肩のインピンジメント症候群と回旋腱板断裂の管理 概要と解説



肩のインピンジメント症候群と回旋腱板断裂は、肩の痛みや運動障害の主要な原因として広く認識されています。この記事では、それらの病態生理、診断、治療法について包括的に説明します。

1. 回旋腱板の解剖学と機能

回旋腱板は、肩関節の安定性を維持する重要な役割を果たします。以下の4つの筋肉で構成されています。
• 棘上筋 (Supraspinatus): 主に外転運動に寄与。
• 棘下筋 (Infraspinatus): 外旋運動を担当。
• 小円筋 (Teres Minor): 棘下筋と共に外旋を補助。
• 肩甲下筋 (Subscapularis): 内旋を主に担当。

これらの筋肉が肩関節を安定化させ、上腕骨頭の上方移動を防ぎます。この機能が失われると、腱板のインピンジメントや断裂が生じる可能性があります。

2. 病因と分類

肩のインピンジメントは、肩峰下腔(肩峰と上腕骨頭の間のスペース)が狭くなることで発生します。この狭小化は以下の原因で生じます。
• 骨構造の異常: 肩峰の形状(タイプII: 曲面型、タイプIII: 鈎状型)がリスク因子。
• 加齢変化: 腱板の筋力低下や石灰化。
• 過剰使用や外傷: スポーツや労働による反復的な負荷。

Neerの分類によれば、インピンジメント症候群は3段階に分けられます。
• I期: 浮腫や出血(25歳未満、可逆的)。
• II期: 線維化や腱の不可逆的変化(25~40歳)。
• III期: 腱断裂や高度な線維化(50歳以上)。

3. 症状と診断

症状
• 夜間痛(特に患側を下にしたとき)。
• 肩の運動制限(特に外転や外旋時)。
• 腱板断裂の場合は筋力低下や萎縮も伴う。

診断法
• 身体診察: インピンジメントテストや腱板特異的テスト(例: Gerber’s Lift-Off Test)。
• 画像診断:
• X線(肩峰形状や石灰化の確認)。
• MRI(腱断裂の診断に最適)。
• 超音波検査(簡便かつ低コスト)。

4. 治療法

治療は症状の重症度に応じて以下のように進められます。

保存療法
• 炎症管理: NSAIDs、アイシング(1日3回、20分間)。
• 理学療法: 筋力強化(内旋・外旋・外転)、関節可動域の改善。
• 注射療法: ステロイド注射は、保存療法が効果を示さない場合に適応。

手術療法
• 保存療法が6か月以上効果を示さない場合や、若年患者の機能障害を伴う断裂が対象。
• 関節鏡手術: 肩峰形成術や腱板修復術(侵襲が少なく回復が早い)。

5. リハビリテーションと予後

リハビリテーションは全治療段階で重要です。特に以下の点が強調されます。
• 初期段階: 炎症軽減と可動域の維持。
• 中期~後期: 腱板筋力の回復と肩関節の安定性向上。
• 予後: 保存療法でも多くの患者が改善。若年患者やスポーツ選手は手術後も高い機能回復を期待できます。

参考
Management of Shoulder Impingement Syndrome and Rotator Cuff Tears」

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