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令和6年予備試験論文式の雑な採点実感

X(旧Twitter)にあげものの修正版です。

第1 本記事の前提・注意事項

・自分が受験指導するに際して必要となる知識経験を習得するために無料でコメントした方の答案から抽象化した(無料で募集したところ5名程度のところが8名~10名+以前からの知り合いや教え子等数名で)。
・Twitterやnoteで公開されているものを読んでざっと感じた概要(5名~10名はパット見た感じ)。
・出題趣旨の発表前のため正解筋と考えるのは私自身の構成した内容をもとにしている。
・コメントのうち「⇒」から先は私の見解です。
・司法試験の採点実感風に記載している。
・あくまで参考程度お願いします。

第2 各論

1 憲法

・多くの答案は、判例を想起(南九州税理士会・群馬司法書士会等の団体と個人、空知太事件・孔子廟等の政教分離、自衛官合祀事件)できていると思う論述が読み取れる。しかし、判例をうまく組み合わせができていない
⇒これは自分も現場ではうまく構成できる自信がないためある程度の構成や決めて迷わず事実関係を評価していればある程度評価される(F直行にはならい)と思う
・「目的の範囲内」の処理と協力義務を区別できていない答案が多かった
・事案の後半の村民の意見、参照条文をうまく使えていない答案が半数くらい
・私人間効力についての言及が多い答案も散見された
⇒団体と構成員では判例は明示しないことが大半
・⑵の方でほかの方の信教の自由への配慮ができている答案は少なかった
・⑴と⑵の相違を何かしら意識している答案が多かったが、まれに違いを意識していないものも散見された

※ちなみに地縁団体は平成21年旧試験憲法に出題あり。

2 行政法

・原告適格の規範はOKだが、2項の指摘がない答案も散見された。
・Xの主張する利益の内容があやふやな答案が多かった。農業をする利益と住む利益が混在していたり、どのような利益か漠然としていて読み取れなかったり、排水を受けない等あまりにもぐたいてきぎたり、
・具体的利益⇒個別的利益の流れ・区別が、あいまい答案が多かった。
・職務行為基準説及び一元説の説明ができている答案はほぼなかった
⇒国家賠償の話はほぼ初見なので有意な差にならないと予想する
・「職務」の内容や義務違反が明確でない答案が多かった
⇒義務の内容を明示する必要がある。
・行訴法37条の2の要件の検討はよくできている答案が多かったが、一部要件の検討漏れがある答案もあった(特に「一定の処分」)。
・処分性等特に問題にならない論点につて定義⇒あてはめと書いている等、メリハリがない答案が多かった。
・法51条の説明が短い答案が多かった。(時間切れか?)
・法51条の検討がうまくできている答案は少なかった。
⇒個別法の要件検討は皆出来ないので、ここで差がつけられればよい評価になるのでは?と思う。

3 刑法

・論点が明快なため、比較的よくできている方が多い印象。
⇒論点は明確なので事案のあてはめで差が出ている印象もある
・占有の認定について規範や考慮要素を明示している答案が多かったが、一部判例を意識できていない答案が散見された。
・場所の特性(公道だが、店の駐輪場のような場所)を示せいていないものなど、評価が抜けているものが多い。
・使用窃盗の説明が抜けている方が半数近くあった。
⇒使って放置は結構典型例と思う
・事実の錯誤の指摘がない答案もあった
⇒これは筋によっては不要になるが、占有離脱物横領になる場合には必要となるかもしれない。
・傷害罪における承継的共犯について、平成24年判決を意識できていないせいか、肯定的な処理をしている答案も散見された。
・207条と承継的共犯の問題の所在が混乱していると思われる答案も散見された。
・問題文的には、行為ごとの方が書きやすいと思う。しかし、行為者ごとに書いている答案が大半だった。
⇒ナンバリング的に場面転換がはっきりしている

4 刑訴


・証拠能力の一般論を大展開する答案が散見された
・自然的関連性の問題として処理し紙面の多くをそちらに割く答案も散見された。
⇒悪性格の問題がメインなのでそちらとの比重(どちらに配点が多くあるのか)を意識して検討してほしい。
・前科ではないのに「前科証拠」と断じる答案が半数にとどかない程度はあった。
・判例では犯人性において、同種事案を使うときは慎重になるはずなのに、顕著な特徴を安易に認定する答案が非常に多かった。
⇒もしかすると、前科ではないので、顕著な特徴としてはこれでもいいのかもしれないが、、
・設問1と設問2の差異を明確にできていない答案も散見された。
・特に設問1と設問2で規範レベルでの相違を指摘できた答案は少数だった
・要証事実を考え、推認過程を明確にして、問題がないかを検討する答案は少数だった。
⇒これができると1と2の相違が明確になるはず

5 民事実務基礎

・所有権に基づく~の指摘ができていない答案が散見された
・信頼関係破壊の法理の指摘がうまくできていない答案が多かった
⇒そのほか例年に比較して要件事実レベルのミスが多いと思う(個人的感想)。おそらく再々…とか面倒な要件事実だったからではないかと推察る
・解除の説明が適切な答案は半数程度だった
・「せり上がり」は説明できている答案が多数だった
・和解についての言及ができている答案は予想より多かった
・事実認定は基礎的な部分の問題のため多くの方が同じような論述にみえた ・既判力の主観的範囲の話を絡めて説明している答案は思いのほか少なかった。

