新自由律川柳 11
服からに 服売り過ぎて 服借りに
(ふくからに ふくうりすぎて ふくかりに)
元歌
吹くからに 秋の草木の しをるれば
むべ山風を 嵐といふらむ
日本語訳
吹くやいなや、秋の草木が しおれるので、なるほど山風を嵐というのであろう。
元歌の解説
草木を荒らす秋の山風。
「山風」という漢字二字を、一つに合わせると「嵐」 という一字になる、とする漢字遊びにもとづいた歌です。「古今集」の詞書に「是貞の親王の家の歌合せの歌」とあります。機知を重んじた詠みぶりが、歌合 の歌にふさわしいのでしょう。
このような文字遊び を詠んだ歌には、他に「雪降れば木毎に花ぞ咲きに けるいづれを梅とわきて折らまし」(「古今集」冬・ 三三七)という歌もあります。これは、「木」と「毎」を 合体すると、「梅」の一字になるという機知です。
機知のおもしろさは、それによって読み手の注意力が喚起されるということがあります。「山風」「嵐」と いう言葉が続き、また掛詞で「荒し」が連想されて いくうちに、荒々しい山風に吹かれ草木がしおれて いく情景が想い起こされていきます。秋は、荒々しくも、 ものみな枯れ衰える時節なのです。
作者
文屋朝康(歌番号37)の父。六歌仙の一人。三河国(愛知県東部)に赴任する際、小野小町(歌番号9)を任地に誘った歌の贈答が有名。
ちなみに決まり字は「ふ」 一字決まりです。
百人一首で「ふ」から始まる歌はこの歌のみですので、「ふ」が聞こえた瞬間に札を獲りにいけます。
ちなみに、この件は私の書いた超短編小説【208】しのぶれど の中にも出てきます。
今回の川柳の解説
メルカリで服を売り過ぎてしまい、クローゼットの中が空っぽになってしまった。
いざデートに着ていく服がなくなってしまい2歳下の妹に服を借りることにした。
後日 妹に高価なものをおごる羽目になったという今時の笑えない川柳
「ふくからに」が元歌と全く同じ音にも関わらず違う意味になっており、ある意味ダブルミーニングになってます。
さらに中七、下五で「服服」とかぶせて、下五は「服借りに」と韻を踏むどころか、ら→り ら行でまとめているという、もはや芸術と言っていいほどの句です。
元歌の解説等は下記の記事を引用させていただきました。
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