
香美・嶺北、国見山 相次ぐ大規模風力発電計画の問題点を指摘 2月高知県議会
2月28日、県議会2月定例会本会議 秦愛議員(日本共産党)
秦議員 国見山周辺(本山町・香美市・大豊町)で株式会社・ジェイウインドによる事業、嶺北・香美で株式会社GFによる事業が計画されている。国見山エリアでは最大出力5万600キロワットを予定し、高さ143メートルの4000キロワット級の風車を12基建設するとしている。18年12月から風況観測がスタートし、24年5月に環境影響評価書の縦覧が終了。28年には運転開始予定とされている。
22年11月の技術審査会で会長が答申をまとめる中で、「この勢いで高知県の尾根筋に風力発電機ができていくと、個々の対応では済まない。総量規制みたいなものを県でガイドラインをもっておかないといけない。一つ一つは問題ないかもしれないが、総体的に高知の山の尾根筋に、自然の山ではなく、全て風力発電機があるのはどうかと思う。子孫に残せる風景なのか、県には長期的な視点で検討をお願いしたい」と発言している。しかし、規制の動きはないまま嶺北・香美の大規模風力発電事業に繋がっている。
嶺北・香美は高さ180メートルで4300キロワット級の風車が36基も建設される計画だ。地元住民からは事業は認められないという署名が県に出され、香美市議会は調査を求める請願を採択。住民、市議会の動きを踏まえ昨年12月20日付で、香美市長からも計画に対する意見書が出され、土砂災害の危険性、水環境、生態系、景観、環境対策の責任、市民への説明と理解を得ることを求めている。
県は今年2月13日に株式会社GFに「計画段階環境配慮書」に対する知事意見を発表。「重大な影響の回避もしくは低減できない場合又は、回避・低減を裏付ける科学的な根拠を示すことができない場合は、事業実施区域の見直し」を求めるとした。さらに「事業実施想定区域の近隣には既設の風力発電が存在し、また他事業者による風力発電の施設が計画されている事から、本事業との累積的な環境影響が懸念される」として、「累積的な影響について適切に調査、予測及び評価を行い、その結果を踏まえ風力発電施設の配置を検討すること」としている。事業者にとっては、ハードルが高くなったが、実態は事業者へのお願いの範囲だ。
このままだと、高知県の尾根筋は大規模開発による風車が立ち並び、各河川流域への影響や土砂崩れのリスク、生物多様性が後退するのは明らか。このままで、良いわけがない。県の嶺北エリアで拡大している、自然破壊的な大規模な風力発電に対する知事の姿勢が改めて問われている。
嶺北・香美エリアでの風力発電計画について、環境への影響が回避されない場合、「中止も含めた検討」を求めるつもりがあるのか知事に聞く。国見山での株式会社・ジェイウインドの計画に対する、「環境影響評価技術審査会」で出された意見である、風力発電の総量などの規制について早急に検討へ進むべきではないか。

浜田省司高知県知事 国見山周辺の事業は環境影響評価書が最終的に確定され、工事着工前の環境アセスメント手続きは終了している。現在、事業者は、風力発電所建設に向けて電気事業法に基づく申請を準備中と聞いている。
この件に関しては、「環境保全措置を適切に実施し、環境影響への回避 又は軽減に十分配慮することを求める」という意見を知事として提出した。事業実施にあたり、評価書に従わず、環境に影響を与える事態が認められる場合には、事業者に対応を求める。
嶺北香美ウインドファーム事業は、環境アセスメント手続きの初回の意見を 2月13日に知事として提出した。今後、知事として意見を述べる機会が2回残されている。その手続きの中で市町村や専門家の方々などの意見も踏まえ、環境への影響を回避、または極力低減する計画となっているかどうかという観点から意見を述べていく。その際に、事業者の計画が環境への影響を回避、軽減することができないものとなっていると認められる場合は、事業の中止を含めた検討を求めることもありうる。
西村光寿・林業振興環境部長 令和4年11月の環境影響評価技術審査会で風力発電の総量規制について、県として長期的な視点で検討をという意見をいただいている。風力発電施設建設にあたり、事業者は国が定める事業計画策定ガイドラインを遵守するとともに開発行為に係る様々な法令の許認可等を受ける必要がある。また一定規模以上の施設については環境アセスメント手続きが行われ、特定の地域において風力発電事業が集中する場合の影響についても考慮されるべき事項となっている。事業実施にあたり評価書に従わず工事を進めた場合は、電気事業法に基づく罰則等が措置されており現状でも一定の規制がなされている。
県独自のガイドライン的な規制を研究しているが、県内の風力発電の総量に上限値を設ける場合、地域と調和し環境への負荷が少ない計画についても認められなくなることも想定され、上限値を設定するために県内全域を様々な観点から調査し、非常に高度な技術的判断や知見に基づいた合理的な基準を設けることが必要になる。総量規制のようなものは大変ハードルが高い課題だ。慎重に必要性について研究を重ねていきたい。(2025年3月2日 高知民報)
写真 2月28日の高知県議会2月定例会で質問する秦愛議員