妹の友達のアルノちゃん#2【なぎハート】
えいっ!!
ぐえっ!!
和:お兄ちゃん、おっはよー
休みの日は大抵妹のボディプレスとともにスタートする。
はあ、休みの日くらい好きに寝かせてくれよ・・・・・・
和:お兄ちゃん、おっはよー
・・・・・・
和:お兄ちゃん、おっはよー
・・・・・・
和:お兄ちゃん、おっはよー
しぶとい・・・
〇:わかったから・・・
目が開かないまま、なんとか手を伸ばす。
背中を軽くタップしてから頭をワシワシと撫でてやると、満足そうな声と共にようやく重みから開放される。
和:ふへへ
和:ねえ
・・・・・・
和:お腹すいた、パンケーキ食べたい
・・・・・・
面倒くさ・・・
そのまま目を閉じてやり過ごす事にした。
和:お腹すいた、パンケーキ食べたい
・・・・・・
和:お腹すいた、パンケーキ食べたい
・・・・・・
和:お腹・・・
〇:わかったわかった、頭おかしくなるからもうやめてくれ;;;
和:じゃあつくってくれる?
〇:つくるつくる、大急ぎでつくるよ;;;
観念して重い身体を無理やり起こす。
和:やった!お兄ちゃんチョロくてガチ目に大好き!!アルノも食べるでしょ!!
〇:ん?
この展開は・・・
まさかと思って部屋の入口に目をやると、廊下から恥ずかしそうに顔を出すアルノちゃんと目が合う。
ア:お、おはようございます。〇〇さん;;;
既視感のあるシチュエーションについぼぉーっと見つめてしまう。
ア:えっ;;;あ、あの;;;
アルノちゃんの慌てる仕草を見ていると、頬をムニイーとつねられる。
〇:イタタタ
和:おい!エロ兄ちゃん。名前呼ばれたくらいで何ニヤニヤしてんだよ
〇:してない、してない;;;
和:絶対してた!アルノのおはようマジありがてぇぇー、よだれずびって!!
〇:言うか、そんなの!ていうかアルノちゃん来てるなら先に言ってくれよ
和:は?何でお兄ちゃんなんかに言わなきゃいけないのよ
〇:なんかって;;;急なツンがひどいですよ、なぎさん
和:ははーん、アルノの前でかっこつけようとしてるな?
〇:してないですよ、なぎさん;;;
和:バレバレですよ、エロ兄ちゃん
ア:ふふっ・・・やっぱり仲良しですね
そんなこんなで休日に無理やり起こされて妹の為にパンケーキを焼く。
自分で言うのもなんだが、料理は結構できる方だ。
家族以外に振る舞う機会なんてあるはずもないんだが、なぎが喜んで食べてくれるだけで別に不満は無かった。
和:んぅーー美味いっ!
〇:よかったよかった
和:今日のは特別美味しいっ!!なぎハートあげる!
そう言って両手でハートを作って見せてくる。
〇:えっと・・・なにそれ・・・
和:いっぱい貯まると可愛い妹とデートができるよ!
・・・・・・
・・・・・・
和:がんばって貯めてね。お兄ちゃん!
パチっとウインクをキメてくる。
いや、可愛いけど。妹にやられても。
〇:はあ・・・
和:・・・おい、ちゃんと喜べ
え、急にこわっ;;
〇:とっても嬉しいです、なぎさん;;
和:うんうん、そうであろうそうであろう
ア:ふふ、なぎが〇〇さんとデートしたいたけじゃん
和:ち、違うもん;;;ほらアルノも食べて!!
ア:あ、うん。いただきます
なかなか無い機会に緊張しつつ、アルノちゃんの反応を見守る。
ア:えぇっ!ふわふわっ!美味しっ!
ア:これはもうお店って言うか、お店超えてますっ!!
興奮して早口になる様子に嬉しくなってしまう。
ほんとに見てて飽きないっていうか、いいリアクションだよなぁ。
〇:気に入ってもらえてよかったよ
ア:え、こんなに料理上手で、優しくて、何で彼女いないんですか?
・・・・・・
・・・・・・
初めましての角度から重たいパンチをもらって両膝が機能しなくなる。
〇:・・・アルノちゃん
和:あははは、アルノ最高!!
ア:あわわわ、すいません;;;なんか興奮して口走りました;;;美味しすぎて、つい;;;
和:あははは、お兄ちゃん料理はうまいけど彼女はいないのよ
ア:ごめんなさい;;ごめんなさい;;
立ち上がって何度も頭を下げる。
〇:・・・いや、まあ事実だから
和:そーそー、アルノ気にしないで。お兄ちゃんは優しいから全然気にしないよ
〇:なぎが言うなよ
ア:ごめんなさい・・・
和:まあでも、パンケーキがこんなに上手なのは私の的確なアドバイスのお陰だよね
〇:アドバイスって。死ぬほどダメ出しはされたけど
ア:そーなんですか?
