凍結肩と甲状腺疾患の関連性

概要

凍結肩(肩関節周囲炎)は、肩の関節可動域が著しく制限される疾患です。この研究では、甲状腺疾患(特に甲状腺機能低下症および良性結節)が凍結肩の発症リスクを高める可能性について検証しています。結果として、甲状腺疾患の存在が凍結肩のリスクを約2.69倍に増加させることが示されました。

研究の背景

凍結肩は40〜60歳の人々に最も多く見られ、特に女性にやや多いとされています。本疾患は、糖尿病、甲状腺疾患、外傷、または手術歴など、さまざまな要因によって引き起こされる可能性があります。
本研究では、甲状腺疾患との関連性を明確にするため、以下の3つのグループで比較が行われました:
1. 凍結肩患者(166名)
2. 回旋筋腱板損傷患者(129名)
3. 健康なコントロール群(251名)

方法
• 対象者: 凍結肩患者166名、回旋筋腱板損傷患者129名、コントロール群251名。
• 評価: すべての参加者は、年齢、性別、BMI、職業、身体活動、甲状腺疾患、喫煙・飲酒習慣、その他の併存疾患についての質問票に回答。
• 統計分析: 単変量および多変量ロジスティック回帰分析が使用され、甲状腺疾患と凍結肩の関連性が評価されました。

主な結果
1. 甲状腺疾患との関連性:
• 凍結肩群の34%が甲状腺疾患を報告。
• 回旋筋腱板損傷群では5%、コントロール群では14%と有意に低い。
• 凍結肩患者は甲状腺疾患を有するリスクが2.69倍高かった。
2. 甲状腺疾患の内訳(凍結肩群):
• 甲状腺機能低下症: 17%
• 良性甲状腺結節: 10%
• 甲状腺炎: 4%
• 甲状腺がん: 3%
3. 性別差:
• 凍結肩患者の60%が女性。
• 特に甲状腺疾患を持つ凍結肩患者の84%が女性で、女性のリスクが有意に高いと示唆されました。
4. その他の関連因子:
• 腎結石、精神疾患(うつ、不安障害)が凍結肩と関連。
• 一方で、糖尿病や高血圧との有意な関連性は見られませんでした。

考察

本研究は、甲状腺疾患(特に甲状腺機能低下症)が凍結肩の発症リスクを特異的に高めることを明確に示しました。他の肩関節疾患(回旋筋腱板損傷)との比較により、この関連性が凍結肩に特有であることが示されています。女性におけるリスク増加は、ホルモンや自己免疫の関与が示唆されています。

臨床的意義:
• 凍結肩患者の診断および治療計画を立てる際、甲状腺疾患のスクリーニングが推奨されます。
• 特に女性患者において、甲状腺疾患の管理が重要と考えられます。

制限と今後の研究

本研究の限界として、甲状腺ホルモンレベルの詳細な評価が不足しており、甲状腺疾患のサブクリニカルケースが含まれていない可能性があります。今後の研究では、ホルモンレベルと凍結肩の重症度との関連性をさらに検討する必要があります。

結論:
甲状腺疾患(特に甲状腺機能低下症および良性結節)は、凍結肩の発症リスクを高める重要な因子であり、女性患者でその影響がより顕著です。これらの知見は、早期診断と適切な管理の重要性を強調しています。

参考
Cohen, C., Tortato, S., Silva, O. B. S., Leal, M. F., Ejnisman, B., Faloppa, F. (2020). Association between Frozen Shoulder and Thyroid Diseases: Strengthening the Evidences. Revista Brasileira de Ortopedia, 55(4), 483-489.

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