経済小説(浅野浩二の小説)
日本政府は、困っていた。
長引くデフレ不況で。
人々の、平均の年収は、250万万円である。
これでは、家庭(家計)は、可処分所得は、生活に最低限、必要な物しか、買わなくなる。
人々が、物やサービス、を買わないから、企業は、設備投資を減らし、さらに、希望退職者を求め、正規社員を減らし、非正規雇用を増やす。ばかりである。そして、当然、企業は、収益が上がらないから、政府の税収も少なくなる。
ある時、一人の男が、財務省にやって来た。
受け付けの者が、対応して、財務省の主計局長に、それを、伝えた。
受け付けの男は、財務省の主計局長に、こう言った。
「局長。今、一人の、変なヤツが、来ています。僕が日本を救ってあげましょう、などと、寝ぼけたことを、言っています。どうしますか?」
局長は、巻きタバコを燻らせながら、
「頭の、おかしなヤツだろう。精神病院に、行け、とでも、言っておけ」
と、言った。
「ところが、この男は、医者で、自分は、精神科医だと、言っています。私が、それなら、医師免許証を見せてみろ、と言った所、カバンの中から、医師免許証の原本を取り出しました。宙にかざして見ると、ちゃんと、スカシも、入っています。運転免許証の顔写真と、照合しても、間違いなく、また、厚生労働省に、問い合わせても、移籍番号も、保険医番号も、一致します。ですから、医者であることは、間違いありません」
と、受け付けの男が言った。
主計局長は、タバコを灰皿に置いた。
「そうか。医者か。それじゃ、バカでは、なさそうだな。それで、経済にも詳しくて、経済学者で、どこかの大学の経済学部の教授でも、やっているのか?」
主計局長が聞いた。
「その質問も、しました。しかし、男は、経済学者ではないけれど、経済の、基本的なことは、知っている、と言っています。どうしますか?」
受け付けの男が聞いた。
主計局長は、しばし、迷っていたが、
「まあ、退屈しのぎに、会ってやろう。その思い上がった、バカの意見とやらを、聞いてみよう。最近の週刊漫画も、面白くないしな」
と言って、主計局長は、読んでいた、週刊少年マガジンを、脇に置いた。
たまたま、局長室には、財務大臣の、麻生太郎も、来ていた。
こうして、男は、局長室に、通された。
○
「はじめまして。局長さん。そして、麻生太郎さん。私は、浅野浩二という者です」
と、男は、笑顔で、一礼した。
「まあ。かけたまえ」
と、主計局長が言ったので、男は、ソファーに座った。
前のソファーには、財務省の主計局長と、財務大臣の、麻生太郎が座った。
「浅野浩二君。君に任せれば、日本の経済が回復する、というのだね。君の考えでは、一体、どうやったら、そんなことが、出来るのかね?ぜひ、聞かせて欲しいものだね」
と、麻生太郎が言った。
「麻生さん。あなたも、麻生セメント会社の社長でも、ありますから、経済のことは、実感していて、わかっているでしょう」
と、浅野浩二は言った。
「まあ、そうだかね」
と、麻生太郎は、得意の口を曲げながらの言い方で、言った。
「今、日本は、デフレ不況です。経済は、政府、企業、家計、の、三つ、が相互に関係し合っています」
と、浅野浩二は言った。
「まあ、そうだね」
と、麻生太郎は、言った。
普通の大臣だったら、「そんなの、高校生の政治・経済の知識じゃないか」と、怒鳴りつけるところだが、麻生太郎は、結構、ユーモアもあるので、言わなかった。
それで、浅野浩二は、話し始めた。
「経済を回復させるには、政府、企業、家計の、どこかが、景気回復の、引き金を引かなければなりません」
と、浅野浩二は言った。
「まあ、そうだね」
と、麻生太郎は、唇を歪めながら言った。
