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頭のなかにあるなんとなく 

 指のカサブタが、そろそろだよっていうように膨らんできました。中指の節の下にあるお米より一回りほど大きなカサブタ。でも早くと焦って剥がしてはいけない。これくらいの固さと、固さの下にあるカサブタの足の先のあたりがまだ柔らかくて、新しい皮膚の上にまだ立ち上がっていない気がするのです。
 私はカサブタは早くに剥がしてしまうタイプの人でした。膝っこぞうのカサブタは、何度も早く剥がしすぎて、膝に三角の「きっぽ」ができてしまっています。「きっぽ」ってこの辺りの方言で、傷跡のことだそうです。

 昨日やったことはレモンシロップ作りと朔太郎のお風呂のお手伝い。

 レモンは拳ほどの大きさのものが3つで150円で売っていたのを見つけたので思わず買って帰ってきてしまいました。
 シロップにはグローブとカルダモンも入れました。レモンの輪切りは大きすぎて瓶に入らなかったので、三日月型に切る。
 それを眺めていると、なんとなくレモンの果肉を砂糖にまぶして入れてみました。この方が早く果肉の水分が滲み出てきて、早くシロップになるかと思って。それからはギュッと上から押さえつけてみたり、挙げ句の果てにはバーテンダーよろしく瓶ごと振りだす始末。いつも早く、早くと焦ってしまうのかもしれません。

 猫の朔太郎のお風呂はタライです。曾祖父の家の小さなお風呂にかかっていたプラスチックの青いタライ。これはガーンと頭の上に降ってきてもポインと跳ねて痛くなさそうだ、私の頭にはこれが降ってきてほしいなと思いながら、ぬるめのお湯をはりました。
 少し嫌がる朔太郎の足をつけて、ゆっくり体にお湯を流してあげました。
 わざわざ冬にお風呂にいれたくなるのは、冬はストーブがついているから。ドライヤーの音が怖い朔太郎も、ストーブの前にいれば早く乾いている気がして、あたたかい春や夏よりも冬にお風呂に入れてあげたくなるのです。

ふわふわの毛に戻った朔太郎

 早く、早くのイメージは人それぞれ。カサブタを剥がすのも、レモンのシロップも、朔太郎のふわふわの猫っ毛も、自分の頭のなかの何となくの想像力が働いて、その何となくに寄せて動いてしまう気がしました。
 まだまだある、自分の中のなんとなくのイメージ。この自分の変な「なんとなく」が人と似ていると、思わずうれしくなったりもするのかもしれないな、と思ったり。

♩風の家
  高木正勝

2014年 夢と狂気の王国オリジナル・サウンドトラック

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