【感覚をデータで確かめる】静岡ダービーのパフォーマンスは「いつも通り」か?
先日の静岡ダービー、「ヤン・ヨンソン監督をおっかけさしてもらってえろう有難い思いをさしてもらいましたわゲッヘッヘ」という試合になり、いまだに嬉しさで通勤がスキップになることを止められない体たらくです。皆様いかがお過ごしでしょうか。
ご紹介が遅れましたが、サムネイルは恥ずかしながら自画像となります。顔や名前などREALなラベルなくしてはインターネットですら信用されないという世知辛いご時世ですね。(Vtuberのアプリをたしなんでみました)
冗談はさておき、先日はウキウキして夢遊病のような日記とか書いてしまったんですが、試合の感想としては、こんなことを言っていました。
いつも見ている試合に比べて特筆すべき何かは良くも悪くもありませんでした。ただ、このような「ここを勝たなければならない」という試合でなかなか思うような試合をすることができずにいた中で、今季一番の大一番であった今節を「いつも通り」過ごすことができたことは、非常に大きな成長だったのではないかと思います。
*太字は引用時
ダービーで5-1という大差、エスパルス生え抜きの若きエース北川選手の自身初の2桁得点、そして日本代表への追加招集によってこの試合のインパクトは今季のエスパルスの試合の中でも次元が違うものになっていました。それでも、現地で見た印象からするとこの試合は「いつも通り」の内容をいつも通りにやっていたという印象でした。
もちろん、北川君のゴールに狂喜乱舞し、ドウグラスの突破力に驚愕し、村田の復活バースデーゴールに涙した自分もいたわけですが、組織としての出来栄えという点では可もなく不可もなかった。もちろん、順調な発展の途上にあるといういい意味で、ですが。
そういう感想は単に私がひねくれているからなのだろうか、と思い立ったので、データから調べてみることにしました。というのが本記事の内容です。
調べる方法
Football LABによるリーグ戦各試合のスタッツをおおまかに攻撃・守備・コンディションに分類して集計し、平均と標準偏差を算出することによって、だいたいどれくらいの数字が「いつも通り」かを計算します。(計算します、と言いますが、実際に計算するのはexcel君です)
それを磐田戦のスタッツと比べることで「いつも通り」だったかを確かめます。そのために分かりやすい数字として偏差値を算出していきます(繰り返しますが算出するのはexcel君です)。偏差値40から60となるデータは全体の約7割にあたりますので、そこにおさまれば「いつも通り」と言えるでしょう。
*サンプル数が十分であれば大抵のデータは平均値を境に左右対称のなだらかなカーブを描きます。そのとき、平均±標準偏差の範囲は全体の約68.3%を占めます。29試合あればまあまあサマになるはずということで集計しています。
というわけで、データの分類および利用するデータ項目は下記のように致します。今回はスナック感覚で偏差値を算出できるもののみ採用。「誰が」「どこで」というデータがないとシュートもパスもボールゲインも良し悪しを捉えられないので単なる数字遊びに過ぎないのですが(サッカー統計の最前線はそういうことを導入出来始めているようですね)、居酒屋レベルの数字遊びだからこそという結果を期待したいところ。。。w
①フィニッシュ:数値が大きいほど優秀
・得点
・シュート数
・枠内シュート数
まあこのあたりは説明不要でしょう。どれだけ結果を出したかという部分。
②攻撃:数値が大きいほど優秀
・パス成功回数
パス数×パス成功率
回数が多いほど狙い通りにボールを運んだ=攻撃の質が高かったとみなします。守備のためのボール回しだよ!論は後述する平均ボール支配時間の短さとハイプレス志向から想定しにくいので、単純に攻撃のための指標として利用。
・30mライン侵入回数
「相手ゴールから30mまでのエリアに進入をした回数」
回数が多いほど、シュートに結びつけられる位置まで相手を押し込む攻撃に成功した=攻撃の質が高かったとみなします。元サイトに「侵入」の定義がないのでアレなのですが、おそらくゴールラインから30mより自陣側からパスを同敵陣側で受けて成功したあるいはドリブルを成功した回数。
・ペナルティエリア侵入回数
「相手のペナルティエリアに進入をした回数」
回数が多いほどシュートに直結する攻撃に成功した=崩しの質が高かったとみなします。「侵入」の定義はおそらく上記と同様。
・ドリブル成功数
ドリブル回数×ドリブル成功率
回数が多いほどシュートに直結する攻撃に成功した=崩しの質が高かったとみなします。ここでいうドリブルは「相手を抜くドリブル」を指します。自陣でドリブルした場合は知りません。一応エスパルスにはそのようなクレイジーサイコ野郎はいないので崩し以外の可能性を捨象できるでしょう。
・クロス成功数
クロス数×クロス成功率
回数が多いほどシュートに直結する攻撃に成功した=崩しの質が高かったとみなします。主にサイド攻撃の良し悪しを見られそうなので、中央エリアの攻撃の質を見られる指標がないとあまり美味しくはないのですが、残念ながらアクセスできるデータにはないので勘弁してください。
③ゴール前の守備:数値が小さいほど優秀
・失点
・被シュート数
・被枠内シュート数
こちらも自陣でのデュエル勝率などが欲しいところなのですが、やはりないので、敵軍のフィニッシュデータを自軍守備の成果としてみなすことにします。
④ゴール以外の守備:数値が小さいほど優秀
・被パス成功数
・被30mライン侵入回数
・被ペナルティエリア侵入回数
・被ドリブル成功数
