走れランボルギーニ
オトシンクルスがいなくなってからベタ水槽には苔が目立つようになった。ガラス壁面は私がゴシゴシ落としてやればいいのだが水草はそうはいかない。そんなわけで新たなるお掃除生体の導入を試みた。
ベタが攻撃せず、なおかつ苔取り能力が高い生き物。貝。
問題は私個人が大変に貝嫌いだということ。味も嫌い。卵をぶつぶつ産みつけるのも嫌い。気づいたら増殖しているのも嫌い。味以外については小学校の教室にあったメダカ水槽が原因である。ぶつぶつの卵を産みメダカの死体を貪り水槽に何十匹も張り付くその姿。おそらくタニシだったのだろうが明確な種類はわからない。
勝手に増えず苔取り能力も高く卵をぷりぷり産まない貝、そんな貝。いるのか。そんな都合のいい貝。
いた。
汽水域で繁殖するため水槽内で勝手に増えることもなく、苔取り能力も高い。淡水アワビの異名を持つその姿はトラウマタニシ君とはかなり見た目が違う。いいじゃんフネアマガイ。問題はどこで買うのかだけだ。
というのも本屋もなければペットショップもないし図書館からも遠く、もちろん模型屋もないし電気屋もない、あるのは居酒屋ぐらいな文化死亡圏に住んでいるのでちょっと遠出しなければならないのだ。
ベタやオトシンクルスを買ったちょっと遠いが1番近いペットショップなホームセンターに行くにもまずフネアマガイの取り扱いがあるのかもわからないし、ましてや気温がずいぶん下がってきたので生体の運搬が怖い。行ったところで貝でなくまた新しい多肉植物を買ってしまいそうで怖い。秋は多肉のシーズンなので。
そんなわけでネットショップで購入することにした。アクアリウム系のYouTubeで必ずと言っていいほど出てくるCharmさんである。
それだけでもう安心。生体は必ずと言っていいほど実物を見てから買ったほうがいいと言うがここは信頼と実績のCharmさんにお任せしよう。頼んだら翌日すぐ届いた。ありがとうCharmさん。ついでにコリドラスの隠れ家も買った。ありがとうCharmさん。
通販だと死着も怖いしと思いフネアマガイは2匹購入。2匹とも無事に届いたので一匹はエビ水槽へ、一匹はベタ水槽へ仕事をお願いした。エビ水槽も案外苔が着くのだ。エビ達も頑張ってくれてはいるがやはり壁面の苔は食べづらいらしい。
簡単に水合わせを終えいざ投入。まあ貝なのでゆっくりのんびり気長に苔を食べてくれたまえ。
速くない?
多分桜の落ちるスピードより速い。秒速4㌢メートル。桜が落ちるよりは遅いか。秒速1.5㌢メートルくらい。とにかく憎きタニシ君より圧倒的に速い。5分目を離そうものならもうどこにいるかわからない。
貝界のスーパーカー。車の事はよくわからないので格好いい名前をつけてやろう。ランボルギーニかな。ランボルギーニでいいか。
かくしてベタ水槽のランボルギーニとエビ水槽のランボルギーニは水槽内を駆け巡りその速さで苔を駆逐するのだ。走れランボルギーニ。苔がなくなるその日まで。
2日後、ベタ水槽のランボルギーニは水槽内でひっくり返った状態で発見された。全く動いていない。自力で起き上がれるという触れ込みを見たのでこれはもう駄目だろう。もともとベタが好きな弱酸性の水はフネアマガイにとってはあまり好きな環境でないらしい。遠くから斡旋されてすぐに過酷な労働環境に身を置いたのだ。仕方がない。飼い主はペーパーゴールドなうえ、水槽歴は1年もない。可哀想なことをした。
せめてその殻をエビ水槽のカルシウムとして活用させてくれはしないか。ということでそっとエビ水槽に朽ちたランボルギーニを入れた。
動いた。
といってもまだまだひっくり返った状態から自力で起き上がれるほどの力はない。ランボルギーニの天地をそっと戻してやりここでしばらく療養してもらおう。
かくしてエビ水槽にはランボルギーニが2台、さすがに同じ職場に同名の人間(貝)がいると気まずかろう。最初にエビ水槽に派遣した方をフォード君とした。ちなみに雌雄はランボルギーニもフォード君もよくわからない。うちにいる水生生物はベタ以外雌雄がよくわかっていない。まあジェンダーレス時代だしいいか。
ちなみにコリドラスのために買った水草付きの素敵なおうちはコリドラスが横穴にはまって動けなくなり死にかけたのでエビ達にあげた。今のところコリドラスは元気そうだしエビ達もちゃんとおうちを使ってくれている。
水槽って難しい。
(完)
【11/11追記】
ランボルギーニは11/9に星になりました。
お世話になりました。
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