Smokey Robinsonを聴きまくる!【7】Doin’ Mickey's Monkey
1963年に発表した企画ものといってよいアルバムです。当時流行っていたダンスナンバーのカヴァーが中心で、Mickey’s Monkeyという大ヒットはあるものの、このアルバムをどう評価したらよいのか微妙です。スモーキーの作曲は1曲しかなく、しかもその出来は今一つ。プロデューサーとしてスモーキーの他にブライアン・ホーランド、ラモント・ドズィアーを加え、新境地を目指したのかもしれませんが、結果はあまり伴わなかったのではないでしょうか。もちろんパーティー用のアルバムとしては優れている(なんといってもファンク・ブラザーズの演奏です)し、ジャケのイラストもユーモラス(好きです)で、価値が無いとは言いませんが…。
https://www.youtube.com/watch?v=mmgosnHCKQs&list=PLFedyJmIJcGZk5MqXxKPHfMs9mbqCjAIc
A-1 Mickey's Monkey
モータウン最強のソングライトチーム、ホーランド/ドズィアー/ホーランド作曲の大ヒット曲です。むかしReady Steady Goという60年代イギリスのテレビ番組のヴィデオ・シリーズが発売され、その中にモータウンの特番がありました。テンプテーションズやシュプリームズなどが出演する中、トリで演奏されたのがミラクルズによるこの曲でした。その時のコーラス隊、中でもボビー・ロジャースの髪を振り乱しで踊る、狂ったようなダンスが圧倒的で 記憶に残っています。曲はとても楽しい好曲で、そのパーティー感にファンクの萌芽も感じます。
A-2 Dance What You Wanna
この曲の作者にはなんとサム・クックがクレジットされています。サムの歌でこの曲を聴いたことが無かったので、少し調べたのですが、どうやらクリフ・ホワイトというシンガーに提供した曲のようです。先進的だったサムが作ったレーベルSirレコードからリリースされています。曲はロッキンR&Bという感じです。
A-3 The Wah-Watusi
黒人ガールポップグループ、オーロンズのカヴァーで、リードもクラウデットがとっています。Watusiって当時のダンス様式の一つでWhat you seeからきていると聞いたことがあります。
A-4 The Twist
ハンク・バラード&ザ・ミッドナイターズの大ヒット曲のカヴァーです。オリジナルの野卑な感じをそぎ落としたような感じで、インパクトに欠ける…というかミラクルズの個性に合った曲ではなさそうです。
A-5 Dancin' Holiday
オリジナルはジ・オリンピックスです。スモーキーの歌にも気合が入っていないように感じられ、オリジナルの楽しさがだいぶ薄まってしまっていると思います。
A-6 Land of a Thousand Dances
ニュー・オーリンズの泥くさいR&Bシンガー、クリス・ケナーのカヴァーで、この曲はウィルソン・ピケットのヴァージョンも有名です。ミラクルズのカヴァーは…やらなかった方がよかったかも…。
B-1 I Gotta Dance to Keep From Crying
Bサイド1曲目は安直なカヴァーではなく、ホーランド/ドズィアー/ホーランドによるミラクルズへの書下ろしです。 楽しいパーティーソングで、良い曲ですが、ミラクルズのある種の繊細さには見合っておらず、むしろフォートップスみたいなグループ向けの曲という感じがします。(フォートップスが繊細でないということではありませんが)
B-2 The Mokey Time
シカゴの名R&Bシンガー、メイジャー・ランスのヒット曲です。こういうノーザンタイプのR&B曲はA-6なんかよりもずっとミラクルズの個性に合っていると思います。お手軽に録音した感は否めませんが…。
B-3 The Groovey Thing
このアルバムで唯一スモーキーが作った曲です。ミドルテンポのダンスナンバーですが、残念ながら大した曲ではありません。 音楽の教科書に載っていそうな曲で、途中に何度も入るホイッスルもあまり良いと思えません。
B-4 Twist and Shout
アイズリー・ブラザーズがオリジナルのR&Bダンス曲です。ビートルズのカヴァーも有名で、どちらもとてもカッコよく、私はこれまで数えきれないくらい聴いてきましたが、ミラクルズのヴァージョンは…今一つですね。
B-5 Do You Love Me
コントゥアーズの大ヒット曲です。オリジナルの狂騒感はすさまじいものでしたが、ミラクルズのヴァージョンはずいぶん上品な仕上がりです。
当時のブラックミュージック市場はシングル盤が中心で、LPはそんなに大きな売上が無かったそうです。LPの曲数を埋めるとなると、こうした企画盤の発売もやむを得なかったのでないかと思います。次はミラクルズの最高傑作アルバムの登場です。