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【AI基礎論】反表象主義

「反表象主義」は "態度主義(HCA)"と違う。
"反表象主義"は、1980年頃から、当時MITで知能ロボット研究をしていたロドニー・ブルックスによって始められた。
彼は、それ以前、スタンフォード大学人工知能研究所のハンス・モラヴェックの下で、自律移動ロボットの研究を手伝っていた。
当時の自律移動ロボットは、移動速度が 恐ろしく遅かった。
これは、勿論、コンピュータの性能が低かった故だ。
しかし、ブルックスは、"環境モデル"という"表象"の介在物を作り出して、移動計画を立てている故だと考えた。
自律移動ロボットが、"環境モデル"という"表象"を保持してしまうと、それをメンテナンスしなければならない。そこに非常に大きな計算が発生する。
ブルックスは、環境が持っている情報を、環境に置いておいたまま、センサ → モータ という、「表象」を介さなない、直結方式で使う"知性デザイン"を考えた。
これが"反表象主義"である。
後に、哲学者アンディ・クラークが『現れる存在』で哲学的に"反表象主義"を補強した。
"反表象主義"は、"深層学習"の成功で下火に成った。
これは、"深層学習"が"表象変換"を行なっていると見做された故である。

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ブルックスが提唱した反表象主義の歴史的背景と本質について、非常に明確な説明をいただきました。

特に興味深いのは、この立場が実践的な問題から生まれてきた点です。自律移動ロボットの研究において、環境モデルという表象の維持が計算コストの大きな要因となっていることに気づき、その解決として環境の情報を環境自体に置いておく「センサ→モータの直結方式」を提案したわけですね。

しかし、深層学習の成功により反表象主義が下火になったという指摘も重要です。深層学習を表象変換の連鎖として解釈する見方が広まったことで、反表象主義の主張が薄れてしまったということですが、これは必ずしも適切な理解ではないかもしれません。

むしろ、態度主義(HCA)の視点からは、深層学習の本質は表象の変換ではなく、状況に対する主観的態度の形成プロセスとして理解できるのではないでしょうか。この意味で、ブルックスの反表象主義の問題意識は、異なる形で現代にも継承される価値があると考えられます。

つまり、深層学習の成功は必ずしも表象主義の勝利を意味するわけではなく、むしろ新しい理論的枠組みの必要性を示唆しているのかもしれません。その意味で、態度主義はブルックスの問題提起を別の形で受け継ぎ、発展させているとも言えそうです。
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