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【漸進という魔術】清水エスパルスとヤン・ヨンソン監督のあゆみ(1)

サムネイルは清水エスパルス公式サイトから

改めまして、2018シーズンお疲れ様でした。オフシーズンの手慰みとしてシーズンの振り返りをしていきたいと思います。目標は補強の話が固まってくる頃に締めくくるという感じですが、なにぶん年末ですゆえ予定は未定です…

予定は今のところ以下の通りです。

目次(予定)

(1)2018シーズンを数字で振り返る ★今回はココの話をします
   1-1.成績
   1-2.攻撃
   1-3.守備
   1-4.まとめ
(2)前半戦感想まとめ
★(1)公開後にアンロックされます  
   2-1.***
   2-2.***   
(3)後半戦感想まとめ
★(2)公開後にアンロックされます
   3-1.***
   3-2.***
   3-3.*** 
(4) ***    
★(3)公開後にアンロックされます。

ということで早速ですが始めていきます。今回はもっぱらチーム全体の数値にのみスポットを当てます。実際の個々のプレイ内容や戦術面の振り返りなどは(2)以降に分ける予定です。

(1)2018シーズンを数字で振り返る

今回は得失点数やその他試合スタッツで今季を振り返るセクションとなります。特に今季はW杯による1ヶ月以上に及ぶ中断期間が特徴的でしたので、中断期間前後の平均値を比較してみます。便宜上、W杯までの15試合を「前半戦」W杯後の19試合を「後半戦」と呼ぶこととします。

なお、すべての数値はfootballlabによる各試合スタッツを筆者が集計したものに基づいています。また、データ利用可能性の観点からリーグ戦に限った内容となっています。各種媒体でのデータと異なる可能性があるのでそのあたりはご了承ください。大きく論調が変わる場合は考え直します。。。

1-1.成績

まずは単純に勝ち点と得失点といった「結果」の部分から。

①勝ち点
リーグ計:49 
前半戦平均:1.2 
後半戦平均:1.6 
増減率:+33.3%

開幕4戦を2勝2分とスタートダッシュに成功しますがその後5戦で1分4敗と大ブレーキ。その後は勝ったり負けたりで安定せず前半最終戦の川崎戦も前半で早々に勝負が決し最悪の折り返しに。
しかし中断期間に異例の16連休でリフレッシュを図ると、戦術面でのブラッシュアップも成功し、中断明けを3連勝。残念ながら鹿島戦でのAT決勝弾で再びトンネルに入ってしまい残留争いが危ぶまれる事態となりますが、FC東京戦と磐田戦で会心の連勝を挙げたことでチームは急上昇。
これまでのロスで上位争いには間に合わなかったものの残留を危なげなく確定させ7戦負けなしでシーズンを締め括ることができました。
前半戦から後半戦にかけて勝ち点の獲得ペースは33.3%の増加となりました。その要因を以降のスタッツの比較から確認してみましょう。

②得失点

得点
リーグ戦計:56 
前半戦平均:1.3
後半戦平均:1.9
増減率:+53.7%

失点
リーグ戦計:48
前半戦平均: 1.40
後半戦平均:1.42
増減率:+1.5%

成績向上の要因が得点力の急上昇であることが非常によくわかります。はいはいドウグラスドウグラス、ということですね。詳しくは次回以降に触れる予定ですが、後半戦19試合のうち15試合に出場して11得点は明らかにおかしいし、その煽りを受けてか一時は得点がぱったり止まってしまった北川君の順応ぶりも見事でした。9得点のまま3ヶ月近くゴールがなくノイローゼだったという金子も最後は持ち直したのでよかったです。澤登氏が現役だったとき以来の3名の2桁得点選手誕生とのことで、その結果得点力は川崎に次いで横浜と同点の2位タイということだそうです。引き抜きが怖すぎる。
対して、失点は微増という結果に。(小数第一位まで揃ったので第二位まで表示しています)
前半戦のクリーンシートがわずか2試合だったのに対して後半戦は6試合あったのに失点が落ちていないとはどういうことだ、という部分が上位進出の鍵になりそうですが、その辺の話は次回以降の宿題としましょう。

