10年後の日本の治安(春木ゼミ課題①)
10年後の未来を予測してみるという課題が、voicyパーソナリティーの春木良且先生から出されました。
既に、私は、行政分野の未来予測については、課題を配信させていただいたところですが。
同課題のコンセプトが明かされるに従い、再度この課題に向き合おうと思うようになりました。
課題を身近な具体に引き付ける、私らいし題材を考えたときに「治安」というキーワードでした。
考察の過程において、「治安」=無料のものについてパラダイムシフトが起きるのではないかという点に至りました。
そのため、「治安」という範疇から若干外れた考察も含むことをご了承ください。
以外では、この課題をもとに、10年後の未来予測に関する課題を再考してみようと思います。(なお課題は仕事や業界といったお金の授受が発生する分野についてとのことですのでその範囲からズレることもお許しください。
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1 2024年到達地点
春木先生の考察において、2014年を起算点としてこの10年間に影響を 及ぼした2軸として以下のものが挙げられています。
市場と規制の軸は、「多様性」(Diversity)が可視化されたことが挙げられていました。
科学技術の軸は、スマートフォンの普及(デジタル拡大に寄与)が挙げられていました。
なお、同考察においては、
①多様性⇔画一性
②デジタル拡大⇔アナログ回帰
という4つの未来シナリオがありえたことに言及されていました。(詳細な解説は春木先生のnoteをご覧ください。)
以下の説明は、多様性が可視化され、デジタル技術が拡大した2024年現在を前提に今後10年間トレンド等を見定め考察していきたいと思います。
2 今後10年間で重要となる影響力及び確度の軸
今後影響力があれど不確定要素が大きな軸は、以下の2つが考えられます。
市場と規制の軸として、「調整(分断と統合)」が挙げられると考えます。
多様性の意義を調べると、性別、年齢、人種、民族、宗教、性的指向、障害の有無など、人それぞれ異なる価値観があることを受け入れ、お互いを理解し合おうとする考え方のことと回答が得られました。
つまり、人々の違いを認め、尊重することがその大前提としてあります。
そして多様性が可視化された現在において、それぞれの極の価値観・利害の対立が先鋭かし始めています。
例えば、LGBTQのトイレ、銭湯利用問題やオリンピックの出場資格の問題などです。
また、難民問題を発露とする欧州が抱える様々な問題も多様性を重視することから起因しているように思えます。
さらには、キャンセルカルチャーなる社会の動き出始めてきました。
これまで、可視化されてこなかったマイノリティーの権利や利益はそれだけ侵害されきたとも言えますが、マイノリティーの権利や利益を保護することでマジョリティーの既得権益が狭められている場面が生じています。
現在過渡期といえますが、価値観・利害の対立が分断に向かうのか、統合に向かうのかは非常に不確定であり、将来の社会像に大きな影響を与える要素と考えられます。
そして科学技術の軸として、急速な進歩を遂げる「AI」が挙げられると考えます。
ChatGPTをはじめ現在第三次AIブームが到来しています。
かつて、越えられない壁により尻すぼみになったAIブームですが、今回のブームは様相が異なりそうです。
もしかしたら、シンギュラリティー(技術的特異点)を超える可能性があるのではないか?(これは、SFでしょうか。)
AIの進化や我々の生活にどれほど活用されるのか、その影響は社会にどう作用するのか。
AIの進化は、ほぼ確実であるところ、その実どの程度社会に浸透し影響を与えていくのかその波紋は予想だにしません。
以下の図を参考にしてください。
私は、この図上の不確実&大きなトレンドに位置するのが、
調整(分断と統合)
AI
であると考えます。
3 2軸からの4象限
上記インパクトポートフォリオから抽出した要素のプラスとマイナスの側面を参考に4つの象限を考えます。
利害関係の調整については、プラスは「統合(インクルーシブ)」、マイナスは「分断」と表現します。
AIについては、プラスは「AIの進化・浸透した社会」、マイナスは「人中心の社会(アナログ)」と表現します。
この2軸をもとにそれぞれが進展した場合とそうでない場合を
(現在)① 統合(インクルーシブ)⊕ ✖ 人中心の社会(アナログ)⊖
② 分断⊖ ✖ 人中心の社会(アナログ)⊖
③ 分断⊖ ✖ AIの進化・浸透した社会⊕
④ 統合(インクルーシブ)⊕ ✖ AIの進化・浸透した社会
という4象限の社会がどのようになるか考えることにしました。
