更点について

キャンプ中に伝え聞いていた変更点がきちんと見られたことは明るい材料でした。まあ、それが利となるかは結構なハードルになりそうなんですが


①敵陣でやろーぜ

青山が敵陣に入り込み、そのサポートに稲垣が入り、奪われた際は即座にシャドウと囲んで棒でたたくという形はムアントンとの試合で非常に機能した攻撃的な形でしたが、この試合でも見ることが出来ました。

ただ、セットした際の2人の間に落ちる浮き球の分担であったり、最終ラインからの配球、そして前プレ時のアプローチのタイミングの齟齬とかなりの部分で難があり、明確な弱点として新潟に狙われることになってしまいました。 


②工藤壮人の献身

それでも中央エリアで奪われた際以外は昨年は出来なかった撤退して我慢ができるようになっていました。工藤壮人が蓋をしてくれ、アバウトなロングボールにも体を張る佐藤寿人仕事をしてくれたことによります。

2シャドウとの連動も悪くなかったのですが、足元には強くいけという新潟守備陣の徹底の前にシュートはほとんど打てませんでした。それでもCKのこぼれだまを沈めたのは流石。


③廣永遼太郎の救世(グッセー)

林卓人負傷をチャンスにプレシーズンマッチでめきめきと頭角を現した廣永遼太郎。ペナルティエリアに入った時に少し速く動きすぎてしまうDFを信頼しきれていない感じなのが玉に瑕だったのだけど、ホニにちゃぶられまくったチームを救い続けてくれた。失点は中央のカバーがちょっと指示できてなかった感じでしょうか。塩谷がブラインドになってしまい為す術がなかった。

バックパスをダイレクトでつなぐ際のそつのなさは貴重なので林卓人の復帰、中林洋次のフィットまでに間に合ってくると面白い。

  

④森島司の勇躍

まあ、去年ACL見たときにこれくらいやれるって知ってたから。

いや、嘘です。この試合一番驚きました。パスコース作り良し、トラップ良し、間接視野でのダイレクトプレー良し、そして新潟のプレッシャーが緩まってきた時間帯での圧巻のドリブル。決まってれば今節ベストゴールだったのでは…

前線停滞打破の当初の目玉はフェリペでしたが、それに負けないくらいに躍動していましたね。モリシ君のエネルギッシュなプレーぶりを90分見つめるだけでもスタジアムに行ったり映像を見る価値が出てくるかもしれません。

できればゴール重ねてからバレてほしかった…次節はめっちゃマークされそう…  


・変更点は改善点なりや

ただ、残念だったのは、これらの変更点が今のところ選手が変わっただけということに終始してしまってて、それが相手チームにばれてしまっていること。

敵陣でのプレッシャーは541状態では人数不足は否めずDFラインに大きな穴をうみだしてしまったし、攻撃も森島とフェリペの判断が優れていたのでペナルティエリアまでは見栄えが良かったのだけど、独力でマークを引きずって持っていかないと決定機にはさせてもらえなかった。

ウタカなら入るけど、ウタカじゃないから入らない。入らないし、バランスを崩しての侵入しか敵陣でボール支配する手段がないので、勝っていても無理をしちゃうしカウンターでちぎられるということになるのではなかろうか。

新潟は徹底されてはいたけど、完成していたかといえばさほどでもなかった。フェリペのスイッチと塩谷のインナーラップで再現性のある展開を作れそうだったけどそこからどうするかがなかったよねという良いモデルケースとなった試合でしたかね。

果たして昨年同様のお茶濁しの変更点になるのか待望の改善点になるのか。2016シーズンのあがきを昇華できないとちょっと流石にそろそろJ1からおいて行かれそうなので証明してほしいところ。


・たとえば産まれたてのバンビちゃんを見守るような

とはいえ、大きなくびきになっていた敵陣での停滞感を打破できそうなタレントを用意できそうなのは明るいニュースで、穴ボコで逆手に取られていたとはいえ高い位置でボールを持つ時間を増やそうという守備と攻撃もチャレンジ自体は多く、ポジティブな内容だと思います。

モリシ君のごぼう抜きが決まって伝説になっていればこんなトーンの記事にはならなかったろうし、立ち上がりの混乱で失点していれば解任論を挙げるテンションのゲームになっていたかもしれない。

多分それは生まれたての不安定さ。新しくなった点の多いチームらしい初々しさだったと解釈しつつ、新シーズンの訪れを享受したいです。


・大天使報

ミハエル・ミキッチさんがジュニーニョ氏(川崎F)に並ぶ同一クラブ最長タイの9年連続リーグ出場を達成しました。マジ天使。



では、名古屋の夜を満喫してきます…それではみなさん、あけましておめでとうございました。明日は広島を出る喜びスペシャルを名古屋よりお送りいたします…