日大フェアプレー物語(浅野浩二の小説)

日大、女子野球部と、関西学院大学、女子野球部は、日本を代表する、実力チームである。
2018年(平成30年)5月6日、日大、女子野球部と、関西学院大学、女子野球部は、定期交流試合を行った。
日大女子野球部では、内田監督は、絶対権力者だった。
選手は、内田監督の言うことには、逆らえず、というより、内田監督に、話しかけることは、恐れ多いことで、選手は、内田監督には、絶対服従だった。
内田監督が、コーチに試合の采配、起用、練習内容、その他、全てのことを決めて、コーチに命じて、選手は、コーチの言うことに従うのだった。
それが、日大女子野球部の組織構造だった。
2018年(平成30年)5月6日、日大、女子野球部と、関西学院大学、女子野球部は、定期交流試合が行われた。
試合は、関西学院大学が先攻に決まった。
試合前、日大の、エース、宮川京子に、井上ピッチング・コーチが、こう命じた。
「関西学院大学、の3番の、奥野康子さえ、抑えれば、我が野球部は勝てる。お前は、奥野康子をデッドボールで、つぶせ」
と、井上ピッチング・コーチが、命じた。
「ええー。そんなこと。出来ません。井上コーチ」
宮川京子は、驚いて言った。
「これは、内田監督の指示だ。もし、奥野康子を、つぶさなかったら、お前は、もう、試合に出さないからな」
と、井上ピッチング・コーチが、念を押した。
宮川京子は、悲しい思いで、マウンドに向かった。
(こんなこと、スポーツウーマンシップから、考えたら、狂っている。でも、奥野康子さんを怪我させなかったら、私は、試合に出してもらえない)
宮川京子にとって、野球は、生きがい、そのもの、だった。
彼女から、野球を、奪うのは、彼女の命を奪うのと、同じほどの意味を持っていた。
ウーウーウー。
試合開始のサイレンが鳴った。
関西学院大学女子野球部の、1番バッターが、バッターボックスに入った。
宮川京子は、大きなワインドアップの動作に入って、投げた。
1番バッターは、三球三振で打ちとった。
2番バッターも、三球三振で打ちとった。
なにせ、宮川京子は、女子なのに、小学生の時から野球を始め、リトルリーグでは、全国優勝したほどである。
彼女の球威は、物凄く、最速、時速160km/hのストレートを投げることが、出来た。
彼女が、本気で、デッドボールを投げたら、打者は、とても、よけられるものではない。
3番の、奥野康子が、バッターボックスに入った。
「京子。久しぶりね。今日は、絶対、負けないからね」
と、奥野康子は、微笑んで言った。
宮川京子は、手加減して、スピードも、少し遅くして、あまり、怪我の程度が、少ない、お尻へ、デッドボールを投げようと思った。
その時である。
井上ピッチングコーチが、「タイム」、をかけて、マウンドにやって来た。
そして、宮川京子を厳しく、にらみつけた。
「いいか。本当に、やらなきゃ、意味ないぞ。やらなかったら、お前は、もう、試合に、出さないからな」
と、念を押して、ダッグアウトに戻って行った。
宮川京子と、奥野康子は、幼い頃から、友達で親友でもあった。
小学校も、中学校も、高校も、関西学院大学の付属の同じ、学校で過ごした。
大学は、宮川京子は、危機管理学部があり、女子野球部もある、日大に、行くことにしたのである。
奥野康子は、そのまま、地元の、関西学院大学に進学した。
(野球は私の命だわ。康子。ゴメン。許して)
宮川京子は、泣きながら、第一球から、バッターボックスの、奥野康子を、狙って、思い切り、投げた。
投げた直後、宮川京子は、「康子。お願い。よけて」、と、心の中で、叫んだ。
しかし、時速160km/hのストレートである。
打者に届くまで、0.2秒もない。
よけようと思って、よけられるものではない。
「あっ」
奥野康子は、とっさに、声を出して、危険を回避しようと、身をかわそうと、したが、宮川京子の剛速球は、よけられなかった。
ボールは、奥野康子の、頭に当たった。
ヘルメットをかぶっている、とはいえ、その衝撃は強く、奥野康子は、倒れてしまった。
「康子!!」
宮川京子は、あわてて、マウンドから、倒れている、奥野康子の元に駆けつけた。
「康子!!。ゴメンね。しっかりして」
宮川京子は、泣きながら、奥野康子を、ゆすった。
球場医が、すぐに、駆けつけて来た。
「頭部外傷の場合、頭を動かすのは、危険です。診察しますので、離れて下さい」
球場医が、言った。
なので、宮川京子は、泣きながら、奥野康子から離れた。
「今のは、危険球と見なします。宮川選手は、退場処分とします」
と、主審が言った。
宮川京子は、泣きながら、奥野康子を見守った。
球場医は、倒れている、奥野康子の診察を始めた。
「奥野さん。奥野さん」
