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ロンドンのホスピタルアートを見つけた。
帰国後、レポートにまとめていたところ、ロンドンの国立小児病院であるエブリーナ小児病院(Evelina Children’s Hospital)と聖トマス病院小児科(St. Thomas Hospital)のホスピタルアートをWebで見つけた。しかも、日本人の作品で漫画家の「玖保キリコさん」の絵だ! 発見した時は驚いた。目にしたことのある作風の絵が、ロンドンの小児病院にポイント的に採用されているのではなく、病院全体に多く使われているとは全く知らなかった。小児病院が、ミュージアムみたいになっている。
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日本文化が感じられて嬉しい。
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大きな病院は、入口から、採血から、検査室から、外来待合室へ診察に至るまで病院内の廊下を時間をかけて歩くことになるが、こうした絵が至る所にあるとしたら、見て歩くのも楽しいと思う。それに、ここでは病院内での道案内の意図も含まれているそうだ。
日本の小児科は対象年齢が15歳までだ(理想としては、思春期の18歳までらしい)。これまで外来で見かけるパステルカラーのウサギやクマの絵は、保育園の延長のようで、対象年齢が低く限られる感じがしていた。それに、病院という中にいると、抽象的なものよりも、リアルなものに目が引かれる。自然にあるものを恋しがるような。
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トンボの絵。かわいいイラストタッチはありがちだが、玖保キリコ先生の作品は、リアルに翅模様まで再現してあり、以前、トンボ取りをした時のトンボを思い出した。トンボの背中に子どもが乗っていて、気持ちが上がる感じがする。
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作品になる過程には、病院の理事会や現場の医師や看護師、患者と家族が意見を出し合い、コミュニケーションを重ねて制作されるという。日帰り手術のための施設、エブリーナ小児病院デイトリートメントセンター(Evelina Children’s Hospital Day Treatment Centre)が新しく建設された際には、コンセプトである宇宙をテーマに子どもたちから作品を募り、デザインコンテストを行った。その受賞作品を玖保キリコ先生が再創造されている。
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月に行ってしまった(亡くなった)父親を想い、
月へ行くために役立つものを作ろうとイメージされたそうだ。
また、包帯をしていたり、採血をしていたり、様々な年齢の子どもが治療している様子が描かれていて、必ず病院のどこかに、自分と気持ちを分け合うことのできる仲間となるような子が描かれている様に思えた。
病院での治療行為は不安になりがちだが、そうではなくなる。ホスピタルアートの力は、入院日数が短縮されたり、回復を早めることも証明されているそうだ。