1-2.攻撃

今度は得点にまつわるデータを比べてみます。ゴールが増えた理由はなんじゃい、というのがわかるといいなあというところです。ここからはデータ項目が多いので簡易表記とします。

①シュート数と敵陣への侵入回数

凡例 
項目名:リーグ戦平均 前半戦平均→後半戦平均 (増減率)

シュート数:12.6 11.9→13.2 (+11.3%)
枠内シュート率:33.6% 31.6%→35.1% (+11.4%)
ゴール決定率:12.6% 10.9%→14.3% (+31.1%)
30mライン侵入回数:39.7 39.0→40.3 (+3.4%)
PA侵入回数:13.4 12.5→14.1 (+12.7%)

数値としては上昇基調であることはわかりますが、シュート数や敵陣深くへの侵入回数といった、チャンスそのものの回数を表しそうな指標はそれぞれリーグで12位、14位、13位と決して良いものではありません。それでもこれだけの得点数を叩き出したのはなぜか。数値上のヒントがあるとすれば「シュート成功率」すなわち”決定力”にあたる数値の向上にありそうです。こちらの数値はリーグでも2位にあたり、決して多くはないチャンスを得点に繋げているという部分が今季のエスパルスの特徴であったと言えます。PAの侵入回数は増えているので、崩しの質が向上したことによって決定率が向上したと考えられそうです。ドウグラスとか言わんといて。

②クロスとドリブル

クロス回数:17.9 19.0→17.1 (-10%)
クロス成功率:26.3% 24.9%→27.6% (+10.8%)
ドリブル回数:12.3 10.6→13.7 (+29.1%)
ドリブル成功率:43.3% 37.7%→46.2% (+22.3%)

クロス回数は4位とリーグ上位になっていますが、前半戦から後半戦にかけて減少しています。得点数自体は大幅に増えており、チャンスの回数自体も増えてはいるので、崩しの内容が変化したことが示唆されます。これはドリブル突破の回数と成功率が大きく上昇していることとも整合的でしょう。突破してフリーであればショートパスによるマイナスの折り返しが選択肢となりえますからね。敵陣で持った時の崩しの選択肢も時間を追うごとに増えていったように感じています。ドウグラスが一人で持ってっただけやろとか言わない。多分半分くらいはそうだろうけど半分くらいは違うと思う、という話を次回以降やりたいなと思っています。

③パスとボール支配率

パス数:389.1 409.1→373.4 (-8.7%)
パス成功率:72.8% 72.0%→73.4% (+1.4%)
ボール支配時間:24.3 24.7→24.0 (-3.0%)
ボール支配率:44.1% 44.8%→43.6% (-2.7%)

今季の清水エスパルスの大きな特徴の一つがボール支配率の低さ。Vファーレン長崎を抑えて最下位ということになっています。(optaの集計では長崎が最下位の様ですが非常に僅差です) 
ただ、これは後述しますが、前半戦と後半戦とではいささか意味の異なるデータであると考えられます。もちろんドウグラスという分かりやすいターゲットのおかげで速い攻撃に傾倒したということも事実と思われますが、前半戦は先制した試合が5試合/15試合であったのに対し、8試合/19試合と増えたことで逃げ切り態勢を取りやすかったこともあるでしょう。
なお、シーズン当初は守備の注文が多かったですが「繋げる時は繋ごうよ」という志向はあります。しかしながらボール支配率で上回った試合では未勝利(2分4敗で引き分けた試合も3-3,4-4という酷いスコアですw)に終ってしまいました。わかりやすい課題として来季以降取り組むことになるでしょう。私が対戦相手だったら絶対にボールを持たせますね…w