と、球場医は、何度も、大きな声で、呼びかけた。
しかし、反応が無い。
医師は、奥野康子の、胸骨を、グリッと、力一杯、押した。
しかし、反応が無い。
「意識消失のレベルは、JCS300です」
医師が言った。
次に医師は、ペンライトを取り出して、奥野康子の、瞼を開け、対光反射を調べた。
「対光反射は、正常です」
医師が言った。
次に、医師は、奥野康子の口に顔を近づけて、呼吸を確認し、次に、手首で脈を調べた。
「呼吸と脈も、正常です」
医師が言った。
「一過性の脳震盪だと思います。やがて意識を回復すると思います。しかし、これだけの検査では、確定的なことは、言えません。MRIの撮影、その他、精密検査が必要です。すぐ、日大病院に搬送して下さい」
医師が言った。
「わかりました」
日大女子野球部の、ヘッドコーチが言った。
奥野康子は、担架に乗せられて、球場に用意されていた、救急車で、日大病院へ搬送された。
「私も、同行させて下さい」
宮川京子が救急隊員に言った。
「あなたは、この負傷者と、どういう関係なのですか?」
救急隊員が聞いた。
「この人を負傷させてしまった、加害者です。ライバルですけれど、幼馴染み、の、かけがえのない友人でもあります」
と、宮川京子が、言った。
「わかりました。いいでしょう」
救急隊員が言った。
こうして、宮川京子は、救急車に、乗り込んだ。
ピーポーピーポー。
救急車は、サイレンを鳴らしながら、神宮球場から、日大病院へと向かった。
移動中、宮川京子は、意識の無い、奥野康子の、手を、握りしめた。
(神様。どうか、康子ちゃん、が、無事でありますように)
と、宮川京子は、祈った。
宮川京子は、大学は、日大だが、小学校も、中学校も、高校も、関西学院大学の付属の同じ、学校だった。
クラスも、奥野康子と同じになったこともある。
二人は、休みの日には、京都、奈良の、お寺を回ったり、一緒に、勉強したりした、昵懇、の間柄だった。
関西学院大学および、付属の、小学校も、中学校も、高校も、ミッションスクールで、キリスト教が、教育理念の根本にあった。
毎日、朝には、礼拝があった。
宮川京子は、信仰心のあつい生徒だったので、高校の時、洗礼を受けて、クリスチャンになっていた。
奥野康子も、同様に、信仰心が、あつく、高校の時、宮川京子と、一緒に、洗礼を受けて、クリスチャンになっていた。
彼女は、将来は、牧師になろうと、関西学院大学の、神学部に進学していた。
搬送中、宮川京子は、一心に、神に祈った。
(神様。どうか、康子ちゃん、が、無事でありますように)
救急車が日大病院に着いた。
病院では、救急科の医師、数名と、看護師、数名が、病院の外に出て、負傷者の到来を待っていた。
救急隊員は、奥野康子の乗っているストレッチャーを、降ろした。
「頭部外傷です。意識レベルは、JCS300です。が、バイタルは、問題ありません。どうか、よろしくお願い致します」
救急隊員が言った。
「わかりました。ご苦労さまです」
救急科の医師が言った。
看護師たちが、奥野康子の乗った、ストレッチャーを、病院に運び入れようとした。
「先生。康子ちゃんは、助かるでしょうか?」
宮川京子が、医師に聞いた。
「あなたは誰ですか?」
医師が聞いた。
「康子ちゃんを怪我させた、加害者です」
宮川京子が、言った。
「そうですか。バイタルは正常ですが、確定的なことは、精密検査してみないと、わかりません。あなたも、動揺しているでしょうが、落ち着いて下さい」
そう言って、医師と看護師たちは、ストレッチャーを、病院の中に、運び入れた。
奥野康子は、放射線科の、MRI室に、運びこまれた。
「撮影中」の、ランプが、点灯した。
宮川京子は、MRI室の、前に、ひざまずいた。
そして、手を組んで、神に祈った。
(神様。どうか、康子ちゃん、の、無事をお守り下さい)
しばしして、「撮影中」、のランプが消えた。
医師が、出てきた。
「先生。康子ちゃんは、どうですか?」
宮川京子は、医師に駆け寄った。
「大丈夫です。大きな怪我はありません。後遺症も残りません。しかし、危なかった。ヘルメットには、ひび、が、入っていました。もし、当たる場所が悪かったら、脊椎を損傷して、車椅子になっていたかも、しれませんな。ボクサーのパンチは、凶器と言いますが、あなたの剛速球も、一歩、間違えば、凶器となりますな」
ははは、と、医師は、笑った。
宮川京子は、ほっと、安心した。
そして、心の中で、神に祈った。
(神様。康子を救って下さってありがとうございます)
「今、康子は、意識があるんですか?」
宮川京子が聞いた。
意識があるのなら、すぐに、話しかけたかったからである。
「今。意識が、回復中です。呼びかけに対して、かろうじて、(はい)と、答えています。しかし、今は、あまり、話しかけない方がいい。あなたも、精神的に疲れているでしょう。もう、今日は、帰った方がいい。お帰りなさい」
