憲法改正(浅野浩二の小説)

ついに地球は、西暦2000年を、向かえた。
西暦2000年は、日本では、小泉純一郎政権から始まった、と言ってもいい。
(正確には、小泉政権が始まったのは、2001年4月26日、からであるが)
その前の、森喜朗総理は、「日本は神の国」、発言の失言で、自民党の支持率は18.4%まで、急落した。
野党は内閣不信任決議案を提出した。
自民党で、森喜朗に代わる総裁選が行われた。
小泉純一郎は、自民党を派閥の構造を嫌い、「自民党を変える。変わらなかったら、自民党を、ぶっ壊す」、と、派手なアピールをして、橋本龍太郎を破り、国民の人気と期待を博して、勝利し、第87代、総理大臣になった。
日本は、不良債権など、バブル崩壊の後遺症に、悩んでいた。
銀行や証券会社も、破綻する、という前代未聞のことが起こった。
地価は下落し、銀行は、企業に金を貸さなくなった。
日本の土地神話が崩れて、土地が、銀行の担保物件にならなくなってしまったからである。
小泉純一郎は、「官から民へ」、と、郵政事業にしろ、道路にせよ、民営化すれば、景気が回復する、という信念を持っていた。
しかし、小泉純一郎は、経済オンチで、経済政策は、金融担当大臣の竹中平蔵に、任せきりにした。
竹中平蔵は、公的資金を、銀行に投入して、これは、国民の不興を買った。
小泉政権には、賛否両論があったが、(正確には、批判の方が圧倒的に多かったが)、国会でも、官僚の書いた作文を読むではなく、自分の、言葉で話すので、ともかく政治が、面白くなった。
2002年(平成14年)9月には、北朝鮮を訪問し、平壌で、金正日と、首脳会談を行い、日朝平壌宣言に調印した。この時、金正日は、日本人の拉致を認めた。
2005年8月8日、参議院本会議で、郵政民営化関連法案が否決された。自民党にも、郵政民営化に反対する議員は、多く、小泉純一郎は、彼らを、自民党の抵抗勢力と呼んだ。そして、国民の信を問う、として、衆議院を解散し、総選挙を行った。
郵政選挙では、小泉純一郎は、選挙区に、郵政民営化を支持する者を刺客として、送り込んだ。
結果は、自民党 (その中でも、郵政民営化を支持する候補)、の圧勝だった。そんなことがあって、小泉政権の支持率は高いまま続いた。
2006年9月26日、小泉純一郎は、総裁の任期の満了をむかえ、まだ国民の小泉内閣の支持率は、高かったが、いさぎよく総理大臣を退任した。
その後、安倍晋三が、自民党総裁となり、第一次、安倍政権となったが、持病の潰瘍性大腸炎が悪化し、一年で、総理を辞めることになった。
その後、福田康夫、ついで、麻生太郎、と、自民党総理になったが、いずれも、一年程度の短命で終わった。
小泉政権が終わったことで、自民党は、また、元の木阿弥の、派閥の論理の政党になり、低迷する景気による閉塞感や、首相の指導力低下、などに、国民の不満は過去にないほど高まった。
また、利権と支持母体で、ガッチリ固まった、自民党に、国民は、嫌気がさしていた。
そこで、政治献金を受け取らない、鳩山由紀夫、菅直人、の、民主党が、力をつけてきた。
小沢一郎の自由党も、民主党に加わった。
そして、2009年、7月13日、首相の麻生太郎が衆議院を解散した。
解散総選挙が行われた。
結果は、民主党の大勝だった。
民主党は、衆議院408議席のうち、絶対安定多数を超える308議席を確保した。
しかし、民主党には、これといった政策が無かった。
選挙前には、マニフェストを作ったが、それは、熟慮して作られたものではなく、自民党の政策と違う政策にすれば、いいんだ、といういい加減なものだった。
そして自民党に勝って、政権を獲ったことに、浮かれていた。
それまで、野党として、自民党を批判ばかりしてきて、批判の仕方は上手かったが、責任ある政権運営の経験がなく、現実の行政の能力は、全くなかった。
鳩山由紀夫、は、選挙演説で、アメリカ軍の普天間基地移の移設先を「最低でも県外」、と明言していたが、それが現実的に困難であることに、総理になってから気づき、これが、野
党になった自民党、および、沖縄県民に、さんざん、批判、批難され、窮地に立たされた。
