【パクさんをおいかけたい】vs.横浜FC:"美しさは罪"【リーグ109試合目】
上位にわりとボコボコにされてしまい苦しい状況となっている5月。二度目の3連戦の最終戦は首位の横浜FCとの対決になりました。
◆メンバー
パクさんは109試合目になりました。変更点はシャドウに関戸が入ったこと。
横浜FCは予想は442でしたがふたを開けると田所ストッパーの3421。田所は岡山に7年在籍したとあって思うところの多い試合となったでしょう。試合を見るのは2節の長崎戦以来なのでいろいろ変わっており全くアテにならなかった。
余談ですがイバをどこも引き抜けなかったことはJリーグ7不思議じゃないですか…?大宮とか取ればよかったのにな…(取ってたら残留枠が減ってたから危なかった)
◆試合内容
・岡山と横浜の構成の対照について
横浜は非対称なメンバー構成をしていて、職人気質の西河、筋肉とフィードが自慢のヨンアピン、SB的に振る舞える田所というDFラインと高身長とテクニックを活かして足下が得意なイバとライン間で暗躍する野村、裏で勝負するジョンクングン前線とバラエティは豊かになっており、テクニカルなボランチの両名とウイングの運動量がその個性をマリアージュさせる形になっています。
マリアージュのスイッチはイバに当てたところで、成功すればそのままなだれ込み、失敗してもクリアボールゲットになだれこむ、という形をとっていました。
対する岡山はボール奪取と運動量を重視したメンバーという監督コメントがありましたが、まさにそういう選手を揃えた、横浜に対して言えば色の統一されたメンバー構成によって怒涛の挟み込みを展開していきます。
開始早々からイバのシャツを破る炎のホールディングを展開するキャプテン・・・はやりすぎでしたが、横浜自体のバイオリズムの低下が手伝ったフシはありましたが、中盤で前を向こうとする野村と中里と佐藤の両ボランチに対するシャドウ関戸さん塚川君渡邊さんの咥え込みは相当であり、前半からボランチが二人とも警告を貰ったりセットプレーが多くなって怖かったりということも起こりましたが、おおむね横浜から機能性を奪う守備を展開していきます。
・左サイドの圧倒的介護ソリューションと司令塔加地さん
横浜のイバ起点攻撃を抑えた運動量は攻撃時にも生かされました。横浜は前にボールを送った反動で前線プレスという形をとっていましたが、それをウイングからの斜めのボールですかしていき、前線にボールを進めることが出来ました。先制の形となったパクさんのアーリークロスからの豊川のボレーは得点の前にも出せており、狙っていた形だとうかがえるものでした。
これまでの連戦で課題となっていた足下すぎるビルドアップはシャドウの運動量によって改良されています。左は関戸の飛び出す動きに塚川とパクさんが呼応する形。右は加地のボールキープから石毛が貰いに行き、その分渡邊が抜けていく形。一森も参加することで横浜は前線守備がうまくいかず、守備を後手に追いやることができました。加地さんの落ち着きはこの試合で幾度も岡山を救っていくことになります。もはや司令塔といった趣。頼りになりすぎる。
先制は一森のフィードのクリアボールをパクさんがDFラインの裏へ飛び出す塚川へ正確に投げ入れたことによる準速攻から。見事なプルアウェイでヨンアピンのマークを外した豊川をピタリととらえたパクさんのクロス、そしてそれをボレーでゴール左隅に突き刺した豊川もお見事でした。(超叫んだし超ガッツポーズした)
・美しさは罪
後半から野村→野崎と早くも手を打っていた横浜。よりドリブルに特徴のある野崎がグイグイ仕掛けていき、イバも暑さでへばってたのを怒られたのか裏抜けが増え、なによりボランチの佐藤謙介が岡山のブロックの外でボールを保持する動きから縦パスを供給し始め試合の主導権は一気に横浜に傾きました。
オフサイドやミスでギリギリ事なきを得たものの、佐藤謙介のフィードや縦パスはまあ恐ろしく、苦しい状況で率先して積極的かつ正確なプレーで引っ張れるのはさすが首位のキャプテンだなという感じでした。有利な局面になると普通にSBですけど?と攻めあがって数の上でもマークしたうえでも不利を作ってくる田所とかも勘弁してほしい。ゴール前でのFKが増え、きわどいシーンが増えてきました。