医師が言った。
「はい。わかりました」
宮川京子は、素直に、返事した。
そして、医師の言う通り、病院を出た。

その翌日。
宮川京子は、日大の、市ヶ谷キャンパスに登校した。
その日の昼休み。
女子野球部員のほとんどが、宮川京子の所にやって来た。
「京子。昨日、救急車に乗って、病院にまで、行ったんだってね」
捕手の、嶋宏子が聞いた。
「ええ。行ったわ」
京子が答えた。
「相手の選手、の具合、どうだった?」
同じピッチャーの、菅野智子が聞いた。
「大きな怪我はなかったわ。後遺症も残らないって、先生が、言っていたわ」
京子が答えた。
「それは、よかったわね」
菅野智子が言った。
「京子。昨日のこと、むしかえしちゃうようで、悪いけれど、どうして、昨日、あんな、暴投をしたの。私は、アウトコースの低め、のカーブを要求したのに?」
捕手の、嶋宏子が聞いた。
その時、宮川京子は、「わっ」、と、泣き出した。
「どうしたの。京子。何か、事情がありそうね。よかったら、話してくれない?」
菅野智子が言った。
「じ、実は。試合が、始まる前に、井上ピッチングコーチが、私に、奥野康子を、つぶせ、って、言ったの。やらなかったら、私を、もう試合に出さないって、言って・・・」
宮川京子は、泣きながら話し出した。
「そうだったの。やはり、あの暴投には、何かあるな、と、私も思っていたの。私も、以前、井上ピッチングコーチに、デッドボールを投げろ、って、言われたことがあるわ」
菅野智子が言った。
「それで、智子は、どうしたの?」
宮川京子が聞いた。
「井上ピッチングコーチの言うことは、絶対だわ。というより、本当は、内田監督の指示だわ。それを、井上ピッチングコーチが、伝えているだけだわ。内田監督の指示には、逆らえないでしょ。逆らったら、干されるから。だから、仕方なく、デッドボールになるよう、投げたわ。ただ、ちょっと、スピードを落としたわ。だから、バッターは、よけられたわ」
菅野智子が言った。
それを聞いて、宮川京子は、「わーん」、と泣き出した。
「智子。あなたは、スピードを落としたのね」
宮川京子は、確かめるように聞いた。
「ええ」
菅野智子は、答えた。
「私は、全力投球したわ。あなたは、良心があるわ。私は、スポーツ選手失格だわ。私は、自分の野球生命と、相手の、選手生命の、ギリギリの選択で、私の、野球生命の方をえらんでしまったんだもの」
そう言って、宮川京子は、「わーん」、と泣き出した。
「京子。そう自分を責める必要はないわ。人間、そんな、極限状態の選択を迫られたら、頭が混乱して、冷静な判断なんか、出来なくなってしまうわ」
菅野智子が、なぐさめた。
「そうよ。内田監督に逆らったら、何をされるか、わからないわ。私なんか・・・私なんか・・・」
と言って、捕手の嶋宏子は、「わーん」、と、泣き出した。
「どうしたの。宏子?」
4番の安打製造器の異名をもつ内川聖子が聞いた。
「実を言うと、私、試合で、ミスをしたことが、あったでしょ。法政大学との試合の時」
嶋基宏が話し出した。
「ええ。あったわね」
内川聖子が言った。
「あの時、試合の後、内田監督に呼び出されたの。私は、こわかったわ。それで、内田監督の部屋に入った時・・・」
と言って、嶋宏子は、「わーん」、と、泣き出した。
「どうしたの。宏子?私たちは、チームメートよ。一人で悩まないで、何でも、吐き出して、しまいなさいよ。そうすれば、気分が、スッキリするかもしれないわよ」
内川聖子が言った。
「じゃあ、言うわ。私。内田監督の部屋に入ったの。そうしたら、内田監督が、私を往復ビンタしたの。そして、服を、全部、脱げって、言ったの。私は、服を全部、脱いだわ。内田監督は、ズボンのチャックを開けて、マラを突き出したの。そして、しゃぶれ、って言ったの。私は、無我夢中で、内田監督のフェラチオをしたわ。その後、内田監督は、私を床に、倒して、ズボンと、ブリーフを脱いで、私の、胸を荒々しく揉みながら、怒張したマラを、私に、突き刺したの」
嶋宏子は、泣きながら言った。
「宏子。知らなかったわ。そんなことがあったの。さぞ、つらかったでしょう」
内川聖子が、宏子の肩に手を掛けた。
「実を言うと私も・・・」
「実を言うと私も・・・」
みなが、勇気を持って発言しだした。
大方の部員が、内田監督に、犯されているようだった。
「みんな。もう、内田監督に呼び出されても、行かないように、しましょう。私たちが、団結して、試合を、ボイコットしてしまえば、内田監督も、パワハラが出来なくなるわ。チームあっての監督だもの」
「そうね」
「そうね」
みなは、同意し合った。

翌日。
