
Spotifyまとめ2024
今年も、12月になって送られてきた Spotify のまとめ (リスニング集計)。今回からスマホ環境推奨、ということで、なんとかスクショを貼り付けたのが ↓ のデータです。年末の恒例行事ぐらいは、参加しなきゃ。では、早速2024年を振り返ってみましょう (2024.12.07.現在)。

今年も49,431分間 Spotify を聴いた、ってことは、一日平均マルッと2.3時間ですね。通勤時間が往復2時間なので、やはりぼくの日常に Spotify は欠かせません。で、その内訳を見ると、今年もぼくのリスニングの中心はイスラエル・ジャズだったようです (アーティスト情報の1位・2位・5位から)。1位の Tigran Hamasyan (アルメニア出身) は、厳密にはイスラエル・ジャズには含まれませんが、サウンド的に/ぼくの嗜好的にも、同じグループに扱って差し支えないでしょう。そして、2位 Avishai Cohen。4月に待望の来日 (初大阪) だったので、これはもう当然です。
このビルボード大阪のライブが、目茶苦茶よかった、はい。2024年のおもいでNo.1は、コレです。なによりセトリが素晴らしく、新譜を加えたオールタイムからの選曲がぼくのフェイバリット。アンコールで「Remembering」のイントロが、あの Avishai のベースに絡んだピアノが流れたときには、マジで涙がちょちょ切れたほどです。さらに、他の二人のメンバーが期待以上に素晴らしかった。Guy Moskovich は、やや線が細いかも、といったこちらの心配を払拭する繊細さで、Roni Kaspi の力強いドラムはトリオ編成の肝をズバッと押さえていました。ライブ中「ロニー!」という掛け声が3回はありましたが、およそ顰蹙を買いそうだった2回は、すみません、ぼくです。やはり、Avishai サウンドにはロックっぽいドラムが似合います。
一見すると赤髪のパンクロッカー風ですが、Roni のスウィングには幸せな家庭で培われたような強靭さが感じられます。あるいは、背後に仄見えるファミリー感。おそらく、これは Avishai サウンド全般に通じるもので、敷衍すればイスラエル・ジャズというワードに結びつくのでしょう。Trio の歴代のピアニストを想起するまでもなく、人材発掘の面でも、Avishai のジャズ界への多大な貢献度が分かります。
Spotify のまとめに戻りましょう、アーテイスト3位に入った Friko。これは早々と「LKに聴く曲5選」でぶちあげたように、2024年デビューのUSインディーズ・バンドですね。トップソング3位の「For Ella」も、彼らのデビュー盤に収録された一曲です。春先の時点で、2024年ベスト・アルバムはこれだ、なんて宣言しちゃっていますが、ロックに限定すれば、その見方は変わりません。ただし、今年を振り返るときに、その伏線の状況は記しておいたほうがいいような気がします。Friko を強く推すことの前提となった、TLDP (The Last Dinner Party) のドン引き感。
今年2月、TLDPは待望のフルレングス盤デビューを果たしました。待ちに待った、という形容詞がこれほどふさわしい新人もないくらい、昨年からの話題は物凄いものでした。大手資本がメディア・コンプレックスでバンバン持ち上げる、批評家連中も我先に言及する、といった具合で、フライング気味の過熱ぶりは、ややもすると彼女たちのハードルを上げ過ぎたのかもしれません。なんというか、寄ってたかって厚化粧しまくる、みたいな。それはもう (ぼく的には)、ロックに纏わる言論/批評そのものを地に落とす行為にも見え、廃れゆくジャンルを過保護に守ろうとする腐臭をかえって印象づけたのです。批評性を失ったところに健全な発展はありません。その昔、金井美恵子が純文学を特別天然記念物のトキに譬えたことがありましたよね (古いなあ~)。それ以上に、TLDP自身にはなんの咎もない点が、「とにかく金のかかった新人」という印象を哀しく思わせたのです。
事実、アルバムの出来は悪くないのですよ。70年代 Sparks や Queen のサウンド意匠が全体に及び、弱冠ゴスっぽい (プログレっぽい) 質感にうまく収めています。ピーガブ時代の Genesis らしい風味もありながらのキャッチ―さなので、UKロックをずっと聴いてきたぼくには、好みの音。しかし、だからこその、近親憎悪感。蓋を開ければ、お約束の全英1位です。業界資本の誘導によって作られた予定調和って、なんだかなあ。