岡山はそんな積極性の出てくる横浜のボランチの脇に豊川が突っ込み田所を狙っていきます。田所と豊川のマッチアップは言い争いに発展してこのあたりから田所にブーイングが浴びせられるようになりました。試合が終われば田所に岡山サポーターが長蛇の出待ち列を作ったとこのことで、愛ゆえに、というやりあいでした。いいシーンだった。
豊川への放り込みは中盤の運動量も健在でサポートも早く、ファウルゲットに成功します。パクさんのキックは吸い込まれるようにGKの前で急減速し、久木田のヘッドにピタリ。劣勢に陥りかけた難しい試合展開を一気にひっくり返した貴重な追加点になりました。
最高すぎて言葉にならない。美しい…。美しさは罪…。。。
この2点目が横浜に与えたダメージは大きく、佐藤謙介が前線からプレスをかけ鼓舞し、ジョンチュングン→ジャンボ大久保を投入して左サイドからのクロスを仕留める形を狙うものの横浜はミスを連発。岡山は人数をかける横浜の左サイドの逆を突くカウンターで試合を自分たちのものにします。FK一発で試合を完全に自分のモノにしたパクさん・・・美しさは罪・・・
パクさんがイキイキしすぎてて凄い楽しかったです。スペースを貰えたおかげで最高のサイドチェンジや中央でのフィニッシュ狙いなんかも出来ていましたね。塚川を右シャドウに上げてターゲットとして(のちに藤本と交代して豊川を右シャドウに下げました)左からは石毛がドリブルを仕掛けていくという形でカウンター攻勢を継続しました。
ただ、フィニッシュを誰がするのかという面は全く整理されてなくて被りまくってたのでちょっと笑ってしまいました…ここでしっかりシュートまで作り上げて3点目をとれていればもっと楽な試合になったと思うのですが、その辺は要改善でしょう。
・あくまで徹底の横浜と徹底しきれない岡山
J2界の無敵エアバトラーであるジャンボ大久保を投入した横浜ですが、放り込みはしてきませんでした。大久保はシャドウの位置でふらふらして左サイドに展開されると猛烈にゴール前に飛び込みマーカーを引き連れるという使われ方をされており、あくまでもやるのは最終ラインから繋いでの崩し。イバ→津田の交代も大きく方針を変えるものではありませんでした。(クロスの迫力は増した)
連戦や暑さの問題か岡山の猛烈な挟み込みが効いたかイバがブレーキとなって明らかに機能性は落ちていたはずなのですが、継続しています。このあたりは賛否両論かもしれませんが、イバで勝てなかったし、今や2点差となって自陣で待ち受けることにした岡山に放り込んでセカンド争いにバタバタしてよりキツイカウンターを喰らうよりは、自分たちの親しんだ形で運んだ方が勝算が高いのでは、ということであったでしょうか。
残念ながらミスが多く(ジャンボ大久保はやはりイバほどはそういうのできないので結構な渋滞が起こっていました)、これは正しかったのかというと微妙なところですが、押し込んでいくと岡山のカウンターも単独行の散発となり、試合を締める交代(石毛→大竹)の一瞬の隙に乗じたセカンドボールからの半速攻から田所の抜け出しにクロスボールはFW2人の頭をかすめて大外から新井のボレーが突き刺さり1点差。試合終了5分前にして正しかったぞ!?という空気になっていきます。
大久保が飛び込んでくるところを岡山では上背があるほうなのでどうにかせよという役回りだったパクさんなので大久保についていたところを突かれた形の大外から大外の攻撃。横浜の徹底が生んだ見事なゴールでしたが、岡山の右サイドのクリアボール対応が遅れて田所にフリーで走られてしまったのはちょっとマイナス。
一森は中でFWが合わせる備えをしていて間に合わなかったのでパクさんはシュートの射線から避けない方が良かったシーンでしたね…顔面ブロックになってたら危なかったヤバいシュートだったからしょうがないか…