宮川京子は、奥野康子の入院している、日大病院に、見舞い、と、謝罪に、行った。
トントン。
宮川京子は、病室の戸をたたいた。
「はい。どうぞ」
中から、声が聞こえた。
京子は、病室の戸を開けた。
「やあ。京子。見舞いに、来てくれたの。有難う」
「ご、ごめんなさい。康子ちゃん」
「いいのよ。野球に、デッドボールは、つきものだわ。コントロールが乱れちゃったんでしょ」
「ちがうの」
「どう違うの?」
「あれは、わざと、康子ちゃん、を、ねらって投げたの」
「ええー。本当?でも、一体、どうして?」
「ごめんなさい」
そう言って、宮川京子は、「わっ」、と泣き出した。
そして、デッドボールは、内田監督と井上ピッチングコーチのコーチの指示で、行ったことを話した。
「そうだったの。日大の内田監督は、絶対権力者だということは、聞いていたけれど、そこまで、するなんて、ちょっと、スポーツウーマンシップを逸脱しているわね」
奥野康子が言った。
「康子ちゃん。ごめんなさい。償いをしたいの」
宮川京子が言った。
「いいわよ。内田監督の指示には、逆らえないでしょ。京子のせいじゃないわ」
奥野康子が言った。
「でも、私は、スポーツ選手失格だわ。私は、自分の野球生命と、相手の、選手生命の、ギリギリの選択で、私の、野球生命の方をえらんでしまったんだもの」
そう言って、宮川京子は、「わーん」、と泣き出した。
「京子。そう自分を責める必要はないわ。人間、そんな、極限状態の選択を迫られたら、頭が混乱して、冷静な判断なんか、出来なくなってしまうわ」
奥野康子がなぐさめた。
「康子ちゃん。償いをしたいの」
宮川京子が、また言った。
「私がいいっ、て、言ってるじゃないの」
「でも、それでは、私の気持ちがすまないの」
「それじゃあ、裸になって、土下座して、謝りなさい」
あまりの京子の誠意に、ほだされて、康子は、クスッと、笑って、冗談めいた口調で言った。
しかし、京子は、康子の申し出た冗談を真に受けてしまった。
「はい。わかりました」
と、言って、宮川京子は、服を脱ぎだした。
京子は、ブウラスのボタンを外して、ブラウスを脱いだ。
「あっ。京子ちゃん。今のは冗談よ」
と、康子は、あわてて制止しようとした。
しかし、京子は、聞かなかった。
「いえ。せっかく、康子ちゃんが、満足する謝罪を言ってくれたんですもの」
そう言って、京子は、ブラウスを脱ぎ、スカートも脱いだ。
そして、ブラジャーと、パンティーも脱いで、丸裸になった。
「罰っせられない罪ほど、つらいものはないわ」
京子が言った。
「京子は、真面目なのね。わかったわ」
康子が言った。
京子は、床に座って、康子に向かって、土下座して、
「康子。ごめんなさい」
と、床に頭をこすりつけて謝った。
「わかったわ。京子。許す。許す」
康子が言った。
「で、でも。これだけでは、私の気がすまないわ。私をぶって。蹴って。思い切り」
京子が言った。
「そんなこと出来ないわ。京子は、昔から、誠実すぎるわ。じゃあ、罰として、私の足をなめて」
康子が、冗談まじりに言って、ベッドから、ニュッと、右の素足を突き出した。
「はい」
京子は、真面目に返事して、康子の足指を、親指から小指まで、口に含んで、一本、一本、丁寧になめ出した。
そして足指の付け根まで、口に含んで、ゆっくり、往復させた。
「ああっ。気持ちいいっ」
康子は、冗談から言ったのだが、京子の愛撫に、興奮してしまったのである。
康子は、今度は、左の足を、京子の顔の前に、突きつけた。
「さあ。左足もなめて」
康子が言った。
京子は、康子の左の足指を口に含んで、一本、一本、丁寧になめた。
足指の付け根まで、親指から小指まで、ゆっくり、往復させた。
「ああっ。気持ちいいっ」
康子は、虚ろな表情になり、ハアハアと、喘ぎ出した。
「京子。私は、もう少しで、頚椎損傷で、車椅子になるところだったのよ」
康子の態度が、強気に変わった。
「ご、ごめんなさい」
「じゃあ、罰として、私の言うことを聞く?」
「はい。何でも、聞きます」
「じゃあ、私と、レズセックスして。私。前から、あなたと、レズしてみたかったの」
奥野康子が言った。
「わ、わかったわ」
宮川京子が言った。
康子は、ベッドから、起き上がった。
そして、パジャマを脱いで、パンティーも、脱いで、全裸になった。
二人は、ともに、裸になって向き合った。
「さあ。京子。始めましょう」
康子と京子の二人は、体が触れ合わんばかりに向き合っている。
二人の目と目が合うと、弾かれるように、二人は目をそらしたが、二人とも顔は激しく紅潮していた。
二人は、お互い、相手に向かって歩み寄った。
柔らかい女の肉と肉が触れ合った。
二人は、お互いに両手を相手の背中に、そっと回した。
二つの柔らかい肉と肉がピッタリとくっついた。
