Rotator Cableとは?エビデンスに基づくリハビリの考え方



1. Rotator Cableとは?

Rotator Cable(ローテーターケーブル)は、肩の腱板(rotator cuff)の一部を補強する線維性のバンドであり、肩関節の安定性と運動において重要な役割を果たします。この構造は特に棘上筋(supraspinatus)と棘下筋(infraspinatus)の筋腱移行部に沿って存在し、腱板全体の負荷を分散することで、損傷リスクを軽減すると考えられています。

近年の研究では、Rotator Cableが腱板断裂の影響を軽減する可能性があることが示されており、腱板損傷における保存療法や術後リハビリの設計において、この構造の役割を理解することが重要です。

2. Rotator Cableの役割

(1) 負荷の分散

Rotator Cableは、腱板が大きな負荷を受ける際にそれを分散し、腱板自体の損傷リスクを低減します。この構造によって、腱板の特定部位にかかるストレスが軽減されるため、損傷の進行を抑える働きがあると考えられています。

(2) 肩の安定性

Rotator Cableは肩関節のバイオメカニクスにおいて重要な役割を果たし、特に棘上筋と棘下筋の機能をサポートすることで肩の安定性を向上させます。これにより、腱板が損傷していても一定の肩機能が維持される可能性があります。

(3) 機能の維持

Rotator Cableの存在により、腱板が部分的に断裂しても肩の機能が完全に失われることを防ぐ役割があるとされています。そのため、小規模な腱板損傷では保存療法を選択することで、機能回復が可能となるケースもあります。

3. Rotator Cable損傷とリハビリテーション

(1) 手術後のリハビリテーション

腱板修復術後のリハビリでは、適切な負荷管理が重要です。過剰な負荷をかけると修復された腱が再断裂するリスクがありますが、近年の研究では、早期リハビリが機能回復を促進しつつ、腱の修復に悪影響を及ぼさない可能性が示唆されています。

① 遅延リハビリ vs. 早期リハビリ

Paolucci et al. (2023) の研究では、遅延リハビリと早期リハビリを比較した結果、早期リハビリは短期間での可動域(ROM)改善に優れるが、長期的な機能には大きな差がないことが示されました。ただし、大きな腱板断裂の場合、遅延リハビリのほうが安全と考えられています。

② 腱の修復と可動域

Nikolaidou et al. (2017) によると、早期の**他動運動(passive range of motion: PROM)**は可動域の回復に役立つ一方、自動運動(active range of motion: AROM)は慎重に導入すべきとされています。

③ 水中リハビリ vs. 陸上リハビリ

水中リハビリが標準的なリハビリと比較されましたが、痛みや可動域の改善において明確な優位性は認められなかったと報告されています (Dufournet et al., 2022)。

(2) 保存療法とリハビリのアプローチ

手術を行わない場合、Rotator Cableの存在を考慮したリハビリプログラムを設計することが重要です。

① 等尺性収縮(Isometric exercise)

腱板損傷の保存療法では、早期の等尺性運動が機能回復と痛みの軽減に有効であることが報告されています (Raschhofer et al., 2017)。特に、肩の外旋や内旋の等尺性運動が推奨されます。

② 三角筋の強化

大きな腱板断裂では、三角筋の代償作用を活用することが有効とされています (Ainsworth, 2006)。具体的には、以下のようなエクササイズが推奨されます:
• アブダクション(外転): 三角筋中部を活性化
• 前方挙上(フロントレイズ): 三角筋前部を強化
• プランク系エクササイズ: 体幹と肩の安定性向上

4. 新人理学療法士へのアドバイス

① Rotator Cableの役割を理解する

肩関節のバイオメカニクスと腱板損傷との関係を学び、Rotator Cableの役割を理解することで、適切なリハビリプログラムを設計できるようになります。

② 段階的なリハビリを計画する
• 最初の6週間は他動運動(PROM)を中心に行い、修復組織を保護
• 徐々に自動運動(AROM)へ移行し、筋力トレーニングを開始

③ 痛みの管理を重視する
• アイシングや**電気刺激(TENS, NMES)**を活用し、痛みを軽減
• 痛みが強い場合は負荷を調整し、無理に可動域を拡大しない

④ エビデンスに基づいたアプローチを実践する

Mazuquin et al. (2021) によると、急激な負荷をかけると修復された腱の再断裂リスクが高まる可能性があるため、段階的な負荷の増加が重要です。

⑤ 患者ごとにリハビリを調整する
• 腱板断裂のサイズや患者の活動レベルに応じてリハビリの進行スピードを調整する
• スポーツ復帰が目標の患者には、動作分析やスポーツ特異的なリハビリを導入

まとめ

Rotator Cableは肩の安定性と腱板の負荷分散に重要な役割を果たします。リハビリでは、可動域の回復と腱の保護のバランスが求められます。エビデンスによると、早期リハビリが可動域の回復を促進する一方で、大きな断裂では遅延リハビリがより安全であることが示されています。

Rotator Cableの役割を理解し、エビデンスに基づいたアプローチを取り入れることで、より適切なリハビリを提供しましょう!

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