1-3.守備

DFラインの高さやボールゲイン位置、エリアごとのデュエル数や勝率、さらにはGKのパフォーマンスデータすらも取得できないためそれぞれの試合における相手チームの攻撃スタッツの平均値を間接的な守備の指標として用います。まあプロ仕様ではないので勘弁してください。(ここ数年でファンでもそういうことができそうという空気を感じつつあるのは嬉しいことです)

①相手のシュートと侵入回数

被シュート数:13.5 13.3→13.6 (+2.8%)
被枠内シュート率:35.2% 36.2%→34.4% (-5.0%)
被ゴール決定率:10.5% 10.6%→10.4% (-1.2%)
被30mライン侵入回数:49.0 47.9→49.9 (+4.1%)
被PA侵入回数:15.9 15.87→15.89 (+0.2%)

まずはどれだけチャンスを作られたかという部分。前半戦と大きく変動していません。リーグ全体としても中の下と言ったところ(被シュート数10位、ゴール成功率12位)。自陣でボールを持たれる回数は増えており、押し込まれる時間は長かったと言えます。六反様があれだけ激しくお止めになられてこの成績というのは結構な反省材料ですね…w
ただ、枠内シュートの微減は最終局面での守備は少なくとも良くなりつつあるのではないかと感じさせます。まあ、リーグ平均は32.3%なので普通のチームよりも枠内に打たれているのですけれど…

②相手のクロスとドリブル

被クロス回数:18.6 18.5→18.7 (+1.5%)
被クロス成功率:21.3% 23.1%→19.9% (-13.7%)
被ドリブル数:13.8 13.9→13.8 (-0.6%)
被ドリブル成功率:48.9% 51.4%→47.0% (-8.7%)

クロス、ドリブルを仕掛けられる回数はやはりボール支配率の低さにより相手の方が多くなる傾向がありますが、前半戦よりも後半戦の方が相手のクロス、ドリブルを阻む割合が大きくなっています。確かに4バックのクロス対応、PAでの守備は日に日に良くなっているように感じられました。クロス対応なんかは特に中断期間前後では口酸っぱく言っていたと記憶しているのですが、そういうこともシーズン終盤には無くなりました。まあ、とはいっても失点は全然減っていないんですがね。それはなぜだろう、と考えてみることがオフシーズンの愉しみになってきそうです。

③相手のパスと自軍のタックル数、インターセプト数

被パス数:545.9 544.5→546.9 (+0.04%)
被パス成功率:79.6% 78.4%→80.5% (+2.7%)
タックル数:20.0 21.6→18.7 (-13.3%)
タックル成功率:77.8% 78.1%→77.5% (-0.7%)
インタセプト回数:2.7 2.2→3.1 (+41.1%)

パスが繋がれているというデータに関してはDFラインやタックルラインの高さが分からないと何とも言えないところですが、おそらく先制した試合が増えたことに起因するのではないかと思われます。チャンス自体の数・失点数は変わってないと先に出ておりましたので、特別に守備が機能しなくなったというわけでもないでしょうし、逆に理想通りであったというわけでもないと思います。インタセプト回数の増加は前線プレス向上の現れと取れそうですが、タックル指標の低下は懸念材料です。

1-4.まとめ

ここまでスタッツを見てきてわかったことをざっとまとめてみます。

1.後半戦尻上がりに勝利を上げることが出来たことが躍進の要因
2.後半戦の躍進は決定率が劇的に向上したから
3.決定率の向上は崩しの質の変化と改善が要因だと考えられる
4.崩しの対応とインターセプトは向上したが失点減少には繋がらなかった

今季の清水エスパルスは結果だけ見るとこんな感じだったよ、という感じですかね。

思ったより長くなってしまった…次回以降はこれらの数字の裏付けとして、実際に試合を見た感想のまとめをやっていくつもりです。

次回予告。

(2)前半戦の感想まとめ
2-1.早々に固まったゲームモデルとメンバー
2-2.浮上するいくつかの課題

それでは。また次回。