Smokey Robinsonを聴きまくる!【5】The Fabulous Miracles
今回はミラクルズが1963年に発表した、第5作の登場です。前2作は実験的な要素も感じられるアルバムでしたが、本作は極めてR&B志向の強い、好アルバムとなっています。このアルバムからはA-1の大ヒットが生まれました。1stアルバムからA-5、B-5の2曲が再収録されており、穴埋め的な感じでちょっと残念ではありますが、どちらもブルージーな曲調で、全体の流れを損なうものではありません。全曲スモーキーの自作で、ロニー・ワイトやジェイニー・ブラッドフォードらが数曲で共作として加わっています。スモーキーの歌声も力強く、モータウン初期の名盤といってよいと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=yqvMvuF6Dhk&list=PLAL6esrXaUi1pDqOMGQCOoymPS3h3ASr2
A-1 You've Really Got a Hold on Me
イントロのピアノから「いい雰囲気」が醸し出されます。このリフは中盤のブレイク、後半と曲中に2回演奏され、この曲の素晴らしいフックとなっています。バックで何度も繰り返される「ターン・タッタラー・タラーーン」(伝わりますかね?)というギター・フレーズも印象的です。スモーキーの歌はシンプルですが、力みも過剰なスムースさもなく、素直に聴き手の感情を揺さぶります。歌詞は他愛のないラヴ・ソングとも言えますが、初期ミラクルズの傑作であり、名曲です。Sam CookeのBring It Home To Meにインスパイアされているそうですが、私はどちらも人生で何度聴いたかわからないほどの大愛聴曲です。
A-2 I've Been Good to You
ドゥーワップ・テイストあふれる、3連符を強調したバラードです。1950年代に戻った感じともいえましょうか。しかしバックのホーン・リフがソウルの時代を意識させてくれます。
A-3 Such Is Love, Such Is Life
前曲から似た流れのバラードです。スモーキーの歌は素晴らしいのですが、それ以上の特徴はあまり感じられません。バックにフルートが入ってニュアンスを与えていますが、あまり目立つわけではありません。
A-4 I Can Take a Hint
ミドル~アップの曲調で、ここまでのアルバムのペースからちょっと流れを変えた感じです。悪くはないが、平凡です。しかしイントロからスタートし、要所要所で繰り出されるドラムの音からはモータウンらしさを強く感じます。
A-5 Won't You Take Me Back
1stアルバムに収録されていたブルージーな佳作です。再集録ではあるものの、アルバムのR&Bテイストを強く補完しています。
B-1 A Love She Can Count On
アルバムのBサイドはミドルテンポの好曲からスタートです。よくある曲調といえばそれまでですが、バックのタメの効いた演奏、若々しさを感じさせるコーラスに支えられ、スモーキーも素晴らしい歌唱を聴かせます。
B-2 Whatever Makes You Happy
とてもさわやかな、エヴァーグリーン感満載の曲です。メローな演奏、曲想ですが、決して甘いだけではありません。芯の強さを感じさせ、R&B色の強いアルバムの中でアクセントの一つとなっています。
B-3 Heartbreak Road
こちらもミドルテンポながら若々しさを感じさせる好曲です。ソウルの時代を感じさせるスモーキーのヴォーカルもとても力強く、目立たない曲ではあるかもしれませんが、「ハッ」耳をそばだてられる魅力があります。こうした曲があたりまえに作られていた初期モータウンの勢いもすごいと思います。
B-4 Happy Landing
当初この曲はYou've Really Got a Hold on MeのAサイドで発売されたそうです。ラジオDJたちがBサイドをかけまくり、売れたのはYou've Really Got a Hold on Meの方だったとのことです。最初のシングルに選ばれるだけあって勢いを感じさせるアップテンポのR&Bですが、少し曲として弱いように思います。ギターリフなど少しブルージーな雰囲気もあり(私は好きですが)、そのあたりも、ソウル勃興期の当時としてはちょっと古い感じに聴こえたかもしれません。
B-5 Your Love
Hi We'er Miraclesに収録されていたブルージーなナンバーです。ボビー・ブランドが歌っても似合いそうな曲調…というとイメージしやすいでしょうか。
1961年から2年で5枚のアルバムを発表というハイペースで活動してきたミラクルズ。次作がライブアルバムということもあり、このアルバムはこれまでのキャリアに一区切りをつけた作品のように思えます。初期ミラクルズの作品中、アルバム単位でどれか1枚、となればファーストかこれということになるのではないでしょうか。
これからも時間を作って書いていきたいと思います。よろしくお願いいたします。