【無失点は"良い攻撃"の賜物】清水エスパルスvs.鹿島アントラーズ(J1第1節)
◆お断り
あけましておめでとうございます。2018年もJリーグが始まりました。
今まで試合内容の90分間をいくつかのセクションに分けて要約→試合の感想という形で記事作成を行ってきましたが、試合を見たいクラブがかなり増え時間的に厳しいものがあるので、今季に関しては、気になったtopicを思いついたままにガンガン書く形で行こうと思います。
特定のクラブ一本を一年やる形というよりは現地に見に行った試合や特にいいなと思った試合に関して書いて行こうと思います。しょっぱなはヤン・ヨンソン監督の清水エスパルスです。
◆試合情報
メンバー
交代 清水 68分 石毛→ミッチェル・デューク、71分 北川→鄭大世
鹿島 67分 安部→山本、76分 遠藤→土居、84分 内田→ペドロ・ジュニオール
レポート
すでにAFCチャンピオンズリーグを2試合消化し、さらに1勝1分と順調な仕上がりを見せている鹿島に対して、ホームの清水はこれが今季初の公式戦。下馬評では鹿島の有利が伝えられていたが、蓋を開けて見れば、そう簡単なゲームにはならなかった。
試合は、序盤から完全に清水のペース。11分には、ペナルティーエリア内の混戦からクリスランが左足で強引にシュートに持ち込むと、これはポストに直撃。そのボールを松原 后が狙うがゴールを外れる。さらに13分には、遠藤 康のパスを奪ったクリスランがドリブルで独走。ラストパスを送ると、北川はシュートに持ち込むがこれはGKの正面。さらに16分には、相手のパスをカットした河井 陽介からクリスラン、竹内 涼とつないで最後は北川。このシュートも決まらなかったが、ゴールの予感は漂っていた。そして40分、金子 翔太のクロスに対し、中央に走り込んだ石毛 秀樹がレオ シルバに倒されてPK獲得。絶好のチャンスに、クリスランがボールをセットする。クリスランは助走からクォン スンテに揺さぶりを掛け、ゴール右を狙ったが、これはキャッチされてしまう。清水は先制のチャンスを逃した。ただ、前半終了時点で、シュート1本の鹿島に対して、清水は7本と試合を支配していた。
「上手くいかなくても下を向かず、全員で戦おう」と大岩 剛監督がハーフタイムでコメントすると、ようやく鹿島は本来の力を発揮する。67分、レオ シルバの右CKから、清水DFは鈴木 優磨を離してしまう。鈴木はニアでボールを流し込もうとするが、これは六反 勇治のファインセーブ。さらに、終盤にかけて清水陣内でのプレーが続くことになるが、その度にディフェンスが体を投げ出してブロックしていた。清水は昨季、終盤に失点を積み重ねてきたが、「失点をゼロで抑えられたのは、11人が守備をしていたから。1回で終わるだけではなくて、2回、3回とみんながボールを追うし、食らいついていた」と竹内が話すように、チーム全員で最後まで守り抜いて完封。惜しくも勝利を逃したが、昨季2連敗した鹿島から貴重な勝点1を奪った。
◆ハイライト
◆かんそう
「コンパクト」「オーガナイズ」とは何かを教えてくれるヤン監督
まず第一にヤン・ヨンソン監督のサンフレッチェ広島での仕事は急場しのぎに過ぎなかったということがよくわかる試合でした。広島でも片鱗は出ていて、その時点で相対的に良すぎたので涙が出るほど感動したのですが、十分な準備期間と補強があったことで真のヤン監督のサッカーはそういうことなのかとわかってきた気がします。去年の広島の1.5倍速くらいで試合してたね。感RUI。
鹿島の特徴であるSB起点の密集攻撃を逆手にとってFWの頭を押さえるファン・ソッコとフレイレ、巧みなポジショニングでインターセプトとビルドアップの成功率を高め試合を支配した竹内と河井のダブルボランチからクリスラン・北川を走らせる速攻で3点分くらいの決定機を作れていましたし、しっかりブロックを作って奪ったボールを最終ラインから状況でも細かい動き出しでシュート機会を作れていました。なお、こちらはほぼ北川の仕事で、交代してからは見られなくなったことが劣勢につながったように思えます。"良い守備からの良い攻撃"は何もカウンターだけを指すわけではないのだよということがよく分かる例でしょう。
特に貢献度が高かったのは金子と石毛の両SHでした。鹿島の核となるSBに対する守備、縦パスを受けに下がる金崎や鈴木への囲い込み、そして奪った後のカウンターの急先鋒とクロスへの飛び込みとスプリントすべき場面がまあむちゃくちゃ多かった。良く攻守をリンクさせていたと思います。
後半からは鹿島がCB間を開きボランチから運ぶようになったことで(三竿健は本当に嫌な選手だと思いましたw)、清水の攻守のキモであったSHが振り回されてしまい、攻撃につなげられない局面も増えてしまいました。それでも焦らずに持ち場を修正して二度三度とチャレンジする様は「オーガナイズ」とはこういうことであるなと改めて感じさせてくれ、楽しい視聴になりました。
"良い攻撃"を相殺してしまったゴール前判断
とはいえ、得点できなかったという課題も明確であり、特に鹿島のDFラインの裏を突いてペナルティエリアの角のあたり(ペナ角)へフリーで抜けたにもかかわらず、止まってしまったり、パスを選択してしまったりして相手の守備が間に合ってしまう状況も少なくありませんでした。
「北川ないしクリスランが抜け出す」もしくは「ボランチのサイドチェンジ」から「同サイドのSHやSBがサポートする」間に「クロスに逆サイドからSHやSBも飛び込み」「ボランチとCBはセカンドボールを狙う」という攻撃の型は何度も作れていたのですが、それ以外の形はまだうまく出来ていないようです。ボランチが敵陣深くまで抜け出すという形にチャレンジしており他の引き出しもあるでしょうから、心配するほどではないとは思います。
それにその型だけでも十分決定機は生み出せてはいましたからね…そもそもPKを含めて決め切っていればという話でもあります。これもまたこぼれ球や相手守備の予測がうまくいかなかったという微調整の次元でしょうから、早めに結果を出してメンタルを上向かせたいところ。
交代やターンオーバーの最適化は長い目で見たほうがいいです(経験談)
押し込まれた状況で投入された強さのあるデュークと鄭大世という交代カードは二人で敵陣に攻め込む時間を作れたのである程度機能したと言えるでしょう。欲を言えば、もう少しゴールに向かう精度が必要だったなというところでした。カウンターやクロスに対するポジション取りが良くなく、決定機になりそうな場面が易々と防がれてしまっており、両者ともにオープンな展開となっていただけにもったいなかった。お疲れで前半のような逆サイドのサポートが遅れたというのもありますが、オープンでしんどい展開ですと同サイドで縦に運んで決め切る力を求めたいところです。
ただ、交代カード問題についても昨季の短い経験から言えば継続していけば徐々に解決するはずです。核となる部分は早くも固まっていそうなので、そこからスタメン争いを促し上積みしていくことはできるでしょう。
リーグ序盤のカードは比較的恵まれていると思うのでしっかりと勝ち点をかせいでほしいところ。怖いのは内容は良くても勝利があげられず疑心暗鬼が始まることです。結果を出しつつ完成度を高めていくことを期待します。
では。