こちらも同様に敵軍の攻撃データを自軍守備のデータとみなします。
・タックル成功数
・インターセプト数
数少ない能動的な守備のデータなので追加で採用。やっぱりせめて自陣・敵陣かというエリア情報はほしい…w
⑤コンディションや相手との力関係
コンディションやチームのスタイル、相手との力関係やスコアによって左右されそうなデータ。数値の大小がそのまま優劣に対応しない場合が多いので、平均値からの離れ具合によって純粋に「いつも通り」かそうでないかのみを確かめます。
・総走行距離
・スプリント数
・ボール支配時間
ボール支配率×アクチュアルプレーイングタイム(APT)
APTは30秒以下切り捨て、31秒以上切り上げで分単位で集計しています。
ふだんどれくらいボールを持っているかを集計。
集計結果
【凡例】
・データ項目:偏差値 (今節スタッツ、偏差値40の数値~偏差値60の数値)
①フィニッシュ:知ってたという優秀さ
・得点:74.6 (5点、0.1点~3.0点)
・シュート数:50.8 (13本、8.2本~17.1本)
・枠内シュート数:59.9 (6本、2本~6本)
得点はさすがに今季最多得点ということでとんでもないことになっています。ちなみに「偏差値74.6」は京大法学部、東大文Ⅲ、早稲田政経くらいだそうです。「Qさま!」かよ。シュート数自体はごくごくいつも通りの数値だった中でのこの結果はドウグラスと北川の2トップの凄さが数値に現れた形でしょう。
②攻撃:勢いを反映もいつもよりも雑だった
・パス成功数:34.1(169本、354.9本~211.4本)
・30m侵入回数:44.0 (33回、28.9回~49.7回)
・PA侵入回数:51.8 (14回、8.8回~17.7回)
・ドリブル成功数:66.6(10回、2.8回~8.2回)
・クロス成功数:42.6 (3回、2.4回~7.0回)
反面、シュートまでの攻撃の質を表しそうな指標は軒並み低調。特にパスの成功数は今季最低レベルです。いわゆる「雑な攻撃」が多くなってしまっていたことが示唆されます。ドリブルの成功数が特筆して多かったのは両SBが磐田のWBの裏を抜く場面が多かったことと、先述の2トップがショートカウンターで中盤やDFの選手をぶち抜いて決めたゴールが多かったことに由来しそうです。サイドをぶち抜いたわりにはクロスが成功しなかったことも①の非凡さを打ち消す印象を抱かせたのかもしれません。
③ゴール前守備:高レベルで安定
・失点:45.5 (1点、0.5点~2.3点)
・被シュート数:43.8 (11本、9.6本~17.0本)
・被枠内シュート数:47.0 (4本、2.6本~6.5本)
ここからは数値が低いほど優秀。相手のフィニッシュの質は低調に押さえることができています。開始50秒で先制できたことによってピッチの全員の意識を統一させて守備をすることができたので、ジュビロの攻撃をうまく食い止める場面は多くなっていました。現地での印象通りのデータが出ています。
④ゴール以外の守備:いつも以上のクオリティと言えそう
・被パス成功数:38.6 (296本、313.2本~553.7本)
・被30mエリア侵入回数:41.6 (40回、38.3回~59.7回)
・被PA侵入回数:34.7 (8回、10.6回~20.4回)
・被ドリブル成功数:43.7 (11回、9.3回~18.6回)
・クロス成功数:39.6 (2回、2.1回~5.8回)
・タックル成功回数:47.0 (14回、11.0回~19.7回)
・インターセプト回数:50.8 (3回、0.8回~ 4.9回)
こちらは③よりもさらに低く押さえられています。ゴール前よりも敵陣に近い、中盤での守備がかなり成功していたということが言えそうです。特に被パス成功数、PA侵入、クロス成功数で偏差値40を下回る数字となったので「いつも以上に崩されなかった」と言えそう。前後半別のデータがないので断言はできませんが、特に前半はうまく守れていましたよね。よくがんばりましたね。
⑤コンディションやスタイル:酷暑いい加減にしろ
・総走行距離:36.6 (106.4km、108.1km~117.6km)
・スプリント回数:51.3 (157回、134.3回~174.3回)
・ボール支配時間:33.1 (18.9分、21.1分~27.5分)
試合時の気温は記録では31℃、今季最高となりました。10月なんですけど。そのせいで走行距離はいつも以上に少ないという結果になっています。これは致し方ない。また、ボールを支配した時間の長さは今季最低を記録しました。まさかぶっちぎりでボール支配率が低くボコボコにされた川崎戦(ホームもアウェイもだよ)よりも短かったとは...これはかなり意外なデータで、集計してよかったなというところ。キャプテンのコメントに「2トップが凄すぎたから良かったけど、イケイケどんどん過ぎでしょ」というものがありましたが、非常に説得力のあるコメントであったことが判明しました。
結論
データを集計してみて、静岡ダービーは・・・
・2トップが東大なみにすごかった試合
・守備は今季のなかでも非常に機能した試合
・今季最低レベルでボールを繋げてない試合
・そのなかでも5点もとった2トップやっぱりすごすぎでは
ということが言えると結論付けたいと思います。「いつも通り」という印象は、守備の機能性とダービーテンションの2トップフィーバーという興奮を雑すぎた攻撃で差し引いた結果であったということでしょう。そういうことだと自分が納得したので、今日はここで店じまいです。
エスパルス、まだまだこんなもんじゃないぜ!という残り5試合を期待しています。
それでは!