6 刑事実務基礎

・領置を端的に指摘できず、逮捕に伴う~や強制処分該当性を論じる答案が半数くらいあった。
・採血の令状を正確に示せていない答案も散見された。
・検察官の立場に立って事実を評価し、設問に回答できている答案は極めて少なかった
・詐欺罪の構成要件との関係で、問題文の事実がどう意味を持つかについて、明確に推認過程を踏まえて言及できている答案は少なかった
・横領罪の検討に際して不法領得の意思の内容(ふるまう意思)を踏まえて事実の評価をしている答案は少なかった
・伝聞例外の要件該当性はおおむねできていた。一方で「実質的に異なる」や相対的特信情況の説明が、規範レベルで意識されている答案は少数だった。
⇒できている方との落差は激しかった。
・職務基本規程を正確に指摘できている答案は思いのほか少なかった。
⇒75条か5条どちらかが落ちている方が多かった ※片方引用して安心したせいか?と推察する

7 民法


・失踪宣告については日時なども含めて正確に指摘している答案は重いのは多かった。
⇒択一知識だが、勉強開始の前半でやる内容なので結構記憶しているのかな?
・相続させる旨の遺言の説明が正確なものは半数程度だった
・899条の2の指摘ができている答案も半数程度だった
・持分者間の関係の説明ができている答案は少なかった
・偽造の点等の事実を拾ている答案は少なかった
・失踪宣告の取消しにつき、双方善意が必要との指摘は多くの方ができていた
・Eを介在させている意味の説明まで言及できている答案はほぼなかった
⇒双方善意なので意味がないのかもしれないが、何かしら説明がほしい
・誤振込の特性等の言及できている答案はほぼなかった
・不当利得の要件につき、多くの答案は騙取金事例などを参考に適切な規範を定立できていたが、それが不十分な答案も散見された。
・設問2では⑴と⑵の相違を説明できる答案はほぼなかった。
⇒時間的にも内容的(預金の関係の理解・誤振込)にも難しかったように感じる

8 商法


・自己株式の取得の効力の問題と気づけている答案は半分以下だった。
・自己株式の取得に関する効力の説明が、財源規制違反から適切にできている方は少数だった
・財源規制を超えた部分(800万円以上)と、超えていない分を切り分けている方はほぼいなかった
・財源規制違反の役員の責任についての条文の言及は比較的よくでいた
・中には規則や計算規則まで指摘できている答案も結構あった
⇒どこかの予備校の直前答練で出題があったか、あるいは直前予想等で示されていなのかな?と思う。
・半数程度の答案はADFの3名の責任について、それぞれの役員としての立場から責任(義務)の内容が異なる点についてうまく言及できていた。一方、それらを区別せずに安直に423条で説明しているものも少ないながらあった。
・設問2は条文を指摘するだけで終わる方と事案をふんだんに使っている方で明暗がはっきりした。
⇒どっちが点数効率がいいかは個人的には不明。

9 民訴法

・多くの答案が、時機に後れた~の要件検討ができていた。
・相殺の抗弁の特性についてはおおむね言及できていた。
・弁論準備手続を経ている点への言及は漏れている答案も少なからずあった。
・相殺の抗弁を以前に提出可能だった点を明示的に指摘していないものもあった。
⇒事案に即して説明できているかという点の説明の密度が、評価を分けていると思う。
・参加的効力の範囲の問題なのに、参加の利益と区別できていない答案等もあった。
⇒問題文からして明確に参加的効力の客観的範囲を論じるべきと示していると思うが、誘導に乗れていなかったのではないか?
・参加的効力の範囲の論証はかけている答案が多かった。
・参加的効力の範囲のあてはめについて、前訴の本案における請求原因事実(要件事実)の判断内容を的確にとらえている答案は少なかった。

10 全体(選択科目除く)

 なんとなく細かい論点(民法商法行政法)が多かったり、科目間の難易度の差が激しかったり(刑法と憲法)、従前の傾向とやや異なったり(憲法や実務基礎)してちょっととっつきにくい印象がある。
 とはいえ、聞いている論点や知識は司法試験まで含めれば過去問の範囲内なので「問い方」が変わっただけと思う。
 そうはいっても、この「問い方」の変化に合わせる勉強が難しいのだが…
 対策としては引き続き基礎知識の確認及び短答式試験を含む過去問重視の姿勢が大事だと思う。

第3 最後に

 答案を提出してコメントをさせていただいた方に感謝します。もし成績が来ましたら、予想評価の答え合わせがしたいので教えてください。
 また、今からでも見てほしいという方は、連絡ください。多少お値段(応相談)でやらせていただきます。
⇨2024年11月6日時点で複数応募があり、かつ、司法試験リベンジ組への対応もあるので募集停止にします。
 再開の際はお知らせします

最後に、以下文章はありませんが、投げ銭をお願いします!

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