高速道路の無料化、などという、受益者負担の原則を無視した公約まで、平気で、していたのだから、あきれるほかない。
翌年の、2010年7月11日に行われた参議院選挙では、民主党は、過半数を割って、負け、国会は、ねじれ、状態になった。
鳩山由紀夫、がダメなので、次は、菅直人、が総理となったが、2011年(平成23年)、の東日本大震災、および、福島の原発事故の対応も、悪かった。
そして、菅直人、の支持率も低下し、次いで、野田佳彦が、三番目の民主党の総理大臣になった。
しかし、社会保障と税の一体改革関連法案で、党内は、意見が、バラバラになり、離党者が相次いだ。
野田佳彦は代表選挙当時から消費税率を、5%から10%に引上げる消費増税を訴えていたことも、国民の不興を買っていた。
2012年12月16日、野田佳彦は内閣不信任決議を受け、衆議院を解散し、衆議院解散総選挙を行った。
国民は、民主党の、いい加減さに、イラついていたので、自民党が圧勝した。
これによって自民党は、政権与党に復帰した。
2012年12月26日、安倍晋三、が、第96代内閣総理大臣に選出され、第2次安倍内閣が発足した。
安倍晋三は、金利0の、大胆な金融緩和 (異次元緩和)、を、行い、それを自ら、「アベノミクス」、と、名づけて、権力を誇示した。
「アベノミクス」、政策は、最初に、大企業の株価が上がっただけで、(政府が強引に株価を上げただけで)、財務省は、国債、をジャンジャン発行した。
そのため、国債の発行額は、1000兆円を超えた。
安倍晋三は、日銀に、自分の、お友達を送り込んで、日銀に国債を買い取らせた。
円安となり、自動車などの、輸出企業は、儲けたが、日本は、原料を外国から、輸入して、加工し、製品にして、外国に売る、加工貿易の国なので、原材料の高騰で、中小企業は、経営が困難になって、次々に倒産していった。
「アベノミクス」、では、インフレターゲットを2%に設定したが、インフレにすれば、景気が上がる、という考えは、高度経済成長期、や、安定成長期、の時代に当てはまる、ことであって、バブル崩壊後の、デフレ社会においては、かえって、物の値段が低い、デフレの方が、庶民の暮らしには、有難いのである。
株価は上がったが、それは、一部の富裕層と、外国人投資家を儲けさせるだけだった。
大企業を優遇し、法人税の減税まで、行ったが、そもそも、安倍晋三には、国民のことなど、眼中にも、心中にも、無いので、非正規社員が増え、実質賃金は上がらず、国民の所得が、上がらない以上、国民は、消費を抑えるので、内需が上がらず、GDPの要因の55%を占める、内需が上がらない以上、トリクルダウンなど、起こるはずもなく、企業は、内部留保を溜め込むだけで、企業は、株に投資するだけで利益を上げ、GDPは上がらず、グローバリズムも、あって、所得の格差は、ますます広がる一方だった。GDPを上げ、経済を成長させるには、労働者の賃金を上げ、国民の所得を増やし、消費を上げることが必要なのに、安倍晋三は、企業の利益を上げることしか、考えていないので、企業のコストである人件費を削減する、「働かせ改革」法案を強行採決した。
そのため、過労死する者が、相次いだ。
そもそも、「アベノミクス」、とは、実体経済を、考えない、株価だけを上げて、見た目の数字を、国民に、よく見せるためだけの、バブル的、経済政策に過ぎなかった。
実体経済をともなわない、政策なので、翌年からは、すぐに、景気は低迷した。
安倍晋三が、大企業を優遇したのは、メディアを、押さえるのも、目的であった。
「アベノミクス」、が失敗だったとは、安倍晋三も、分かっていた。
しかし、「アベノミクスは失敗だった」、と、認めて、それを正直に発言すると、国民の反感を買うので、「アベノミクスは道半ば」、だの、「継続は力なり」、などと言って、大胆な金融緩和を続けていれば、やがて景気は、良くなる、と、安倍晋三は、国民を欺き続けた。
安倍晋三は、そういう、恥知らずな、総理大臣だった。
参議院でも、自公で、過半数をとったので、安倍晋三は、なりふり構わず、次々と、政府に有利な、独裁国家法を強行採決していった。