「企業と、家計から、は、なかなか、経済は、動かせません。企業から、経済を動かすには、山中伸弥教授のiPS細胞の発見のような、優秀な研究者が、出て、その特許を取るか、あるいは、天才的な人間が、世界のトップ企業に負けないような、ベンチャー企業を作り出せるかであって、それは、極めて、ほんの例外的な少数の天才にしか出来ません。また、トヨタ、日産、ホンダ、などの、自動車会社も、他国に負けない、性能の良い車を作ろうと、確かに、頑張っています。パソコンも、スマートフォンも、そうです。しかし、ちょっと、性能の良い車を開発できても、日本の経済を、根本から、立て直すほどの、効果はありません。そして家計、つまり国民は、政府の経済政策に期待しているだけの、受け身の立ち場の人間です。またプロ野球の優秀な選手とか、大企業の社長とか、ほんの一部の大金もちは、年収3億を超す人も、います。しかし、そういう大金もちは、人口の1%もいません。国民の99%は、生活ギリギリの、年収200万円、程度で、生活保護と、たいして変わりない生活をしています。だから、国民は、生きていくのに、最低限、必要な、衣・食・住、以外の、物やサービスは、買い控えます。また、年収3億を超す、プロ野球選手でも、毎日、超高級レストランで、10万円の、フランス料理など、食べていません。ですから、大金もち、といっても、物やサービスを、たくさん、買っているわけではないのです。金を持っていても、使い道がないのです。だから家計が、日本の、経済を立て直す、ことも、あり得ません。だから、デフレ不況である、今の日本の経済を、立て直すのは、政府の経済政策しか、方法は無い。そう、あなた方は考えているでしょう?」
と、浅野浩二は言った。
「まあ、そうだね」
と、麻生太郎は、唇を歪めながら言った。
「麻生さん。特に、あなたは、セメント会社の社長でも、ありますから、国債を発行して、公共事業を、起こすしか、硬直した日本経済は動かせない、と思っているでしょう?」
と、浅野浩二は言った。
「・・・・」
麻生太郎は、答えず、苦虫を噛み潰したような、不機嫌な顔で、浅野浩二見た。
麻生太郎の本音は、その通りだったからである。
「もう。前置きは、いいから、君の、考えている経済政策とやらを話してくれないかね?」
と、主計局長が言った。
少し、イライラしていた。
「では。僕の考えを、話しましょう。僕の経済、立て直しの政策とは、家計から、経済を立て直す、という、今までにない方法です」
と、浅野浩二は言った。
「君は、たった今、家計が、日本の、経済を立て直す、ことは、あり得ない、と断言したじゃないか。君の言っていることは、滅茶苦茶じゃないか」
主計局長は、頭から、湯気を出しながら、怒って言った。
「もちろん、言いました。しかしですよ。家計、つまり、国民が、物やサービスを買うようになれば、経済は、回復するじゃないですか」
浅野浩二は言った。
「そりゃ確かにそうだ。しかし、君は、国民の収入は、最低の生活費だけで、余計な、物やサービスなどに、使うゆとりの金は無い、とも、言ったじゃないか」
主計局長は、頭から、湯気を出しながら、怒って言った。
浅野浩二は、ニコリと笑った。
「確かに、そう言いました。しかし、ともかく、国民が、物やサービスを買うようになれば、経済は、回復するじゃないですか」
と、浅野浩二は平然とした顔で言った。
「では、どうやったら、国民が、物やサービスを買うようになるのかね?」
財務大臣の麻生太郎が聞いた。
「それでは。僕の、クリニックに、国民を来させて下さい。全ての国民で、ある必要はありません。年収は250万万円、以下で、ギリギリの生活をしている、人だけでいいのです。診療費は、いりません。タダで構いません。それを、義務化するだけでいいのです」
と、浅野浩二は言った。
「それで、どうして、国民が、物やサービスを買うようになるのかね?」
主計局長が聞いた。
「それは、ちょっと、今は、秘密です。しかし、もし、景気が、回復しなかったら、僕は、死んで責任をとりましょう」
と、浅野浩二は言った。
財務省の主計局長と、麻生太郎は、困惑した顔を見合わせた。
目の前の男が、何を考えているのか、さっぱり、わからなかったからである。
キチガイにしては、言っていることは、まとも、である。
二人は、判断に迷っていた。
二人が、黙ったまま、何も言わないので、浅野浩二が、口を開いた。
