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コトラーマーケティング4.0時代の防犯情報の在り方
木下斉さんのジブン株式会社ビジネススクール4時限目の課題である、コトラーマーケティング4.0について、私なりの視点で考察していこうと思います。
本来のマーケティングは、物(商品、製品)を売るための方針、戦略という意味があると思います。
しかし、今回、考察したいのは、防犯情報を効果的に広めるにはどうしたらいいか?ということです。
ここで言う『効果的』とは、ただ見聞きしただけではなく、情報の受け手が、理解し、自分自身の行動へと活かすことができるようになることを意味します。
以下では、『物が売れること』を『情報が効果的に広まること』に引き直して考察していこうと思います。
マーケティング1.0:製品中心のマーケティング
特徴は、製品そのものが中心で、いかに効率的に大量生産し、販売するかということに焦点が当っています。
例としては、フォード社のT型フォードなど、画一的な製品を大量に生産し、低価格で販売する戦略です。
一言で言うと、物がないから作れば売れる状況。
情報統制をしているような社会であれば、公から発信する防犯情報も伝わりやすいのではないでしょうか?
しかし、現在は、情報過多、溢れかえっている状況です。
そのような状況で、ただ単に防犯情報を発信したところで、他の情報に埋没するだけです。
つまり、物ならば、売れない、情報であれば伝わらないということです。
マーケティング2.0:顧客中心のマーケティング
特徴は、顧客のニーズや欲求を重視し、セグメンテーションやターゲティング、ポジショニングといった概念の導入です。
例としては、顧客の属性や嗜好に合わせて製品を差別化し、マーケティング活動を行います。
情報の受け手に合わせて、興味を引くような形での情報発信をするということになりましょうか。
例えば、若者相手に対しては、漫画風にした情報発信、年寄りに対しては、杉良太郎を使った特殊詐欺啓発ポスターがそれにあたるのではないでしょうか。
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マーケティング3.0:価値観中心のマーケティング
特徴は、顧客の価値観や社会的な責任を重視し、企業の社会的責任(CSR)が重要視されるようになりました。
例としては、環境問題や社会問題に関心を持ち、それらを解決するような製品やサービスを提供します。
キーワードは、『もの消費から、こと消費へ』ではないでしょうか。
そして、物(商品、製品)から得られる直接的な効用よりも、その消費から得られる精神的充足の方に価値が置かれる経済だといえます。
逆説的な説明になりますが、精神的充足の反対として、『恥』の概念があります。
精神的充足の反転として、『恥』の概念を利用した啓発をされていたのが、ノンフィクションライター中村淳彦さんの昨年のアッパラパーワーママ論争だと思います。
アッパラパーワーママ論争とは、音声配信界隈で確認された「自分業」に踊らされ高額商材を買わされたワーママが続発しつつあったタイミングでの問題提起。
中村淳彦さんは、キラポエに踊らされて(騙されて)、高額商材を買い、仕事まで辞めてしまったケースを面白おかしくディスりながら啓発されていました。
これは、人々の『恥』の認識に訴えかけた情報発信(啓発活動)であるといえます。
精神的充足に訴えかけるマーケティングとは、逆説的(反転)ですが、中村さんの手法は、マーケティング3.0の手法での情報発信だと言えると思います。
マーケティング4.0:自己実現を支援するマーケティング
特徴は、顧客の自己実現を支援し、顧客が製品やサービスを通して「なりたい自分」になれるような体験を提供することを目指します。
例としては、フィットネスアプリは、単に運動記録をつけるだけでなく、ユーザーが目標達成に向けてモチベーションを維持できるような機能を提供することで、自己実現を支援したります。
今後のマーケティングの主戦場になるところです。
スマホ、SNS全盛の状況で、理想の自分像、承認欲求を満たすために写真投稿、動画配信につながる物、ことが売れるということです。
「わぁお!」という体験をシェアしたいという欲求を満たすことができるかがマーケティングのツボになっているということです。
情報発信においても、ここを意識しなければ、情報の効果的な広がりはないと思います。
ここで、防犯情報の発信に引き直して考えるのであれば、これまで情報の受け手だった者自身によるシェアを促す仕組みが必要かと思います。
若者の闇バイト対策であれば、情報の受け手である若者自身が「闇バイトに関わらない」ことを発信したくなる仕掛けが必要になると思います。
高齢者の特殊詐欺対策であれば、特殊詐欺啓発川柳でも募集すれば、高齢者の功名心を刺激し、真剣に詐欺について考えるようになるのではないでしょうか。
これまで、行政が発信する情報のほとんどが、ただ単に発信しているだけで、効果的ではないところが実情です。
ポスター?、広報動画?など全て費用の無駄です。
誰も見てない、聞いてない、気にも留めていません。
これでは、全く意味がありません。
まずは、この現実を知るべきです。
そのうえで、コトラーマーケティングを軸にした情報発信戦略が必要になると考えます。
以上が、コトラーマーケティングを軸にした防犯情報の発信の在り方の考察でした。