二人は、お互いを、黙って、じっと抱きしめ合った。
しばしの時間が経った。
「さ、さあ。京子。キスしましょう」
「で、でも。康子・・・」
康子は、ためらっている京子の唇に自分の唇を近づけていった。
京子は、咄嗟に目をつぶった。
康子は京子の唇に自分の唇を触れ合わせた。
その瞬間、京子の体がビクッ、と震えた。
康子は京子が逃げないように両手で京子の頭をしっかり掴んだ。
そして康子も目をつぶった。
二人の康子京子は唇を触れ合わせた。
しばしの時間、キスしていた二人は、唇を離した。
京子は、サッと頭を後ろに引いた。
二人の顔と顔が向き合った。
二人は目と目が合うと、恥じらいから、すぐに視線を相手からサッとそらした。
しかし、二人の顔は激しく紅潮していた。
「ああっ。康子。わ、私。頭がおかしくなってしまいそうだわ」
京子が言った。
「京子。わがまま言わないで。私を男だと思って」
康子が言った。
「で、でも・・・」
「京子。好きなの。もう、とことん、おかしくなりましょう」
「・・・わ、わかったわ」
そう言って二人は、また唇を重ね合わせた。
しばしの時間、二人は唇を触れ合わせたままでじっとしていた。
「京子。ディープキスしましょう。舌を絡め合って、唾液を吸いあいましょう」
康子が言った。
「は、はい」
京子が言った。
「京子。中途半端な気持ちで、いないで、いっそのこと、開き直って、行き着くとこまで行きましょう」
康子はそう言って、再び、京子の唇に自分の唇を触れ合わせた。
康子の喉仏がヒクヒク動き始めた。
康子は京子の唾液を貪るように吸った。
しばしして、京子が、康子から顔を離して、プハーと大きく呼吸した。
「ああっ。康子。わ、私。頭がおかしくなってしまいそうだわ」
京子はハアハア喘ぎながら言った。
「ふふふ。京子。もう、とことん、おかしくなりましょう」
康子が言った。
「京子。本当言うと、私、京子に嫉妬していたの。だって、京子の方が、私より、ずっと、きれいでしょ。男子生徒から、京子は、毎日、ラブレター、100通以上、もらっていたでしょ。高等部の野球部でも、関西学院大学高等部の野球部が強かったのは、京子の、おかげだわ。だから、うわべは親しくしていたけど、内心では、京子に嫉妬していたの」
康子が言った。
「京子。今度は、乳首の擦りっこをしましょう」
康子が言った。
康子は、そっと豊満な胸を近づけた。
康子と京子の二人の乳首が触れ合った。
「ああっ」
京子が苦しげに眉根を寄せて叫んだ。
「どうしたの」
康子が聞いた。
「か、感じちゃうの」
京子が顔を紅潮させて、小さな声で言った。
「我慢して」
そう言って康子は京子の肩をつかみながら、二人の乳首を擦り合わせた。
二人の乳首は、まるで、じゃれあう動物のように、弾き合ったり、押し合ったりした。
だんだん二人の乳首が大きく尖り出した。
二人の呼吸はハアハアと、だんだん荒くなってきた。
「や、康子。わ、私、何だか変な気持ちになってきちゃった。な、何だか凄く気持ちが良くなってきちゃったわ」
京子が虚ろな目つきで、半開きの口で、ハアハアと息を荒くしながら言った。
「わ、私もよ。京子」
康子が言った。
二人は、体をくるらせながら、しばらく、もどかしげに乳首を擦り合わせていた。
「京子。今度は乳房を擦り合わせましょう」
康子が言った。
「ええ」
京子は逆らわずに肯いた。
二人は乳房を擦り合わせた。
二人は乳房を押しつけたり、擦り合ったりさせた。
まるで、お互いの乳房が相手の乳房を揉み合っているようだった。
時々、乳首が触れ合うと、二人は、
「ああっ」
と苦しげに喘いだ。
京子と康子の二人の顔は目と鼻の先ほどにある。
二人の目と目が合った。
暗黙の了解を二人は感じとった。
二人は、そっと顔を近づけていった。
二人の乳房はピッタリと密着して、平べったく押し潰された。
二人は、お互いに唇を近づけていった。
二人の唇が触れ合うと、二人は無我夢中でお互いの口を貪り合った。
康子は、両手を京子の背中に回して、ガッチリと京子を抱きしめている。
しばしして、二人は唇を離して、ハアハアと大きく深呼吸した。
二人は恥じらいがちにお互いの顔を見つめ合った。
「ああっ。康子。感じるー」
京子が言った。
「京子。私もよ」
康子が言った。
二人は再び、尖って大きくなった乳首を擦り合わせ出した。
二人は、これでもか、これでもかと、さかんに乳房を押しつけ合った。
そして、唇をピッタリと合わせてお互いの口を貪り合った。
「ああー。感じちゃう」
京子が大声で叫んだ。
「私もよ。京子」
康子も大声で叫びました。
超えてはならない禁断の一線を越えた二人はもう一心同体だった。
「京子。胸だけじゃなく、アソコもお互い愛撫しあいましょう。女同士なら、どこが感じやすいか、男よりよく知っているわ」