「僕は一介の医者にしか過ぎません。ですが・・・。小医は病を治す。中医は人を治す。大医は国を治す。というではありませんか」
と、言って、ははは、と大笑した。
しばし、二人は、ボソボソと、耳打ちしあって、話し合った。
「わかった。君を信用しよう。君のクリニックに、国民を行かせるようにしよう。その代り、景気が、回復しなかったら、死んで責任をとる、という約束は、必ず守ってくれよ」
と、財務省、主計局長が強く念を押して、言った。
彼らが認めたのも、無理はない。
アベノミクスも、全く効果は無く、むしろ、日本経済は、悪化の一途を辿っているばかりである。
政府は、藁にもすがる思いであるのだから。
○
こうして、神奈川県にある、浅野浩二クリニックに、神奈川県民が、毎日、続々と、やってくるように、なった。一日、200人、以上、来た。
○
政府、財務省、は、「本当かな?こんなことをやって、本当に、景気が回復なんか、するのだろうか?」といった、疑問と疑いの目で、見ていた。
○
そして、一ヶ月が経ち、二ヶ月が、経った。
すると、信じられないことに、景気が回復しだしたのである。
理由は、全く、わからないが、神奈川県の人々が、物を買い出すようになったのである。
政府は、おどろいた。
「先生。一体、これは、どうしてですか?」
財務省、主計局長が、浅野浩二クリニックに、やって来て、院長の、浅野浩二に聞いた。
「まあ。理由なんて、いいじゃないですか。景気が、右肩上がりになってきたのなら」
と、浅野浩二は、笑って言った。
「神奈川県の、景気が良くなったので、次は、埼玉県の景気を良くしてあげましょう。埼玉県の、大宮市の、交通の便のいい所のビルの一室を用意して下さい。私のクリニックを、開設するために」
と、浅野浩二は、笑って言った。
「何卒、よろしく、お願い致します。大宮市の、交通の便のいい所の、一等地のビルの一室を確保いたします。もう、我が国は、先生に頼るしかありません。当然、テナント料は、お支払い、させて頂きます」
と、財務省、主計局長が言った。
「先生。お礼として、これを受けとって下さい。一億円です」
と、言って、札束を、取り出した。
浅野浩二は、手を振った。
「そんな物は、いりません。それより、霞が関の、官僚は、遊んでいても構いませんが。しかし、せめて、どうか、自分の省庁の権限の拡大のための、国民の血税の使い切り、のための遊行、と、天下り先のための、無意味な特殊法人、作り、は、やめさせて下さい。私の要望は、それだけです」
浅野浩二は、そう言った。
「わかりました」
と、財務省、主計局長が言った。
そして、一ヶ月が経ち、二ヶ月が、経った。
すると、信じられないことに、埼玉県の、景気が回復しだしたのである。
理由は、全く、わからないが、埼玉県の、人々が、物を買い出すようになったのである。
○
埼玉県の次は、千葉県に、浅野浩二クリニックを開いた。
当然、信じられないことに、千葉県の、人々が、物を買い出すようになったのである。
○
こうして、一年が経った。
不思議なことに、浅野浩二が、行く所、そこの県民が、物を買い出すようになるのである。
一年で、ほぼ、日本、全部を回ったので、日本人、全員が、物を買い出すようになった。
○
国民が、物を買い出すようになったので、大企業も、中小企業も、大喜びで、設備投資を増やし出した。そして、雇用を増やした。
○
企業の利益が上がるので、政府も税収が、増えて、大喜びした。
GDPは、どんどん、上がっていった。
大学生も、大学を卒業しても、フリーターや、ニートにならずに、ちゃんと、就職できるようになった。
○
財務省の主計局長が、浅野浩二の自宅に、やって来た。
「先生。先生の、おかげで、日本が、救われました。一体、どうして、こんな奇跡を起こせたのですか?」
と、財務省の主計局長が、聞いた。
浅野浩二は、笑いながら、話し出した。
