【予備試験】令和2年予備試験論文の初見の雑感
すでに多くの方が解説を書いていますので、私は、自分が初見で問題を読んだ雑感を少々書こうと思います。あくまで私ならこう書くだろうという感じの雑感と,これまでの指導経験を踏まえた難易度などの話を少々。といった感じです。ちなみに六法などひかずでなるべく解説などを見る前に書いたメモをベースに思考過程を示しています。どれも大体10分程度でメモしたものです。とりあえず7科目だけ。
1 憲法
取材活動の制限とついているので取材の自由の問題であることは明白。取材の自由の位置づけは博多駅事件などを参考にしつつ起案する。ただ,あの場面と違い,取材の自由に対する直接的な規制が問題になっている(博多駅などでは取材活動を直接制約していたわけではない)のでそこは慎重に違いを説明したい。取材の自由自体が報道の自由との関係で重要な権利であることは間違いないし,一律に犯罪被害者などに関する取材を規制して個別解除的に同意がある場合に認める法規制は違憲の方向性が強いようにも思う。ただ,最近メディアスクラムなどの状況を鑑みるとほかに規制手段もないように思える。犯罪被害者の保護はプライバシーにかかわる重要な権益だし比較考量の視点からしても剛健筋もありかな。手続き的側面は直罰性ではないから問題はなさそう。告知聴聞の機会もあるわけですし。また,明確性の原則も中止命令で具体化されるから問題なし。そう考えると形式面での違憲性はないかなぁ。
憲法は過去に見られた統治の出題や応用的な論点を含むものでもないし,比較的取り組みやすい問題だったと思う。博多駅に引っ張られすぎる人が多いのではないかと思うが,立法違憲の場面でどこまで参考になるのかなぁというのが感想です。
2 行政法
設問1は公害防止協定の法的拘束力の論点か。これは行政契約の典型事案だから論点の知不知で差がつくぞ。法律による行政の原理からすれば原則行政が義務を設定するには法令などが必要。ただし,相手方の任意の場合は,公序良俗に反しない限りOK。今回の条項は,たしかに環境悪化を防ぎ公害防止のために必要なものであるが,今後一切の施設の増加を認めない点で強度な制約に思える。狙い撃ちでやるのは過剰な気がするな。そもそも,開発許可制度の条文33条を見るに,適合している場合は許可しなければならないと効果裁量を否定しているように読める。そうすると,行政行為の条件のような形でこれを許容するのは法の規定からしても難しいんじゃいないか。よって,公序良俗に反するから違法な条項であって,拘束力はない。
設問2は処分性か。まずは大田区ごみ処分場の規範を上げて,救済の観点からって感じで一般論を展開。本件についてみていくと,本件通知自体は申し出の拒絶に過ぎず,処分性が認めらない事実行為に思える。しかし,事前協議をしないと,監督処分が飛んでくる条例の仕組みになっている。これを排除してA市と協議をしないと適法な開発事業を進めることが困難になるな。そのうえ,本条例は法の委任はないものの法に連動するようなタイプ。となると,病院勧告事件などを参考にすると,権利救済の実効的観点から本件通知を取り消さないと,事業を行えない地位にあるといえそうだな。そのため処分性は肯定の方向で書けそう。
感想としては,行政法は平先生をはじめ専門家が多く解説しているのでそちらも参照してほしです。難易度的には比較的取り組みやすいが,設問1が知らないと時間がかかりそうな問題という印象。
3 民法
設問1は後見か。とりあえず,BにAの代理権がないのであるからAC間の本件消費貸借契約はCに効果帰属しないことが前提になるな。もっとも,Bが主導してAから借りており,Bはその後Aの後見人になっていることからすると,申し出を拒絶することが信義則に反しないかなぁ。後見の公益的立場を考えると,Bが勝手にしたことはAに帰属させないのがいいのだろうけど,今回の事案ではAの救援のためいう事情もあるし信義則で拒絶できないというのもありだろう。もっとも,Bに対して無権代理人の責任を追及してもいいわけだし,結論はどっちでもありだろうな。
設問2は強制執行の前提として登記を元に戻す方法が問われているな。Aの著しい改善ってすごいな。。事案は単純に債権者Dが詐害的な取引であるAE間の売買を取り消したいというものだな。まずは詐害行為取消権を行使して本件売買を取り消すとともに登記を抹消してもらうということになるのか。不相当な価格だから詐害行為に当たるのは問題なさそう。この場合は詐害行為取消権に基づいて本件売買に基づく登記を取り消せるんだけか??(後で調べよう…)次にほかの構成としては詐欺取消権をAに代わって代位行使することが考えられるな。これも詐欺の認定は問題なさそう。そのうえで取消権が一身専属権かを論じてという感じだろうか。
感想としては,なんか旧司法試験ぽい出題と感じました。変な論点や改正法で大きく変わったという箇所でもないのでそこまで難しいとは感じないかな。
4 商法
