野菜の代わりにサプリメント摂ってたら大丈夫?#184

非常勤講師で担当している幼児教育科の「子どもの食と栄養」の講義の中では、ケーススタディを行うことが多い。

「子どもが野菜を食べないから、野菜ジュースやサプリメントで摂っています。」と保護者の方が言った場合、どのようにコメントするか尋ねてみた。

そうすると、おそらく【「野菜を食べさせる」が正解】だろう、とは思うけれど、実際のところ「野菜ジュースやサプリでも別にいいんじゃないの?」と考える学生が非常に多い。

・野菜ジュースには砂糖も入っているから、できるだけ野菜を食べましょう。
・サプリメントは子どもには危険なものもあるので摂りすぎに注意が必要です。
・野菜にはサプリメントにはない、栄養があるから、出来るだけ本物の野菜も食べてくださいね

どれも説得力が全くない。

・野菜ジュースには砂糖も入っている→(入っていないものを選んでます)

・サプリメントは子どもには危険なものもある→(子ども用のサプリメントで1日量をちゃんと守ってます)

・野菜にはサプリメントにはない、栄養があるから。→(何それ、具体的にどんな栄養なのか教えてください)

・忙しい時は、サプリメントや野菜ジュースもいいけれど、出来るだけ本物の野菜も食べてくださいね→(野菜ジュースは忙しい時や子どもが野菜食べるのを嫌がるときだけです)

言い返されると、もうそれ以上、返す言葉がなくなってしまう。

保護者さんにとっても、家庭での食生活を否定された気になる上に、納得できる情報もないので、ちょっとしたストレスだ。今後、その先生に相談しようという気にはならないだろう。

では、「なるほど、そうなんですね、大変な日はサプリメントもいいですね」だけでよいのだろうか?

保育、子育てのプロフェッショナルとして、このことをどのように捉えてアドバイスなどに活かしていければいいのだろうか。

この子どもの食生活において考えられるそもそもの課題はいったい何だろう?

【野菜が嫌いで食べない】場合は、かたくて食べられないだけという、嗜好の問題ではなく、口腔機能の問題であったりもする。

子どもは語彙力がまだ乏しく、明確に表現することが出来ず、「食べられない=嫌い」と表現することがある。

私の娘(小1)はいちごが大好きなのだが、ある日突然「嫌いだから食べない」と言い出した!「なんで?いちご好きやん?」と言っても、
「もういいの!いらないの!」と語気を強めたので私もそれ以上は何も言わなかった。
その翌日、彼女の歯が抜けた。前日、歯がグラグラするのが、不快で大好きなイチゴも「嫌い」になってしまったのだった。

私の小1の娘も含め、最近の子どもは、あごが小さくて、大人の歯が生えそろうすき間がなく、歯科矯正が必要になる場合が多いという。

「食べる口」がちゃんと育っていないのだ。
「食べる口」は噛むことによって育つ。

話題をもとに戻すと、野菜ジュースやサプリメントの摂取は「噛む」ことを要求されない。そこが問題だ。
野菜の代わりに、サプリメントや野菜ジュースを摂取する、というのは、ビタミンや栄養補給面ではその代わりになりうる商品もあるだろう。しかしながら、しっかりと噛んで咀嚼し、子どもの口を育てるという機会を失っている、という面があることを理解しておきたい。

野菜ジュースやサプリに頼りがちならば、おしゃぶり昆布など「しっかり噛む」おやつやおかずを増やしてみる、食べ物じゃなくても、紙風船を吹いて膨らませたり、それを吹いて飛ばしたり、遊びの中でも口を動かす遊びを増やしてみてくださいね!と提案してみる。

野菜を食べた方がいいとわかってはいるけれど食べられていない人に、野菜のメリットを説明しても響かない。そして、保育者として問題にしたいのは「野菜を食べない」ことよりも「食べる口が育たない」ということが重要なのではないかと考えている。
だから、「野菜を食べる」ことよりも「口を育てることの大切さ」「口をいかに動かすか」についての提案をするほうが、すんなりと受け入れて「噛む」につながる、食材や遊びなどの環境を意識してつくっていくことができる。そうすると「野菜を食べさせるようにしましょう」なんてひと言も言わなくても、結果的に野菜を食べだしたりもする。

本当の問題や課題、親の困りには何かを把握して、それにあわせたアドバイスが出来ると信頼感もアップする。



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