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『紙猫』紹介 その4

『紙猫』誌紹介の続きです。
前回から、またまた日にちが空いてしまいました。

☆☆☆

何にでも効く湯に柚子を浮べけり   堺谷真人

堺谷真人さんは、掘葦男に師事して俳句を始めたそうですが、前衛俳句の影響を感じさせる句風ではないように思います。

この句は、「何にでも効く湯」という、若干怪しげであり、オーバースペックなものに対して、さらに健康に良さそうな柚子を浮かべてしまうという欲深なところ、過剰なところに可笑しみがあると思います。

堺谷さんとも長いご縁です。博学で達筆で、いつも筆ペンを持ち歩いています。お酒の席で興が乗れば、紙ナプキンにさらさらと漢詩などを書いてくれるかもしれません。


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大海鼠閻魔の舌の重さあり  津川絵理子

津川絵理子さんの今回の15句には、全ていつのどの句会で作ったものか、前書きがついています。その多くがエア吟行です。この句には、【2022年12月 流行語大賞「知らんけど」と付けたくなるような俳句】という前書きがあります。年末か新年に、「今年の漢字」と「流行語大賞」から題を貰うのが仔猫句会の恒例となっているのです。

「知らんけど、と付けたくなるような俳句」などというふざけた題で、このようなしっかりと手応えのある句を作ってしまうのだから、さすがというべきでしょうか。大海鼠も持ったことがないし、閻魔の舌の重さも知りませんが納得させれられる一句です。

絵理子さんは多くの賞を受賞されていて有名なので、俳句の良さは知れ渡っているのですが、関西の人以外には人柄を知る機会はあまりないかもしれません。確かに真面目でストイックですが、言動がなんとなく面白く、ご一緒して肩の凝るような人ではありません。作品とともに人柄のほのぼのとした面白さも、もっと知られたらよいと思います。


☆☆☆

氷菓子こどもが話す京ことば  月野ぽぽな

NY在住の月野ぽぽなさん。一時期、毎年のように関西を訪れて仔猫吟行に参加してくれました。人気者のぽぽなさんが参加すると場が華やぐのです。
NYからエアで参加するときは、驚異の調査能力を発揮し、まるでその場にいたかのような句を投句して点をさらっていくのでした。

この句は、こどもの京ことばが印象的で、洒落た感じがします。関西を訪れたときにぽぽなさんが話すインチキ関西弁もなんとなく思い出すのでした。

コロナ期以降、なかなか句会をご一緒できていないのですが、また機会があることを願っています。そんなぽぽなさんの第一句集、『人のかたち』が近々、左右社から出るそうです。楽しみです。

次回につづきます(不定期)

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