特定秘密保護法。集団的自衛権を認める安保法。共謀罪(テロ等準備罪)。
その他、カジノ法案だの、無数の悪法を強行採決していった。
そして、組閣では、自分の言いなりになる、「お友達」、を、起用し、「安倍一強」、とまで、いわれる、盤石の体制を作り上げた。
2012年12月の解散総選挙では、民主党が惨敗した。
あまりの、ひどい敗北に、民主党の幹事長の細野豪志は、ブルブル震えながら、当選者の花つけ、までしなかった。(出来なかった)
そして、民主党は、バラバラになった。
もう、国民は、民主党も信用できず、やむを得ぬ選択肢として、自民党の与党、を認めざるをえなかった。
しかし、安倍晋三は、自民党が大勝し、民主党が、手ひどい敗北をしたことに、つけ込んで、独裁者の本性を、むき出しにした。
安倍晋三は、内閣人事局を、つかって、手段を選ばず、官僚を意のままに、あやつった。
さらに、大企業を優遇し、権力で、メディアを押さえ、日銀にも、お友達を送り込み、日銀をも、意のままにした。
官僚は、安倍晋三の、強行な政治手法に、おびえ、安倍晋三の、ご機嫌をとった。
「忖度」、という言葉、が、流行り、それは、安倍政権において、当たり前のこととなった。
しかし、安倍晋三の、本当の狙いは、憲法改正し、自衛隊を日本の国軍にすることにあった。
しかし、憲法を改正するには、数々の困難があった。
その上、中国の漁船も尖閣諸島にやって来なくなり、また、信じられないことに、北朝鮮が、それまで、打ち続けていた、核ミサイル、ICBM(大陸間弾道弾ミサイル)の、実験をしなくなり、北朝鮮は、非核化を訴え出し、2018年6月には、アメリカのトランプ大統領と、シンガポールで米朝首脳会談を行い、2018年9月18日には、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領を平壌に招き、抱き合って、南北首脳会談を行い、南北融和の方向に舵を切り替えた。
しかし、安倍晋三は、これに困った。
北朝鮮の核開発、核ミサイルの実験の脅威は、自衛隊を軍隊にする大義名分であったからだ。
しかし、軍備を増強し、憲法改正し、自衛隊を国軍とする、大義名分が無くなってしまったのだから。
安倍晋三は、悩んだ。
「どうしたら、憲法を改正して、自衛隊を国軍に出来るか」
ということに、安倍晋三は、頭を悩ませた。
そんな、ある日のことである。
国会が開かれていた。
共産党の委員長の、志位和夫が政府に、いつもの通り、激しい口調で、質疑していた。
「安倍総理。北朝鮮も非核化を約束して、米朝合意、南北合意をして、核ミサイル発射実験をやめ、核施設を解体し始めました。一体、どこの国が、日本に攻めてくると言うんですか?」
内閣は、答弁に苦しんでいた。
「防衛大臣。石破茂くん」
と、議長が言った。
安倍晋三は、憲法改正のために、防衛問題に強い、石破茂を防衛大臣にしていた。
「議長。総理ですよ。総理に聞いているのですよ」
と、志位和夫は、声を荒げた。
その時である。
東京の新宿の、空中に、円盤状の未確認飛行物体が、現れた。
(確認されているのだから、未確認物体、という、言い方は、おかしいが)
スタジオアルタの、映像が、変わった。
真っ赤な、頭に鉢巻きを巻いた、タコのような、生物たちが、写し出された。
「フォッ、フォッ、フォッ。我々は、太陽系の外の、M78星雲からやって来た、M78星人だ。タコ星人とも、呼ばれている。我々の国は、資源が乏しくて。また、放射能の汚染もひどくてな。そこで、地球を征服することに決めたのだ。地球には、資源が、たくさん、あるからな」
そう、М78星人は、言った。
「し、しかし。地球を征服するというのなら、どうして、日本にやって来たのだ?地球の超大国は、アメリカだぞ。なぜ、アメリカに、行って、言わないのだ?」
そう、安倍晋三は言った。
