小説『天然系策士に気付かぬ純粋女子社員(社会人、オフィスラブ)』
とあるオフィスビルの倉庫。
男が、シャツ越しに女の豊満な片胸を握りしめている。
何故この様な事態に陥ったかと言えば。
男が暗がりの倉庫の電気を付きようと伸ばした手が偶然にも、女の胸の位置と合致してしまったからである。
「毎度ごめん、わざとじゃないんだ」
「いいから手を離して。早く、係長に頼まれた案件の資料を見つけて戻りましょ」
「・・・そうだな」
女の胸から手を離し、男は改めて電気のスイッチを入れる。
女は何事もなかったかの様に、資料捜索へと向かう。
男の名前は風磨、25歳、商品開発部所属。
女の名前は小鳩、26歳、商品開発部所属。
和から洋まで、幅広い甘味を手掛ける菓子メーカーに勤める二人は、ただの同僚関係である。
*****
ーーーー今日も無反応、駄目だったか。にしても、相変わらず小鳩の胸、俺好みの弾力してんだよな。
風磨の行為は、偶然、小鳩の胸を掴んだのではなく、ラッキースケベに見せ掛けているだけの計画的犯行だったりする。
その目的は、普段澄ましている小鳩の、焦った照れ顔を拝んでみたいと言う、遊び心によるものだ。
勿論、男の欲求部分の含みが、全くない訳ではない。
*****
その頃、小鳩は。
棚と無駄に睨めっこしながら、顔中を真っ赤に染め上げていた。
実際、資料を探す心の余裕などない。
ーーーー風磨のあのドジっ子、どうにか直ってくれないかな。欲求不満なんて思われたくないし、それに変に反応して風磨と余所余所しくなるなんて絶対に嫌だし~、毎度頑張って平然を装うの大変なんだからね。
《了》
始まりは本当にラッキースケベだったのが、小鳩の余りの反応の悪さに、何らかのやる気スイッチが入ってしまった風磨君です。今じゃ日常的にドジっ子装い中。
風磨君は無意識片思いです。
小鳩さんは現段階では恋愛感情は無し、かな。