にわかに活気づく横浜を危惧して豊川→近藤。大久保を抑えられなかったので近藤に抑えてもらおうという形。喜山が左のシャドウに入りました。
しかし、この交代は左サイドの守備の齟齬を招き、前から行く連動がままならないままに喜山が飛びだし、パクさんがついていき、近藤が孤立してしまい、失点直後に続けざまの決定機を招いてしまいます。
失点して勇気づけたかったのかなんなのか、一森が救ってくれ同点は免れましたが、失点直後にチームのコントロールがままならず1対1に晒してしまったということは失点以上に反省すべきことでしょう。失点自体もわりとそうでしたが、こちらがよりイージーなミスでした。
一森に救われたことで引きこもりで一致団結した岡山は難しいファウル判定もあってセットプレー地獄のATを過ごし一森のワンマンショーと化しましたが、なんとかかんとか”首位喰らい”を完遂しました。
◆かんそう
・わかってきたパクさん
いやもう、パクさんおいかけたいおじさんとしては今節の2アシストは至高の体験でした。豊川雄太へは毎試合に近い頻度で決定的なボールを供給できていますし相性がいいというか、彼のスペースへの入り込みが優れているのでしょう。今節も見事なプルアウェーから完璧なボレーシュートを見せました。
また、パクさんが貰ってサイドの相手マーカーを引き付けて空く横のスペースを今節は塚川君がうまく使ってくれており、かなり攻撃がはかどりました。
周囲の選手たちがパクさんを分かってきたことと同様にパクさんの方も攻守両方の全力ダッシュのタイミングが分かってきており、(ほんとうは毎試合できとくべきなんですけど…)今節ではセカンドボール争いで存在感を発揮しました。横パスを展開し損ね大チャンスを大ピンチに代えてしまった塚川君をカバーして頭をばしーっと叩くパクさん…ルーキーとおにいちゃんのマリアージュ…愛…
・"パクさんは添えるだけ"くらいがベストアンサー
2アシストで目立つ形になりましたが、攻撃の主役は加地さんが指令役を司り石毛と切り開いた右サイドであり、中盤では関戸―塚川―渡邊―石毛の4枚のハードワークが攻守で抜群の存在感を発揮。パクさんは関戸さんの裏抜けや塚川君への横パスに呼応したフリーランが主であり、序盤戦での新鮮な役割と比べると至って控えめでオーソドックスでした。外回り以外にも開いたシャドウやボランチに代わって内側に絞ることもあるので、いわゆるクラシカルなウイングとは異なっていますが。
右でおちつけたことでサイドチェンジが可能となったこととパクさんの分も関戸と塚川が飛び出すことで左サイドの足下過ぎ現象は抑えられたことによって岡山のバランスはかなり改善され、横浜のスイッチであったイバのポストプレーやライン間で暗躍する野村を囲み続けることが出来良い守備から攻撃を始めることができたことでいい守備からいい攻撃という循環が生まれた試合でした。
酷暑や連戦、イバがブレーキとなったことで横浜FCにスイッチが入らなかったことから動きと判断が鈍くなったことを差し引く必要はあるでしょうが、それを置いてもきちんと攻守に改善がなされた結果として”首位喰らい”が可能となったことでしょう。
パクさんが目立つのもうれしいっちゃうれしいですが、一人で何とかする選手ではなく合わせてくれる選手ありきなところがあるので、パクさんは添えるだけ…というのが一番よさそうだと数年拝見したところの印象としてあります。
今節の内容は一つの指針となってくれそうでうれしいです。中央に人数をかけた状態でどこでシュートを打つのかノープラン問題と交代によってチームの徹底が一時緩んでしまった問題は要改善ですが、相手に勝るための軸となる攻守の動きは見えたので良かったです。交代で強度が落ちる問題については赤嶺や片山の復帰で計算は立つのではないかとは思いますが、どうでしょう。
これから夏場になるとよりマークが緩まったりするでしょうからパクさんにはますます期待したい(逆はあまり考えたくないけどパクさんのスタミナ自体は大丈夫だと思います)。110試合目も罪作りなクロスを入れられるようにチームで役割を果たしていただきたく。
ではでは。