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金子の評価が低すぎるので反論しようと思いました【J1第30節 清水エスパルスvs.サンフレッチェ広島から】


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https://www.s-pulse.co.jp/games/result/2018102006/



先日の広島戦、素晴らしい試合でした。


カウンターを封じられた際のビルドアップ、リーグ最低レベルのセットプレー得点力、首尾よく先行しても相手の修正になすすべなく失点し押し込まれる戦術的なナイーブさ、清水エスパルスの上位進出を阻んできたハードルを(不格好ではありましたが)全てクリアすることのできた試合でした。相手の対策も精度・練度の増していく終盤戦でこういった「強い」と言える試合が出来たという喜びの大きさはこれまでの勝利のなかでも格が違いました。

さらにこれらの成果がベストメンバーではない状況で生み出されたということ。不動のバランサー河井さんの負傷でチャンスを得た石毛が、加入早々11試合9得点2アシストの怪物ドウグラスにはチョンテセが、それぞれ躍動して掴んだ内容と勝利であることがその意義をぐっと深めました。

とくにここ数年清水エスパルスの象徴であるチョンテセの復活ゴールはチームとサポーターを大いに勇気づけるものでした。今年しかエスパルス見ていない自分も雰囲気だけでちょっと泣きそうなくらい選手もサポーターも喜んでいましたね……


白状すると、FC東京戦、ジュビロ磐田戦はヤン監督の最後かもしれないと思って現地に駆けつけたわけなのですが、全くの杞憂で、シーズン当初に思い描いていたブレイクスルーが起きつつあります。北川航也さんは予想外でしたけれども。選手のみなさんには感謝しかありません。

優勝を争う位置にいる広島を相手にこれだけの試合が出来たわけですので、語るべき/語りたいことはいくらでもあると思いますが、いくらでもありすぎて無理(オタク並みの感激)なので、今回はちょっと気になった部分だけに絞って書いていきます。というのも、よくある試合後採点遊びで金子だけ低すぎひん?という話です。

30 金子翔太 5.5
守備では奮闘したが、攻撃ではボールタッチや動きにいつもの冴えがなく、58分のチャンスも決めきれず。


まあ、こういう採点は一貫性があり検証が可能である明確な採点基準が存在しない単なる遊びでしかないわけなのですが、他の選手同様に求められた役割を十分に果たした金子翔太だけが及第点未満という評価は不当でしょう。
それに対する意見具申、という便乗丸出しで恐縮なのですが、そういう形で今節の感想を記したいと思います。
(「エルゴラッソ」も確認しましたが、こちらの評価は妥当だと思いますので噛みつきませんw)



0.低評価の理由について


低評価の理由はチャンスメイク、決定機の少なさが挙げられています。

今季の金子翔太は4-2-2-2におけるシャドウとしておおまかに

①相手SBへのプレス
②ブロック内でSBとDHのカバー
③ハーフスペースでの攻撃の加速
④逆サイドからのクロスのフィニッシャー

このような役割を果たしています。特にドウグラスが加入するまでは③・④がエスパルスの唯一ともいえる再現的な得点手段となっており、第30節までの9ゴール5アシストのうち6ゴールはW杯以前で記録したものです。

ドウグラス加入以降はクロスの供給役に比重が置かれましたが変わらず複数の決定機を生み出しています。その基準で言えば今節の内容は確かにチャンスメイクも自らシュートに持って行った場面もほとんどありませんでした。

ただ、それは相手との兼ね合い―試合ごとに変わる相手選手の質と狙うべき場所やプレイ―によって左右されるものですし、勝利を目指す以上はそうあるべきものです。試合ごとに微調整され変化しうるこういった「役割」が果たせなかったのであれば評価は低くなって然るべきですが、今節の金子翔太についてはその限りではないでしょう。という話を今からやっていきます。



1.そもそも広島のプランを崩壊させたのは金子の強さなんだけど


まずゴールやチャンスメイク以外にも「結果」というものはある、という話。それは広島のゲームプランをぶち壊したのはまさに金子翔太だったという事実です。

この試合実は広島も不動のスタメンをはずしています。金子と同じくらい仕事の多いウインガーの柏好文です。


柏というカードを持ってゲームを動かしていく狙いもあった。もちろん川辺の調子が良かったのと、柏のカードでゲーム運びの流れを変えたかった。


広島は勝利から遠ざかっていることから柏を切り札としてまずは失点をしないという方針をとっていました。柏のかわりに選択されたのは飛び出して仕掛けるプレイに定評のある川辺。football LABによる記録を確認するところですと左サイドに置かれたのはおそらく初めてだったと思われますが、エスパルスの守備でもっとも連動性の低い金子の裏のスペースを川辺の仕掛けで狙いたい形だったと思われます。

