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付き添いの食事と柵付きベット

突然の入院で、家族の生活は変化した。

飼っていたワンコは、父が出勤してから帰宅するまで長い留守番をすることになった。寂しさを紛らわせるために、前足を舐めすぎたようで、少しの期間で毛が薄くなってしまった。

父は、出勤前に早く家を出て、病棟に顔を出してから職場に向かう生活になった。母は僕に付き添うことになり、小児病棟の柵付きベットで一緒に寝ることになった。付き添い用の折りたたみベットも一度は借りたそうだが、とても使えるものではなかったという。柵付きベットに横付けすると、病室はいっぱいになり、親子の着替え、持参するおもちゃや本など生活用品で溢れる。週末だけ、母と父が付き添いを交代する。特に父は身長が高いので、柵付きベットの中で体を小さくして横になる。柵付きベットに親子で横になると、大人は上を向いて寝れない。肩幅を無意識に小さくして、子どもを潰さないように気をつけるしかない。それでも付き添い用の折りたたみベットよりマシだったという。ベットでなくてもいい、一畳の畳があればなんとか親子で寄り添えられるんじゃないか?なんとか安眠できるのではないか?
色々考えるが、与えられた環境で入院生活を耐えることを選択したそうだ。

時折、小さい子供がマンションのベランダから誤って転落する事故を聞く。これと同じように、病棟の柵付きベットも転落事故がある。柵付きベットの柵に足の指を挟んで?器用に柵を上り越えようとする。小さくて、具合が悪い様子からは予想もつかないと思うが、回復期に油断し、大人の目が届かない瞬間に事故が起こるらしい。母は「隣のベットの子どもが、付き添いが留守のとき、驚くような身体能力で柵を越え、裸足で病室を脱走して廊下に出て行ったのを見た」という。転落事故にはならなかったケースだが、子供から目は離せないのだと思う。

1人の入院を想定した間取りで、2人の親子が生活をする。1人の入院を想定しているから、食事は僕の分だけが出る。僕は食事制限がなく、普通食で量もある程度はあったので、出された食事を親子2人で食べた。そして、父が毎日握ってくるおにぎり(具のない、ただの白飯)で食事の量を増やした。あとは、真空パックの餅!これが主食にも、おやつにもなった。コップに満たした水に入れて、食堂のレンジにかけると柔らかくなって食べることが出来た。売店にもお弁当は売ってあるけれど、精神的に日々がサバイバルで、お弁当を目の前に自分が何を食べたらいいのか分からなくなっていたという。唯一、精神的にも肉体的にも休息をもたらすことが出来る、治療の合間の一時退院は、家族団欒で食卓を囲みおいしいものを食べてゆっくり過ごすことが出来た。