以降、下記図を基に、各予想される未来(象限)を解説していきます。
2024年現在
① 統合(インクルーシブ)⊕ ✖ 人中心の社会(アナログ)⊖
2024年現在においてもAIの活用が話題ですが、10年後と比べればまだまだといったところになるのではないでしょうか。
つまり10年後と比べれば人中心の社会であるといえます。
そして、マイノリティーの利害関係が可視化された現在は、マイノリティーを社会に抱合していこうという機運があるのではないでしょうか。
そのため、人中心の社会でありながらもAIの発展が期待され、マイノリティーなどを抱合していこうという社会状態が2024年の立ち位置なのではないでしょうか。
ここまでは、前段です。
今後インパクトポートフォリオの要素の進展の有無がどのような影響を社会にもたらすかを予測していきたいと思います。
ゲーティッドコミュニティ
② 分断⊖ ✖ 人中心の社会(アナログ)⊖
一言で言えば、村社会。
価値観・利害の対立が抱合できず、決定的な亀裂を各集団の中に生むこととなった場合、同じ価値観を共有する者同士がまとまる流れが予想されます。
そして、AI等技術の進歩がそれ程図られなかった場合には、物理的な方法で価値観の尊重が行われるようになると考えます。
その例として、アメリカ等に既に実在するゲーティッドコミュニティ
です。
その住宅地は壁に囲われ、専用のガードマンも常駐しています。同地域に入れるのは、決まった住人と業者のみという世界です。
ある法規範や価値観を共有、尊重できない者は、そのコミュニティには入れないということです。
「治安」という公共サービスに対して同じ価値観を共有する者同士でプラスアルファの負担をする。
そのようにまでしても、隔たりを設けたい他者とはいったいどういった者か。
と、疑問調にしましたが、読者の皆様にも知覚できているはずです。
こいつとは分かり合えない。
分かり合えないだけならまだしも、人に害を与え、リソースを奪い、公共負担へのフリーライドする輩。
こいつらと、今生の別れができるのであれば、そうしたいと考えるはずです。
物理的な断絶により、単純接触の機会が減少。
アナログ的な武力により治安を維持する社会にとなると考えられます。
さらには、AI等の技術も進展しないということは、社会課題(経済・環境・人権・労働)の解決が遅れ、社会的余裕も生まれません。
社会的余裕がなければ、利害関係を抱合する余白が作れず、益々対立は先鋭化することでしょう。
この社会の帰結は、不可逆的な対立構造を生じさせることとなると考えられます。
スラムとユートピアの明確化・差別化です。
ディストリクトマネジメント
③ 分断⊖ ✖ AIの進化・浸透した社会⊕
この象限が私が予測する未来です。
AIを利用した価値観の棲み分け、ある価値観を共有できない者とは関わらない社会の到来です。
まず、現在の欧州は、移民政策の失敗、過度なマイノリティ優遇政策により社会の緊張状態は高まっています。
またアメリカにおいても、価値観・宗教観等の対立により、人種、社会階層、居住地域の軋轢は決定的なものになりつつあります。
欧米の社会状況は、一部、数十年後の日本の未来といえるのではないでしょうか。
これらの背景には、
保護される立場からマジョリティに社会闘争を挑む立場への転換
違いを認め合わない・妥協しない価値観の対立
があると考えられます。
保護からの攻撃性への転換
まず多様性にスポットが当たり、マイノリティーが可視化されたことで保護政策が取られるようになりました。
それが、ある時点から過剰ともいえる保護政策を笠に着たマイノリティー
の主張・要求が目に付くようになってきたと思います。
もちろんこの表現はマジョリティー側の見方であることは自覚しています。
しかし、政治、行政、司法内での配慮が、結果としてマジョリティーへの利害関係を狭め、さらには攻撃性へと発展してきています。
一種のマイノリティー側から社会闘争を仕掛けられていると言えるのではないでしょうか。
また、社会の余裕(経済的、環境的)がなくなってきたことも少なからず影響していると思います。
違いを認め合わない・妥協しない価値観の対立
価値観の先鋭化は、ネット社会により加速しているのではないでしょうか。
同じ考えを持つ者とつながりやすい、さらにはレコメンド機能により自分と異なる考えとの出会いは排除されつつすらあります。
そのため自分の考え方・価値観を正当化しやく、そのことはそれぞれの軸に当てはまるため、それぞれの考え方・価値観の対立が生じやくなります。
そして、それぞれの考え・価値観が譲り合うことをしないため対立は、対立のままとなります。
この場合、戦って相手を殲滅するか、全くの関わりを持たないこととするかの2択しかないと思われます。