〇:もっとふわふわさせろとか、もっと映えさせろとか、なんか足りないんだよなーとか・・・
和:うんうん、私のお陰
〇:はいはい・・・大変だったけどな
和:いいじゃん、可愛い妹が喜ぶんだぞー
和:アルノだって気に入ったみたいだし、アルノハート貰えるんじゃないの?
ア:え;;;えぇぇ!!!
和:貯まったらデートできるかもよ!
ア:ちょ;;ちょっとなぎ何言ってんの;;;
わかりやすく反応を楽しむなぎと、これでもかというくらいに取り乱すアルノちゃん。
〇:はいはい、アルノちゃん困ってるぞ
〇:美味しいって言ってもらえたし、一応なぎハートもらえてオレは満足だからさ
和:一応って・・・なんだよ///ちゃんと喜んでよぉ///
文句を言ってる割になんだか嬉しそうだ。
オレに言わせれば、なぎもなかなかにちょろいんだが。
そう思いながら席を立つ。
〇:じゃあ、アルノちゃん。ゆっくりしてってね
和:え、お兄ちゃんまた寝ようとしてる?
〇:いいだろ休みなんだし、今日の仕事は終わったし
和:ぶぅう。まあ、いいけど・・・
〇:皿置いといてくれたら後で片付けるから
和:洗い物くらい自分でやるもん
〇:そっか、関心関心
ア:あ、あの;;;せっかくのお休みにすいませんでした
〇:全然、アルノちゃんはいいんだよ
立ち上がったと思ったら、オレの近くに寄ってきてまた頭を下げる。
ア:ごちそうさまでした。すごく美味しかったです
〇:いやいや、食べてもらえてこっちが嬉しいよ
ア:はい///////
めっちゃいい子だよな。
あらためてアルノちゃんを見てみると、やっぱりなぎと同い年には見えない。
しっかりしてるのに、あたふたする時のギャップとか可愛くてずっと見てられるんだよなー
気づいたらまたじーっと見つめていて、アルノちゃんが慌て出す。
そんな様子に初めて会った時の事を思い出して、つい吹き出してしまう。
〇:くっ;;
ア:え、えぇ;;
〇:ごめん、ちょっと思い出しちゃってさ。ビリビリペン
ア:うぅぅ;;;それは忘れてくださいよぉ;;;
〇:いやー、強烈だったからなー。オレもビリビリの瞬間見たかったなー
ア:むぅ・・・意地悪言わないでください
可愛く睨みあげられて、こういう表情もあるんだなーなんて感心していると、じとーっとこちらを見ている視線に気づく。
〇:ん?
和:なんか扱い違くない?
〇:は?
和:お兄ちゃんは私のお兄ちゃんでしょ!!
〇:何言ってんの?
和:アルノばっか贔屓すんなっ!
〇:贔屓って・・・なんだよそれ
和:うっさい!早く寝ろっ!!
なんだかなぎがご立腹だったので、自室に非難する事にする。
〇:はいはい、わかったよ。お休みー
まったく無理矢理起こされて、パンケーキ作らされた上に、なんで怒られなきゃいけないんだ?
文句を言いつつベッドに横になると、程なくして嫌ではない疲労感と妙な充足感に包まれる。
そして、こーいう休日も悪くないと思っている自分に気づく。
・・・・・・
・・・・・・
今のこの感情は、人によっては幸せと呼ぶのかもしれない。
・・・・・・
・・・・・・
結局、なぎのお陰なんだよなあ。
・・・・・・
・・・・・・
起きたら夕飯のリクエストでも聞いて、ご機嫌とっとくか。
オレが作れるものにしてくれよ・・・なぎ・・・
夕飯のメニューを想像しつつ、ベッドに深く沈んでいった。
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ザザザザアアアーー
窓に打ち付ける激しい雨風の音で目を覚ます。
慣れない起こされ方に戸惑いながらスマホを手を取る。
もう夕方か・・・けっこう寝てしまった。
体内時計の調整が始まらないまま、部屋を出る。
リビングに入ると窓から外の様子を見ている2人が振り返る。
和:もぉおー、やっと起きた・・・
ア:おはようございます、〇〇さん
本日2度目のアルノちゃんからのおはよう・・・ありがたい・・・
【続く】
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