「増えた政府の収入は、どうか、1000兆円にも、増えてしまった、政府の累積赤字である、国債の償還に、当てて下さい。約束してくれますか。国債は、未来の子供への、財産だ、などと、バカな、自称・経済学者まがいの三橋貴明氏は、言っていますが、あれは、とんでもない、考え違いです。確かに、貸し手、借り手、の定義から、すれば、その通りです。しかし、政府が、本気になって、国債の償還を、しようと、思うはずなど、あるはずが無いのです。ましてや、積りに積もってしまった累積赤字の国債は、毎年、僅かづつ、償還していますが、あれを、未来永劫、ダラダラと、続けるだけです。国債の完全償還が来る日など、あり得ません。三橋貴明氏は、政府にせよ、家計にせよ、人間の心、というものを、無視して、経済理論なるものを、作り上げているだけなのです。この世の全ての事は、言葉の定義と実体が全く違っているのです。国債は、決して、未来の子供の、財産などではなく、未来の子供が払わねばならない、借金でしか、ないのです。自国の国債を自国の国民が買っている、から、安全だ、などという理屈も、大間違いです。確かに、その理屈で、日本は、デフォルトしない、ことは、私も認めます。そして、なぜ、ギリシャがデフォルトしたか。も説明しましょう。それは、こういう例に喩えられます。子供が、母親に、「ねえ。お母さん。お金、貸して。必ず返すから」と、頼む場合を考えてみて下さい。母親は息子に、「健ちゃん。いつか、ちゃんと、返してね」と、言って、母親は、ちょっと困った顔をしながらも貸すでしょう。しかし、その貸し借り、では、親と子という、甘えが出来てしまいます。なので、子供は、借りた金を、返さないことも、ありますし、母親は、子供が、借りた金を、返さなくても、まあ、いいや、と、いう感覚が起こって、金を、返さなくても、いい、という、事も起こるのです。これが、日本の場合です。しかし、ある大人が、銀行や、サラ金、(つまり、赤の他人)に金を借りた場合を、考えてみて下さい。銀行や、サラ金(つまり、赤の他人)が、貸した金を、返さなくても、まあ、いいや、などと、言うことが、あり得るでしょうか?あり得るはずが、ありませんよね。そんなことをしたら、銀行が、一日で倒産してしまいます。だから、銀行は、貸した相手が、自殺することになろうとも、貸した金は、全額、返すよう、相手に、厳しく、要求し続けます。取りたてに暴力団を使っても。これが、ギリシャの場合です。この理屈、わかりますか?」
浅野浩二が、聞いた。
「ええ。その通りですね。わかります」
と、財務省の主計局長が言った。
「では。増えた政府の収入は、どうか、1000兆円にも、増えてしまった、日本の累積赤字である国債の償還に、当てて下さい。それと、もう一つ、安保法制も廃案にして下さい。その二つのことを約束してくれますか。それを、約束してくれるのなら、景気が回復した、奇跡の秘密も、教えます」
と、浅野浩二は、言った。
「し、します。増えた政府の収入は、国債の償還に、当てます。そして、安保法制も撤回します」
と、財務省の主計局長が言った。
「では、教えましょう」
と、言って、浅野浩二は、話し出した。
「実は、僕は、心療内科の、発祥である、九州大学医学部の教授だった、池見酉次郎先生に、催眠療法、つまり、催眠術を、教えてもらったのです。そして、長年の訓練の結果、催眠術を人に、かけられるように、なったのです。催眠術や、催眠療法というものは、科学的なものなのです。医学的にも、その原理は、説明できます」
と、言って、浅野浩二は、茶を啜った。
「では、景気が回復した、奇跡の秘密を、教えましょう。そのかわり、このことは、誰にも、言わないで下さいね。それも、約束して頂きたい。どうですか?」
浅野浩二は、財務省の主計局長の目を、覗き込んだ。
「や、約束します」
財務省の主計局長は、ゴクリと、唾を飲み込んで言った。
「では、教えましょう」
と、言って、浅野浩二は、話し出した。