康子が言った。
「わ、わかったわ。康子」
京子が言った。
「京子。もっと気持ちよくしてあげてるわ」
康子が言った。
康子は、京子のアソコを、触り出した。
「ああっ」
京子は、反射的に、腰を引いた。
「京子。ダメ。腰を引いちゃ」
康子は、叱るように言って京子の腰をグイと自分の方に引き寄せた。
しかし京子は足をピッタリと閉じ合せている。
「京子。もっと足を開いて」
康子が言った。
「はい。康子」
言われて京子は、素直に閉じていた足を開いた。
康子は京子の女の穴に中指を入れた。
京子のアソコは、もう、じっとりと濡れていたので、指はスルっと入った。
康子は、ゆっくりと、京子の女の穴に入れた中指を動かし出した。
「ああー」
京子が眉根を寄せて大きく喘いだ。
京子のアソコがクチャクチャ音を立て出した。
白い粘っこい液体が出始めた。
「ああー」
京子は体をプルプル震わせて叫んだ。
「京子。私のアソコも触って」
康子が言った。
「わ、わかったわ」
京子がハアハアと喘ぎながら答えた。
京子はハアハアと苦しそうに喘ぎながら、自分も右手を下に降ろし、正面の康子のアソコに手を当てて、しばしアソコの肉を揉んだり撫でたりした。
そして中指を康子の女の穴に入れて、ゆっくり動かし出した。
「ああー」
康子もプルプル体を震わせて、喘ぎ声を出した。
康子のアソコもクチャクチャと音を立て出した。
康子のアソコからも白濁液が出てきた。
康子は、一心に京子のアソコに入れた指を動かした。
「京子。もっと激しくやって」
康子が言った。
「ええ。わかったわ」
京子は、指の蠕動を速めていった。
「ああー」
二人は、指責めの辛さのやりきれなさを相手にぶつけるように、お互いの女の穴に入れた指の蠕動を、一層、速めていった。
京子と康子は、抱き合って、乳房を押しつけながら、お互いの口を激しく吸い合った。
「ああー。いくー」
ついに京子が叫んだ。
「ああー。いくー」
康子も叫んだ。二人は、
「ああー」
と、ことさら大きな声を出して全身をガクガクさせた。
まるで痙攣したかのようだった。
二人は同時にいった。
二人は、ペタンと床に座り込んで、しばしハアハアと荒い呼吸をした。
「京子。今度は69をしましょう」
康子が言った。
「ええ」
京子は真っ赤になって言った。
「私たち、もう他人じゃないわ」
康子が言った。
「わ、わかったわ。康子」
京子が相槌を打った。
「じゃ、じゃあ、私が下になるわ」
康子はそう言って、床の上に仰向けに寝た。
「さ、さあ。京子。四つん這いになって私の上を跨いで」
康子が言った。
「わ、わかったわ」
そう言って京子は康子と反対向きになって、四つん這いになって康子の上に跨った。
京子の顔のすぐ下には、康子のアソコが触れんばかりにある。
一方、康子の顔の真上には、京子の、アソコが触れんばかりにある。
「ああー」
二人は、耐えられない恥ずかしさに思わず、声をあげた。
四つん這いの京子は、尻の穴までポッカリ康子に晒している。
「ふふふ。京子。尻の穴が丸見えよ」
康子が揶揄すると、京子は顔を真っ赤にして、
「ああー」
と叫んだ。
京子が、必死で尻の穴を窄めようとしたので尻の穴がヒクヒクと動いた。
「さあ。69を、しましょう」
康子が言った。
「は、はい」
京子が相槌を打った。
「京子。もう、こうなったら、中途半端じゃなく、何もかも忘れて、徹底的にやりあいましょう。中途半端な気持ちでいると、かえって辛いわ。いっそのこと、開き直って、行き着くとこまで行きましょう」
康子が言った。
「そ、そうね。私達、もう禁断の一線を越えてしまったんだから」
京子が言った。
京子は膝を立てて足を開いている。
「京子。すごく形のいい太腿ね。私、いつも、うらやましく思ってたの」
そう言って康子は、京子の太腿のあちこちに接吻した。
「ああっ」
康子にアソコをキスされて、恥ずかしいやら、気持ちいいやらで、京子は喘ぎ声を出した。
京子も手を伸ばして康子の尻を優しく撫でた。
康子の方が下なので、寝たままで両手を自由に使える。
康子は車体の下から上を見上げながら車の底を修理する自動車修理工のような体勢で、京子の股間を色々と、弄った。
アソコの肉をつまんだり、大きな柔らかい京子の尻に指先を軽やかに這わせたり、ただでさえ開いている尻の割れ目をことさらグイと開いたり、尻の割れ目をすーと指でなぞったりした。
尻の割れ目をなぞられた時、京子は、
「ああー」
と叫んで、反射的に尻の穴をキュッと窄めようとした。
「どうしたの。京子」
康子が聞いた。
「そ、そこは反則だわ」
「野球部の監督が、京子の、ここを責めろって、言ったの。関学も監督の命令は、絶対なの」
康子が言った。
「う、ウソだわ。関学の監督は、フェアープレーの精神をモットーにしているはずだわ」