その狙いを覆したのが金子の球際の強さでした。単独でのボール奪取能力は中盤で群を抜いている金子は幾度も自陣右サイドでのデュエルを制し、広島のリズムを崩しました。先制点のCKも金子のところで奪ったところからだったんですよね。

お互いにカウンターで得点を重ねるチームであることから先に失点しないことは何よりも大切でした。その思惑を清水に傾けた金子の強さは評価されるべきでしょう。

※10/23追記
先制点で北川と打ち合わせてマークを引き付けたとのことで、直接的なアシストもあったようです。すいません、見えなくて…



2.稲垣と佐々木ぶつけられたらそら辛いって


ただ広島も全てがダメだったわけではなく、特に守備は堅かったですし、切り替えの早さがえげつなかった。エスパルスの攻撃は、金子が相手の最終ラインの前で前を向くことで攻め上がる人数と時間を得るという形がドウグラス以前で最も決定的なもので、もちろん広島も全力で阻止してきました。

そこで潰しに来るのが、ヴァンフォーレ甲府が誇るデュエリスト、稲垣祥や佐々木翔であったわけで、稲垣は代表には選ばれていないですが、苛烈ともいえるタフネスでボールを回収しまくり、ゴールにも絡んでいます。

金子がボールを受けそうになるときの圧力はちょっとびっくりするレベルで、セカンドボールでもめっちゃ速くて思わず嘘やろとわらってしまったのですが、逆にリーグ最強レベルの掃除屋を相手にボールを失わないように粘りこむプレイはチームを助けてくれました。まあもちろん、ほぼほぼ捕まってしまっていたので、主導権を握って攻撃する機会が無くなってしまって困ったわけですが、清水エスパルスは陣形の変更で対応しようとしました。



3.布陣変更で復活した攻撃の役割


後半の3バックへの変更は、もちろん川辺の出来なかった役割をティーラシンが担ったことによる決定機連発を受けてのもので、SBとして引き出されていた立田をペナルティエリア幅に固定したして対応するというものでしたが、金子の位置をウイングバックにずらすことで上手くいっていなかった攻撃にもアプローチしようというものでした。


全ての選手が良い戦いをしたわけではなかった。上手くプレーできていなかった選手は形を変えることによって助けられた部分もあったと思う

https://www.s-pulse.co.jp/games/result/2018102006/


このヤン監督のフィードバックはおそらく金子も意識して言っていたのではないかと思われます。

広島がリスクをかけて攻めてきたのでスペースがふんだんにあったこともありますが、中盤とサイドの形を変えたことで広島の切り替えの守備をかわし、カウンターにつなげ右サイドから攻めこむ形が増えていました。

ウイングバックでの起用は初めてのはずですが、守備と攻撃での役割は変わっていないので、金子はうまくやっていました。SBとしてスライドしてペナルティエリアでも守ってくれましたね。

※10/23 追記
金子のウイングバック起用は守備固めや天皇杯でやっていました...すいません、見れてなかった....

ハイライトにもあるチャンスの他にも終盤に決定機があったのですが、まあ、どれもミスになってしまったので、印象に残り難かったかもしれません。

それに、「いつもと違う」立ち位置は広島以上にエスパルスの選手も混乱しており、魅力的なダイレクトプレーで味方の立ち位置を勘違いしたミスが乱発してカウンターの大チャンスを大ピンチにしてしまっていました...w ここをおちつかせるのが河井さんの役割だったはずなのですが...w




まとめ.


選手を評価する―だいぶおこがましい表現だと自覚はしているのですがそれでもあえて語るのであれば―というのは「勝利に値したか」ということを基準にする以外ないはずです。そのためには「いかにして勝利しようとしたか」をはっきりさせておく必要があります。

今回は金子が可哀想だったので一例としてやっていくことになりましたが、チームや選手を理解するということはむちゃくちゃ大変だし、難しいことです。そりゃあ全部放り出してウチが全部正義って思った方が楽ですよ。

プロサッカークラブの人達というのはそういうことに人生を懸けているのですし、だからこそ理解しようとする形の一つとしてこういう見方があるのかなと思います。

実際問題相当気張って見ないといけないので愛着もわきますし、漠然とした印象論にすぎなかったものがはっきりと像を結んだ時の面白さもひとしお。もちろん、それが唯一の真実ではありえないですし、何回も考え直したり見直さないといけない時点で、全然「分かってない」わけなのですれど。そういう骨折りは悪くないものです。やや変化球でしたが、今回も記事を書いてみて改めて楽しかったです。

あと4試合しかないと思うと急に淋しくなってきましたが、味わいつくしていきたいと思います。来年はカップ戦で勝ち残ってもっと試合を多くしてほしいですね…w


それでは。