「アメリカや、中国、ロシア、などの大国は、国家が認める正式な軍隊を持っている。そして、憲法で、交戦権も、憲法で認められている。だから、そういう、国家に、宣戦布告すると、我々も、本格的な戦闘をしなくてはなくなる。我々も、それは、避けたいのだ。しかし、日本は、間抜けな国で、憲法で、軍の規定がない。交戦権も認めていない。何をしても、抵抗しない、羊のような、骨なし、の国だ。だから、侵略するのに、一番、都合がいい国なのだ。フォッ、フォッ、フォッ」
そう言うや、UFO(未確認飛行物体)、は、新宿に、爆弾を投下した。
ドカーン。
バーン。
爆弾が破裂した。
「きゃー」
「ひいー」
人々は、悲鳴を上げた。
「フォッ、フォッ、フォッ。どうだ。無条件降伏するか。それとも、我々、タコ星人と戦うか。よく考えておくことだな。まあ、我々の科学技術は、お前ら、地球人より、はるかに上だからな。お前らに、勝ち目は、絶対、無いだろうがな」
そう言って、UFOは、去っていった。
これは、大変なことに、なった。
と、日本国中が、あわてふためいた。
国会もざわつき始めた。
「ど、とうすれば・・・」
与党も、野党も、関係なく、あわてた。
「日米同盟だ。アメリカに、助けてもらおう」
安倍晋三は、そう言って、すぐ、アメリカに飛んだ。
しかし、アメリカのトランプ大統領は、渋い顔で、「確かに、日本とアメリカは、日米軍事同盟を結んでいる。しかし、それは、あくまで地球人の話であって、地球の、どこかの国が攻めてきた場合の話だ。宇宙人が攻めてきた場合に、協力して、戦う、とは、日米同盟の規定にはない」と、突っぱねた。
そう言いつつも、アメリカのトランプ大統領の本心は、M星人は、日本だけを、ターゲットにして、宣戦布告してきたのだから、アメリカは、その戦いに、巻き込まれたくない、というのが、トランプ大統領の本心だった。
UFOは、その後も、しばしば、奇襲的にやって来ては、爆弾を投下した。
「フォッ、フォッ、フォッ。どうだ。無条件降伏するか。しないならば、いつまでも、攻撃をつづけるぞ。無条件降伏したら、女は、美人は、生かしてやるが、ブスは、全員、ガス室で、塩素ガスで殺す。あと、高齢者や傷害者も、ガス室で塩素ガスで殺す。働ける者は、全員、M星人の、奴隷として、生かしてやる。無条件降伏するならば、もちろん、日本人の全員の、財産は、没収する。食料は、配給制にして、生活保護ていどの、生活は、保障してやる。天皇は、もちろん殺す。反抗する者は全員、死刑だ。無条件降伏するか、我々と戦うか、よく、考えておくことだな。まあ、日本に勝ち目は、まず無いだろうが。フォッ、フォッ、フォッ」
そう言って、UFOは、去って行った。
与党も、野党も、戦おう、と腹をくくった。
「で、でも・・・・。戦っても・・・・・、勝ち目など、ないのではないでしょうか?」
山尾志桜里が、おそるおそる言った。
みなが、ギロリと山尾志桜里をにらんだ。
「あんたは、美人だから、殺されない、と、計算して、そう言っているのだろう。しかし、日本人の多くの女は、ブスだ。ブスでも、かけがえのない命だ。日本人を守るのが、政府の役割だ。そういう女たちを、あんたは、見殺しにする、というのだな。売国奴」
と、山尾志桜里は、与党からも、野党からも、猛バッシングを受けた。
山尾志桜里は、何も言い返せなかった。
日本の女たちのうち、美人が、「無条件降伏しては・・・」、と、恐る恐る言うと、日本国民は、言った女を、「売国奴」、と、ののしった。
しかし、この、ののしり、は、「自分さえ助かれば、ブスの女は殺されてもいい」、という意図なのだからして、この、「売国奴」、呼ばわりは、正当なものであった。
「だから、憲法改正して軍隊を作っておくべだったんだ」
と、自民党議員たちが言った。
「し、しかし。まさか。宇宙人がせめてくるとは。・・・想定外だった」
と、野党は言った。
「想定外で済むか」
と、自民党議員たちは、怒った。
「実は、私は、防衛問題で、あらゆる事態を想定していたんた。そうすると、(宇宙人が攻めてきたら)、ということも、冗談で、考えたこともあった。しかし、まさか、本当に、宇宙人が攻めてくる、とは、思ってもいなかった」
と、石破茂防衛大臣が言った。
「ともかく。そんなことを、言っている暇はない。急いで憲法改正しなければ」