京子が言った。
「京子。セックスに、ルールなんて、無いわ」
康子が言った。
康子は、京子の尻の割れ目をすーと指でなぞった。
「康子。そ、そうやられると、感じちゃうの」
京子が、ハアハアと息を荒くしながら言った。
「京子の一番の性感帯は、肛門なのね」
康子が言った。
「違うわよ。そんな所、触られたの生まれて初めてだもの。誰だって感じちゃうわ」
京子が言った。
康子は、ふふふ、と笑った。
康子は、まるで相手の弱点を知って得意になっているようだった。
康子は、京子の大きな尻を軽やかな手つきで、指を這わせた。
そして、時々、すーと尻の割れ目を指でなぞった。
「ひいー」
京子は尻の割れ目をなぞられる度に悲鳴を上げた。
康子は、ふふふ、と悪戯っぽく笑った。
「康子。わ、私も遠慮しないわよ」
京子はそう言って、康子の女の割れ目に舌を入れて舐め出した。
「ああっ。京子。か、感じちゃう」
康子は、激しく首を振って言った。
だが、京子は康子の言うことなど聞かず、唇で小陰唇やクリトリスをペロペロ舐めた。
康子は、
「ああー」
と羞恥と快感の声を上げた。
康子は京子の小陰唇を、手で開いて、右手の中指を入れた。
「ああっ」
と京子が声を出した。
康子はゆっくり指を動かし出した。
「ああっ」
京子が苦しげな声を出した。
京子のアソコはすでに濡れていて、指はヌルリと容易に入った。
康子は、穴に入れた指をゆっくり動かしながら、左手で、京子の尻の割れ目をすーとなぞった。
「ああー」
敏感な所を二箇所、康子に、同時に責められて、京子は、眉を寄せて苦しげな喘ぎ声を出した。
京子も負けてなるものかと、中指を康子の女の穴に入れ、ゆっくりと動かし出した。
「ああー」
康子も眉を寄せ、苦しげな喘ぎ声を出した。
女同士なので、お互い、どこをどう刺激すれば感じるかは知っている。
だんだんクチャクチャという音がし出して、ネバネバした白っぽい液体が出始めた。
二人は愛撫をいっそう強めていった。
「ああー。い、いくー」
京子が叫んだ。
「ああー。い、いくー」
康子が叫びんだ。
「ああー」
と、二人は、ことさら大きな声を出して全身をガクガクさせた。
まるで痙攣したかのようだった。
二人は同時にいった。
康子は、尻の穴と、アソコを責めていた手を、離した。
そしてハアハアと荒い呼吸をした。
京子は康子の体の上に倒れ伏し、ハアハアと荒い呼吸をしながら、虚脱したような状態になった。
二人はしばし、ハアハアと荒い呼吸をしていた。
二人は床の上で、グッタリしている。
しばし、二人は、虚脱したような状態のままでいた。
しかし、だんだん二人は呼吸が落ち着いてきた。
「京子。看護婦さんが来るわ。服を着て」
「はい」
京子は、下着を履き、スカートとブラウスを着た。
「京子。このままでは、あなたが、世間から非難されるわ。本当のことを、世間に言った方がいいわ」
「で、でも・・・。そんなことしたら、私、野球部をほされてしまうかもしれないし・・・」
「内田監督がこわいのね」
「ええ」
「でも、日大女子野球部の、みんな、は、内田監督の独裁を悪いと思っているんでしょ」
「ええ」
「それじゃあ、記者会見して、本当のことを、言った方がいいわよ。その方が、日大女子野球部のためだわ」
「わかったわ。私。勇気を出して、記者会見するわ。日大女子野球部の、チームメイトのほとんどは、内田監督に、呼び出されて、犯されているんですもの」
「ええー。それ。ホント?」
康子は、目を白黒させて言った。
「ええ。本当よ」
「ひどい監督ね。なら、絶対、記者会見した方がいいわよ」
「じゃあ、私、勇気を出して、記者会見して、全てのことを正直に話すわ」
その時。
トントン。
「奥野さん。夕食ですよ」
部屋の外で看護婦の声がした。
「じゃあ、康子。今日は、これで、帰るわ」
と、言って、京子は手を振った。
夕食を持って、入ってきた、看護婦と、入れ替わるように、宮川京子は、部屋を出た。

翌日。
宮川京子は、今回の試合の、デッドボールについて、明日、記者会見する、と、マスコミに伝えた。
そして、その翌日、宮川京子は、記者会見を開いた。
そして、デッドボールは、内田監督と井上ピッチングコーチのコーチの指示で、行ったこと、の経緯を詳しく話した。
内田監督の、独裁制、パワハラ指導は、世間でも、知られていたが、まさか、そこまで、ひどい、ことになっている、とは世間は知らず、世間は、憤った。
二日後。
宮川選手が、突然に、記者会見をしてしまったので、内田監督と井上ピッチングコーチは、あわてて、記者会見を、開いた。
しかし、内田監督と井上ピッチングコーチは、あくまで、「全力でやれ」、という指示を、選手が、取り違えた、という、見え見えの、誤魔化し弁解に徹した。