正直、なにか根本的に違うぞ、とぼくは感じたのですね。そんなときに現れたのが Friko です。インディーズならではのギター、素朴で、溌溂とした疾走感、もっと言えば、後期資本主義で忘れがちなロック・スピリットに立ち返らせてくれた初々しさ。やっぱりロックはこうじゃなきゃ、そう得心した思いが、真直ぐにぼくの現在地 (=認識) へ繋がっています。逆に言うと、もはやロックはこういう形でしか存在し得ないのでは、という。
ここ数年の認識で、「若者文化」としてのロックはもう終わった、現在ではプリセットされた音源のワン・オブ・ゼムでしかない、といったものがぼくにはあります。今年に限っても、いい曲だなあ、と反応したロックナンバーは、例えば Olivia Rodrigo や Corinne Bailey Rae のアルバム収録曲だったりするのです。そんなこんなをひっくるめての、Friko。なので、彼らのデビューは2024年に銘記すべきスマッシュ・ヒットだと思います。
もうひとつ、ロックに関する話題では、Linkin Park の再始動に触れない訳にはいきません。Chester 亡きあとの新ヴォーカルが Emily Armstrong に決まり、7年ぶりのニューアルバムをリリース。この再始動については、賛否まっぶたつに分かれるようです。まあ、忖度なくサウンドだけに触れると、はっきり言って20年前となんら変わっていません。この点を、Chester の代替として Emily は及第点だ、と見るのか、リンキンというバンドの限界をかえって露呈した、と見るのか、ここで大きく分かれるでしょう。同時に再認識させられた、リンキンにおける Chester のカリスマ性――。
かつて、Robert Plant の声が Janis Joplin に似ている/似ていない論争があったように (ぼくの周囲だけ?)、あるいは Phil Collins と Peter Gabriel でもいいのですが、Emily のヴォーカルを Chester との近似性でいかに語るか。それによって、個々のリンキンに対する本音が見えるのかもしれません。それにしても、タイトルが「From Zero」ですからね。いっそ Chester の代役はAIに任せ (生成AI & 二次元キャラで創りあげ)、Emily はライブ用のサポートVo.という位置づけで再始動するのは、無理だったのかなあ、なんて考えたりもします。技術的にはどうなのでしょう。あと数年もすれば現実化する完全ヒューマンとロボットAIとの共生、その象徴的合体バンドを、リンキンなら先鞭をつけるぐらいの規模感でやれただろうに。
ところで、今年のまとめで皆様が気になるのは、トップソングに邦楽の懐メロがずらっと並ぶことかもしれませんね。ぼく自身も、最初に集計データを見たときは驚きましたよ。アーティスト4位&トップソング1位がスピッツの「ロビンソン」、たしかに大好きな曲ですが、まさか1位とは。その他の邦楽曲も、実は「ロビンソン」と同じ自作プレイリストに並んでいるため、結果的にランクインしちゃった、というのが実情です。
その理由ですが、シーズン②のための下準備、ってことで、今日のところはご勘弁を。といっても、期待されるようなものはありません。
まあ、客観的事実として今年のソング情報が邦楽で占められてはいても、ぼくの主観としては相変わらずコンテンポラリー・ジャズ (イスラエルも含めてややスパイシーなところ) を聴いていた、という自覚が優ります。Thandi Ntuli「Rainbow Revisited」とか Nubya Garcia「Odyssey」とか。特に後者は4年ぶりの (待望の) 2ndアルバムで、陳腐すぎる表現で恐縮ですが、参ったなあ、こういう方向性に舵を切ってきたか、とイイ意味で期待を裏切られた佳作です。コテコテのジャズ・ファンはもちろん、ぼくのような中途半端なジャズ・リスナーにも開かれた、間口の広い、かつ極めてイノベーティブな音像に迫った意欲作です (オープニング曲は、なんと Esperanza Spalding とのコラボですから)。
そういえば、2024年最大の後悔が Esperanza Spalding のライブに行けなかったこと。いや、いま思い出しても腹が立ってきますね。10月末のビルボード大阪、絶対に行く、死んでも行く、と年甲斐もなく息巻いていたのに、仕事の都合で……。社畜 (=ぼく) は死ね……。
~葬式とライブは、悩んだときは行っておけ~。改めて、家訓の重さを恨めしく噛みしめながら、2024年は暮れていきます。
フォロワーさまには、今年も、お世話になりました。さして新しい記事もないのに (古い記事を順繰りに固定表示するだけなのに)、スキを押して応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。「私は元気で~す」とあの映画のラストのように叫びます。どうぞ、良いお年を。