と、自民党議員たちが言った。
これには、野党も反対する者はいなかった。
日本国民も。
選挙の度に、「安倍やめろ」、と、安倍政権を批判してきた、リベラル派の人々も、顔が青ざめた。
そして、「オレ達が、悪かったー。やはり、安倍首相の言うように、オレ達は、(こんな人たち)、だったんだー」、と、叫んだ。
共産党の志位和夫も、「私が間違っていた」、と、冷や汗、タラタラで、土下座して、国民に謝った。
その後も、タコ星人は、時々、地球にやってきては、地球を攻撃した。
「フォッ、フォッ、フォッ。どうだ。我々と戦うか。それとも、無条件降伏するか、まだ、決めていないのか?無条件降伏するならば、女は美人だけは、生かしてやる。だが、美人といっても、普通程度では、ブスと見なし、皆殺しにする。我々の、美人のレベルは高いからな。まあ、小川彩佳、や、桑子真帆、くらいなら、美人と認めて、生かしてやる。あとのブス女どもは、全員、ガス室で、皆殺しだ。まあ、日本の女の9割は、殺されることになるだろうな。そして、美人は、生かしてやるが、我々、タコ星人の、慰み者となるのだ。男どもは、我々、タコ星人の、奴隷となるのだ。反抗する者は、死刑だ。そして、屈強な男は、コロシアムで、死ぬまで、戦わせるぞ。まあ、日本人の9割は、殺す計画だからな。そして、日本を征服して、我々、タコ星人の国家を作る。そして、日本を拠点として、地球の、全ての国を征服する。国連決議だの、軍事同盟など、こっちの方の武力が、圧倒的に強ければ、全く意味をなさないのだよー。では、また来るよーん」
と言って、広島に原子爆弾を投下して、去って行った。
日本国民は、それまで、安倍政権に、強くに反対する者もいれば、支持する者もいたが、日本国に対する愛国心という点では、同じなのであった。
タコ星人に、外交での、解決策は、あり得なかった。
なぜなら、タコ星人の出した妥協案では、日本人の9割、を、殺す、か、奴隷にする、と言ってきたのだから。
「このままでは、日本は、M星人に滅ぼされてしまう」
ここに至って、日本人は、命の危険を、初めて実感した。
天皇陛下も、M星人は、「日本政府が、無条件降伏しても、M星人は、女のブスは殺す。高齢者、や、障害者は殺す」、と言ってきたので、「これでは、日本人を見殺しにすることになる。日本人の血を絶やしてはならない。ここは、何としても、M星人と、戦わねばならない」、と言った。
国民も同様だった。
異論を唱える者はいなかった。
急いで、憲法改正がなされた。
憲法9条を改正し、自衛隊は、日本の国軍であること。
交戦権を認めること。
さらに、18歳から、男子は、二年間の、軍役につくこと。
が、早急に認められた。
これには、保守、自民党は、もちろんのこと、公明党、立憲民主党、社民党、共産党、その他、全ての、政党が、賛成した。
賛成せざるを得なかった。
そうしいないと、日本国は、M星人の、植民地にされてしまうのだから。
何をされるか、わかったものではない。
ぐすぐすしている暇はなかった。
そのため、憲法改正案が、衆議院で、全会一致で、成立し、次いで、参議院でも、全会一致で、認められた。
そして、国民投票でも、日本国民全員が、その憲法改正案に賛成した。
日本の、ほんの一部の、美人は、反対したかったが、反対すると、日本国民から、一斉に、「売国奴」、と、ののしられたために、仕方なく、賛成した。
こうして、日本は、自衛隊を、国軍とし、交戦権を認め、そして、18歳の男子の、二年間の軍役も、認める、新憲法が成立した。
そして、日本の非核三原則も、破棄し、日本は、核兵器をアメリカから購入して、準備して、タコ星人との、全面戦争に備えた。
M星人は、時々、いきなり、やって来ては、日本に爆弾を落として、去って行った。
この戦いは、日本にとって、圧倒的に不利だった。
なぜなら、日本は、地球の、北緯20度、東経136度、に固定されていて、それを、動かすことなど、出来ないが、M星人は、宇宙から、やって来ては、爆弾を投下して、去っていくのであるから。