関学女子野球部への、コメントも、同じく、コーチと選手の、見解の相違という、趣旨の不誠実なコメントしか、出さなかった。
故意のデッドボールを受けた、奥野康子の父親の、奥野正一郎は、大阪市議会議員であり、この不正に、怒り、日大のスポーツ部の、独裁権力体質の是正と、日本のスポーツ界の、行き過ぎた、パワハラを、無くすために、徹底的な真相解明のために、内田監督と井上ピッチングコーチを、刑事告訴しようとした。
しかし、大阪府警は、加害者を、故意のデッドボールを投げた、宮川京子にしないと、告訴を受理しないと、言った。
なので、父親の奥野正一郎は、悩んだ末、仕方なく、宮川京子選手も含めて、告訴した。
しかし、宮川京子選手は、内田監督と井上ピッチングコーチに、命令されて、故意のデッドボールを投げたのであるから、宮川選手が、記者会見を行ったことで、彼女は、十分な、社会的な制裁を受けている、として、奥野正一郎は、警視庁に、寛大な処分を求める6348通の嘆願書を提出した。
非常に異例のことであった。
関東学生野球連盟は、この問題の真相解明を行い、日大の女子野球部員、そのOG、その他、多くの関係者に、実情を聞いた。
そして、記者会見を開き、内田監督と井上ピッチングコーチを、一番、大きな罰である、除名処分(永久追放)にした。
一方、直接の加害者である、宮川京子選手とは、30万円の支払い、で、和解した。
宮川京子選手は、勇気を持って、正直に、日大女子野球部の真実を述べたことで、世間から、勇気ある、誠実な女子学生選手として、注目を浴びた。
そのため、プロ野球から、巨人―阪神、戦で、始球式をやって欲しいと頼まれた。
宮川京子は、これを快諾した。

試合当日。
宮川京子は、ピッチャーマウンドに立った。
バッターボックスには、巨人の一番の、坂本勇人が立った。
坂本勇人は、お祭り気分で、嬉しそうに笑っている。
それを、宮川京子は、キッ、と、にらみつけた。
「坂本勇人さん。私。本気で投げるわよ。これは、お祭りごとじゃないわ。真剣勝負よ。打てるものなら、打ってごらんなさい」
試合開始のサイレンが鳴った。
宮川京子は、160km/hのストレートを、低めに投げた。
坂本勇人は、空振りした。
坂本勇人の顔が、マジになった。
二球目、宮川京子は、150km/hの、スライダーを投げた。
坂本勇人は、これも空振りした。
三球目、宮川京子は、120km/hの、スローカーブを投げた。
坂本勇人は、これも空振りした。
三球三振である。
女子野球選手に、三球三振したとあっては、巨人の威厳に関わる。
なので、二番の、長野久義が、真顔で打席に立った。
しかし、二番の長野久義も、三球三振にされた。
さらに、三番の陽岱鋼も、バッターボックスに立った。
これも、宮川京子は、三球三振に打ちとった。
三者凡退である。
巨人の面目は、丸潰れ、である。
なので、巨人の強い申し出で、今回の試合は、公式試合ではなく、急遽、変更して、宮川京子から、一安打、打つまでの、変則試合となった。
一回の裏、阪神の攻撃となった。
一番の、糸井嘉男が、動揺している、巨人の先発ピッチャーである、菅野智之の投げた球をホームランにした。
つづく、二番の鳥谷敬も、ホームランを打った。
一回の裏、阪神は、10得点した。
そうして、やっと、スリーアウトをとった。
2回の表、また、宮川京子が、マウンドに立った。
しかし、巨人打線は、160km/hの、ストレートと、変化球を、おりまぜた、宮川京子を打つことは、出来なかった。
阪神の攻撃は、毎回、大量得点した。
結局、45対0で、宮川京子は、パーフェクトゲームを達成した。
当然、宮川京子に、世間の注目が集まった。
日本野球機構は、野球規則を変更して、女子選手の入団も、認める、と、発表した。
その年の、ドラフト会議で、宮川京子は、巨人から、一位指名された。
一方、奥野康子は、阪神タイガースに、一位指名された。
こうして、宮川京子は、巨人に入団し、奥野康子は、阪神に入団した。

年が明け、平成31年になった。
オープン戦が始まった。
巨人―阪神、戦の第一戦。
巨人の先発は、宮川京子だった。
阪神の一番は、奥野康子だった。
奥野康子が、バッターボックスに立った。
「プレイボール」
審判が、試合開始を告げた。
宮川京子は、ニコッと、奥野康子に、微笑んだ。
「康子。フェアープレーで、真剣勝負でいくわよー」
宮川京子が、言った。
「さあ。来なさい。京子」
奥野康子が、グッ、と、バットを握りしめて、宮川京子を見つめた。
雲一つ無い晴天の中、宮川京子は、大きく振りかぶって、全力で、第一球を投げた。


平成30年6月6日(水)擱筆

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