「簡単なことです。私は、クリニックに来た、人々に、催眠術をかけたのです。あなたは、金持ちである・・・と。あなたは、今、持っている貯金、以外に、一千万円もっている・・・と。人々は、見事に、私の催眠術にかかりました。ただ、それだけです。あとは、もう、説明しなくても、わかるでしょう。人々が、お金を使わないで、買い控えるのは、収入が、生活ギリギリだからです。そして国に、1000兆円もの膨大な国債の負債があり、また、政府の、年金、政策が、いいかげんだから、将来不安が、人々に起こり、可処分所得のうち、雀の涙ほどの、余った金は、消費にまわさず、貯蓄にまわすからです。国民が、お金を使わないのは、貯蓄がないと、将来の老後の生活が不安だからです。そういう心理のため、国民は、出来るだけ、買い控えますし、収入のうち、雀の涙ほどの、余った金は、消費にまわさず、貯蓄にまわしてしまうのです。もし、お金を、たくさん、持っていると思っているのなら、そういう不安は、なくなりますから、人々は、物を買うでしょう。まさに、人々は、催眠術にかかった後、お金を出し惜しみしなくなり、物を買うようになったのです。人々が、物を買うようになれば、企業は、設備投資を増やします。そして、社員の採用を増やします。そうすると、政府が、企業から、とれる税収も増えます。それで政府の財政も良くなります。だから、景気が良くなったのです。そして、国庫、つまり、政府の金庫に、借金がなくなって、国の財政が、健全になれば、政府も年金を国民に、ちゃんと支払うことが出来るのです。そうなれば、国民も、老人になった時の年金の、不安が無くなりますから、安心して、可処分所得を、貯蓄ではなく、消費にまわせるようになるのです」
と、浅野浩二は言った。
浅野浩二は、茶を啜って、一息入れ、さらに、続けて言った。
「銀行の、取り付け騒ぎだって、そうじゃないですか。ある銀行が、危ない、という、デマが、流れれば、その銀行に預けている預金者は、全員、一斉に、銀行から、金を引き降ろします。皆が、金を引き降ろせば、銀行は倒産してしまいます。実際には、安全な銀行であっても、デマによって、簡単に、銀行を倒産させることが出来るじゃないですか。それは、人々が、自分だけは、安全でいたい、損をしたくない、という、心から、起こることです。逆に、ある銀行が、実際に、危ない状態でも、ウソで、安全だ、と言っておいて、それを人々に信じ込ませ、そして、その間に、早急に、密かに、経営状態が健全な、都市銀行と、M&Aするなりして、何らかの手を打っておけば、取り付け騒ぎは、起こらず、銀行を倒産させないことも、出来るのです。そして、それは、全てのことで、言えます。選挙だって、そうじゃないですか。国民の一人一人が、オレ一人が、投票しようと、投票しまいと、選挙結果には、関係ない、と、思って、棄権してしまうから、投票率が、52%なんてことになり、その結果、各政党の支持母体の組織票で、選挙結果が決まってしまうじゃないですか。政治にせよ、経済にせよ、全て、人間の心によって決まることじゃないですか」
浅野浩二は、淡々と、そう述べた。
財務大臣を、見ると、ポロポロ、目から涙を流していた。
「せ、先生。有難うごさいます。先生は、日本の救世主です」
と、号泣しながら言った。
○
政府は、浅野浩二との、約束を守り、秘密を守った。
世界の国々は、なぜ、日本の経済が回復したのか、必死になって、日本政府に聞いた。
しかし、日本政府は、そのことは、答えなかった。
そのため、日本の経済が、なぜ、奇跡的な、回復をしたのかは、世界中で、謎となった。
しかし、中国の諜報機関である、MSS(中国国家安全部)が、浅野浩二の、存在、そして、居場所をつきとめてしまった。
○
経済破綻、寸前の、中国の、首席、習近平が、極秘裏のうちに、密かに、日本に、やって来た。
習近平は、すぐに、浅野浩二の家にやって来た。
一人の通訳を連れて。
習近平と、通訳は、浅野浩二を見るなり、いきなり、彼の足元にひれ伏して、土下座した。
そして、通訳は、涙をボロボロ流しながら、訴えた。
「浅野浩二先生。どうか、破綻寸前の中国経済を救って下さい。先生しか、中国を救える人は、いません」
平成27年10月27日(火)擱筆