しかし、現代社会において異なる考え方・価値観がある場合常に相手を殲滅していてはあまりに不経済極まれると思います。
そのため、関わりを持たないことにするということが現実解なのではないでしょうか。
各考え方・価値観の攻撃性の表出、譲り合わない状態では、ぞれぞれが関わり合わない社会を創出しなければ、暴力的な混乱の帰結となってしまいます。
そのため、これらの必然的な結果として分断があり、「関わり合わない」ことに帰結するのです。
そして、その分断にAIを利用することでゲーティッドコミュニティ
のような物理的な壁の建設は必要ではなくなります。
物理的な隔絶を必要とせずに、共通する考え方・価値観の者同士だけでの生活コミュニティを実現することにAIが貢献することになります。
この社会では、AIが価値観(人)の選別をサポートすることで、物理的な又はバーチャルの空間への連帯責任を共有する者同士の結びつきが加速すると思われます。
価値観(人)を分ける壁は、物理的なものではなく、インビジブルに存在するということです。
宗教的な優劣のないインビジブルカースト制度とでも言いましょうか。
この社会において理想の治安と価値観の下で生活をするためには、そのレベルに合わせたカーストに所属する必要があります。
理想とする所属先に入るには、構成員相互に相応の負担が必要となります。
この負担は、これまでの税金による一律負担だったものから各所属先ごとで所属者負担の比率が変化するということにつながります。
各空間における「治安」のグラデーションが加速されます。
スマートシティー
④ 統合(インクルーシブ)⊕ ✖ AIの進化・浸透した社会
一種のユートピア的な発想であることを禁じ得ません。
しかし、最も良い方に振れた場合のシナリオです。
AIの発展が希望的・楽観的な未来発展へ寄与したとしましょう。
現代の環境問題、エネルギー問題、価値観・宗教対立等が解消した社会の到来が考えられます。
第4次産業革命の到来、人と機械の協働、社会課題の解決。
それにより、経済的な余裕、環境的な余裕、思考の余裕が生まれ、多様な価値観を持つ人々を抱合する社会が到来すると思われます。
「治安」の安定は、社会的な余裕に左右されます。
そのため、この想定の社会の「治安」は、安定したものとなると考えられます。
4 パラダイムシフト
これまで、各要素の想定をもとに未来予測をしてみましたが、AIの進展は、確実と思われます。
そして、AIの進展は、経済的な発展と価値観の分断をもたらすのではないかと私は予想します。
その場合、
有料だったものが無料
無料だったものが有料
へと変化するのではないかと考えるに至りました。
例えば、AIの進展により、タクシーなどの運送業は、AIによる自動運転へと移行した方が生産的であると思われます。
その場合ドライバーは、失業することになります。
反対勢力となり自動運転への移行を妨げる要因となりえるかもしれません。
経済的な視点に立つと自動運転への移行が妨げられるよりは、その者らが稼いでいた給与分を負担してでも自動運転へ移行へと舵を切る(反対されない)方が良いということになります。
AIによる運転行為の生産性が高すぎることで、人の運転行為の価値が極限まで低下するということです。
つまり、これまで有償であった運転行為(労働)が無償に近づいたということが言えるのではないでしょうか。(移動というサービスの有償性は変わりません)
その一方で、これまで税金での維持負担をしてきた「治安」。
日本の「治安」は、世界トップクラスの「治安」の良さから、水と並びタダと称されてきました。
しかし、同じ価値観を共有しない者同士がそれぞれの負担を嫌うことで、分断が進みます。
ある所属先は「治安」への関心が高く、税金以上の負担を払っても「治安」の向上を図りたいと思うかもしれません。
他の所属先は、「治安」への関心が低く、「治安」に対しては最低限の負担で済ませたいと思うかもしれません。
これは「治安」が向上していく所属先もあれば、どんどん「治安」が悪化してく所属先もあるということです。
ここで「治安」と表現していますが、これまで無料のように利用・享受してきた公共サービスのことだと言い換えてもらって構いません。
つまり、より良い公共サービスを志向するのであれば、今後有料(それ相応の負担)になるということです。
これが、有料だったものが無料へ、無料だったものが有料へというパラダイムシフトが起きるのではないでしょうか。
以上が不確実&大きなトレンドを分析し、2軸・4象限で検討した結果、今後起きうると推測されるパラダイムシフトです。
PS 春木先生へ
この記事は8月上旬からちょこちょ考えてきました。思考の停止期間も あり満足いく内容ではありません。
今後も考察を深めていきます。
ありがとうございました。(しかし、ぐでたま状態)