設問1は設問自体はABの会社法上の責任とCの責任追及方法で普通の設問だな。Bと乙のワインの取引は利益相反行為で直接取引なのは間違いなさそうだな。そうすると423条責任を追及できるし,損害の推定規定なども使えそうだな。Aは直接的には乙社と取引しているわけでもないし,Bに事実上の便宜を図っただけに思えるから法的義務の違反はどこにあるんだろうか。親会社の取締役として子会社を監督する義務などがあるのかな,,ちょっと条文を見ないとわからない問題だな。CとしてはAについては甲社の株主として代表訴訟を提起して責任を追及すればいいわけだ。問題はBだな。これは多重代表訴訟になるのかな。条文をあまり引いたことがないけど,なんとなく位置はわかるからそれにヒントがないだろうか。
設問2は会社法上必要となる手続きか。C所有の甲社株と甲所有の丙社株を交換する形になるのか。ん?ということは甲社からすると自社株の買い取りになるわけだからこれは手続きの条文が別にあるな。。このあたりの説明問題は苦手にするところだから条文をしっかり探さないと。時間あるかな。。
感想としては,条文ベースのいい問題だなぁと思いました。多重代表訴訟や自己株式の取得?などは予備試験での出題はなかったはずです。手続きを比較して説明させる問題は最近の商法ではよく出るタイプなのでしっかり事前の準備が必要かなぁと思いました。個人的にはそんなにかけないかぁ。。
5 民事訴訟法
配点割合は7対3で設問1が勝負だな。3枚と1枚な印象で頑張ろう。
設問1は①どのような判決をすべきか②判例の立場への言及③既判力の生じる範囲を問われているな。問いに1ページづつくらいなイメージで回答していけば形になるかな。②は①の前提だから①がメインというところか。内容としてはまず,交通事故をベースに本訴が債務不存在確認で反訴が給付請求か。ん?これはそもそも本訴は却下になってしまうのではないだろうか。そうすると却下判決で訴えの利益なしが本訴についての結論になってしまうな。そのうえで既判力も口頭弁論終結時の訴えの利益なしという部分にしか生じないことになりそうだ。そうすると本訴本案に関する判断はそもそもなしということになるのか?あんまり民訴得意ではないけど,心証などの事実関係を使えないしどうなんだろうか。。しかし,これしか思い浮かばないぞ。
設問2は後訴が可能かその理由を踏まえて論じるということか。とすると結構書くことがあるな。本訴が却下判決として,反訴が請求棄却なわけだ。とすると,明示の一部請求の全部棄却ということか。そうすると残部部分については訴訟物が違うから請求できそうだな。でも判例は明示の一部請求につき外側説に立つわけだよな。そうすると,前訴で全部棄却した場合は残部についても審理判断されていると考える方がいいのかな。とすれば,この部分は理由中判断だろうから既判力ではなく,信義則で遮断されるということか。となると,判例の立場をとると難しいのか?Xの請求内容についてはそもそも審理されてないとなると信義則が妥当しないのではないだろうか。。ちょっと混乱してきた。難しい。
民訴は考えてて混乱してきているし正解筋が一目でわかりませんでした。後で,えるにえ先生の解説を見てさすがと思いました。とっかかりやすい問題とは思いますが,個人的には難しかったです。
6 刑法
まずは甲の罪責のみか共犯がないのはありがたい。
事実2は詐欺罪の話だな。これはH26年くらいの判例があったな。ゴルフ場の事案で有罪無罪が分かれているものがあった。それを参考に詐欺罪の構成要件を一個一個丁寧に当てはめていくしかなさそうだな。そもそも,あの判例は何が問題になったんだっけか。。ちょっと失念してしまった。
事実3は殺人罪の問題だな。構成要件は問題ないとして。丙に襲われると誤信しているから誤想防衛か。でも容易に認識できたとなると基礎づける事実に錯誤があったとは言えないかな。それに加えて怒りで足蹴りしている部分が完全に過剰防衛だな。この辺りは論理が複雑だからどの要件なのか丁寧に説明してやる必要があるだろう。
感想としては,共犯が出ない分取り組みやすいと思ったが両論点ともに理論的なもので難しいと思った。個人的には苦手な問題。
7 刑事訴訟法
ん!?なんだこれは!?一事不再理か。完全にノーマークの分野。。333条以降に条文があるんだけか。常習性が前訴判決で求められているかどうかが問題になるのかな。しかし,公訴されているのは乙に対しするだけで常習性は起訴してないわけだし。。。んーわからん。公訴事実の同一性があるかどうかで判断するんだったような気もするし,そもそも2重の危険との違いとかも抑えてないし。理論的に説明できないですね。。
感想としては,ここ出るのか!?というものしかないですね。条文を引きながら知ってる知識を振り絞って書くしかない。知識として知っていれば余裕なんでしょうが,この分野の知識を論文用に用意している人は少数かなと思う。。
8 総論(実務科目を除く)
刑訴を除いて総じて取り組みやすい問題だと思いました。行政法,商法はやや細かめ,刑訴は細かすぎな印象です。憲法民法刑法はスタンダードな感じが好きでした。民訴は。。正直苦手な分野だったです。