M星人が、宇宙のどこの惑星に、いるのか、わからないのだからして、日本は、仮に、ICBM(大陸間弾道弾ミサイル)を、持っていたとしても、敵国の場所が、わからないし、日本の科学技術では、太陽系を出ることは、出来ないのだから、タコ星人に対しては、攻撃のしようがない。
それは、あたかも、第二次世界大戦で、アメリカ軍が、サイパン島を陥落して、往復爆撃機B29で、本土に行って、爆弾を投下して、また、サイパン島に戻って帰るのと、同じである。
安倍晋三は総理大臣の他、防衛大臣も、兼ねることとなった。
そして、国家総動員法が作られた。
これも、与党も、野党も、全会一致で、可決された。
なにせ、日本という国家が、消滅されてしまう危機なのだから、平和主義、などと、あまいことなど、言っていられない。
灯火管制か行われた。
学童疎開が行われた。
学童は、タコ星人の、攻撃の避難のために、防空壕を、せっせと掘った。
Jアラートは、ひっきりなしに鳴った。
学校では、軍事教練が行われた。
学校の教師は、生徒に言った。
「いいか。タコ星人が、本土侵略してきたら。一人が、二匹の、タコ星人を殺せば、理屈からいって、タコ星人を、やっつけることが出来るのだ」
と、言って、竹やりの、軍事教練が行われた。
「これで、いつ、M星人が、やって来ても戦える」
そう、思って、戦闘準備に入ったころである。
なぜか、UFOは、全く、やって来なくなった。
しかし、いつ、やって来るかは、わからない。
そのため、タコ星人の奇襲にそなえて、日本は、完全な、戦闘モードに入った。
安倍晋三は、憲法改正が行われたことを、喜ぶどころでは、なかった。
日本が、滅びるか、どうか、の瀬戸際なのである。
ある時。
安倍総理の秘書が、官邸にやってきた。
「総理。ちょっと、極秘のお話が・・・・」
秘書が言った。
「なんだ?」
安倍晋三が聞いた。
「安倍総理。私が、これから言うことは、極秘にして下さい」
と、秘書は、念を押した。
「ああ。極秘にするよ」
安倍晋三は、言った。
「実はですね。タコ星人、というのは、あれは。憲法改正したがっている、総理の御意向を忖度したお芝居なのです。日本の官僚たちが、日本の重工業のトップのメーカーに、命じて、円盤状の飛行物体を、作らせたんです。国民は、まんまと、お芝居にひっかかってくれましたね。やっと、憲法改正できましたね。総理におかれまししては、ご満足のことと、存じます」
と、秘書は言った。
安倍晋三は、真っ青になった。
「ば、バカ。いくらなんでも、やり過ぎだ。なぜ、私に事前に言わなかった?もし、このことが、国民にバレたら、私は、八つ裂きにされる。そんなことも、わからないのか?」
安倍晋三は、怒鳴った。
「す、すみません。敵(国民や野党)、を、欺くには、まず、味方(総理)から、と思いまして。総理は、国民の命など、何とも思っておられないので、てっきり、喜んでくれるかと思いまして」
と、秘書は言った。
「そ、それは。財務省の役人の二人、程度の話だ。100万人を超す、無辜の日本国民を殺したら・・・・確かに、君の言う通り、私は、国民の命など、虫ケラのように、なんとも思っていないのは、事実だが、私が致命的に国民に嫌われてしまうじゃないか。そんなことも、わからないのか?」
安倍晋三は、言った。
「すみません。総理。配慮が足りなくて」
秘書は言った。
「と、ともかく、このことは、絶対の極秘事項だ。特定秘密保護法を作っておいてよかった。こればかりは、何としても、隠し通せ」
安倍晋三は、そう、秘書に命じた。
「は、はい。わかりました」
こうして、タコ星人の、お芝居のことは、国民に知られることは、なかった。
しかし、国民は、いつ、タコ星人が攻めてくるか、わからない、不安におびえて、戦闘準備状態が続いた。
しかし、こうして、日本は、憲法改正することが出来て、日本は、自衛隊を国軍と認め、そして、交戦権も認め、そして、核兵器も保有する、戦争の出来る、当たり前の普通の国になった。
めでたし。めでたし。


平成30年12月7日(金)擱筆

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