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幼なじみの美空#1【いく時は一緒】

 美:ねえ、早くぅー

・・・・・・

美:ねえぇ・・・お願い・・・

・・・・・・

美:早くしないと私だけいっちゃうよぉ

・・・・・・

美:一緒にいくって約束したでしょ

・・・・・・

美:もうこれ以上は待てないぃ

・・・・・・

美:ねぇ、先いっちゃうって

・・・・・・

・・・・・・

〇:別にいいんだぞ、先にいって

美:やだやだ、〇〇と一緒がいいのおぉー

・・・・・・

美:お願いっ、一緒にっ///

・・・・・・

・・・・・・




〇:あのなぁ・・・・みく



〇:オレはまだ家出なくても間に合うんだよ・・・2限からだから

今日も今日とて自宅のリビングで、安定の無意味な会話。


美:お・ね・が・い♡

両手をぎゅっとして小型犬よろしくきゅるきゅると目を丸くする。

ぶりっこポーズというか、あざとポーズというかなんというか

まあ、いつものみくだ。

今日もやってんなぁ・・・

いつもの事だが、ここまで潔くやられると抵抗する気も失せる。

けして幼なじみを甘やかしているわけではない、諦めてるだけだ。



〇:用意するから・・・

美:やったー、早く早くぅ

〇:分かった分かった;;

美:早く一緒にいこっ

〇:それもういいから;;;

美:もぉーツンデレなんだからぁ///



美:あ、夕方から雨だから傘持ってね

〇:親かよ・・・

美:違いますー、ヨメですー////

〇:はああぁ・・・




ーーーーーー

みくとはいわゆる幼なじみというやつだ。

小さいころからずっと一緒で、本当は女の子が欲しかったらしいオレの両親から溺愛されている。

もともと仕事で家をあける事が多かった両親は、オレの高校卒業を期にリミットブレイクする。

2人とも仕事を楽しんでいるようだし、オレとしては仲良くやってくれるなら家を空ける事は特に問題はない。

最初のうちは家が広く感じる事も多少あったが、慣れてしまえばどうという事はない。

家事も嫌いでないオレにしてみれば一人暮らしの練習みたいな感覚でわりと楽しめていた。

ただ両親への文句が無いわけでもない。


なんちゃって一人暮らしが始まって少したった朝。

開かない目を擦りながら階段を降りるとリビングの電気がついている事に気づく。

母さんか。

平日の朝にいるのは珍しいなあなんて思いながらカラカラとリビングに入る。

〇:おはよ・・・

美:おっはよー!!

ん?

違和感を感じて声の方に目を向けると、ニコニコでソファーから立ち上がる幼なじみ。

〇:わぁあああ!!!みく!?

美:おはよ、〇〇

〇:おはよって、なんでいんだよ;;;

美:なんでって一緒に大学行くからじゃん

〇:いやいや、そうじゃなくって。もしかして鍵開いてた?

美:ううん、合い鍵使った

〇:はぁ?

美:〇〇ママがみくちゃんはもう家族だからって

〇:いやいや・・・

美:〇〇パパも早くお嫁に来てねって

・・・・・・

・・・・・・


両親の身勝手極まる行動と言動に、急激な脱力感に襲われる。

昔からみくの事好きすぎるんだよな。二人とも・・・

〇:母さん達が言った事は気にしなくていいから

〇:とりあえず鍵は返してくれ

美:うん、やだ

清々しい笑顔で予想通りの反応をされる。

〇:いや、普通家族でもないのに合鍵とか持たないだろ;;;

美:でも〇〇は私のヨメだよ?

〇:なんでオレがヨメ側なんだよ///

美:え、ヨメはお前だろって?もぉー///

〇:そんな事言ってないぞ;;;

美:そっかー、私は〇〇のヨメって事かー///

〇:おい;;

美:じゃあプロポーズのお返事に必殺技を

〇:だからしてないって;;;

美:せーのっ、みーーー-ぃきゅ・・・

〇:そういうのいいから・・・

必殺技を打つ前にちゃんと予告してくれたので、こちらもちゃんと180度回転して回避する。


美:んもぉー、照れちゃってー


美:可愛いなぁー〇〇は


・・・・・・

ずっと変わらないみくのペースに脱力する。

なんなんだいったい・・・

まあそれでも部屋に凸してこないだけよしとしておこう。

朝起きるとリビングに幼なじみがいる生活の始まりはこんな感じだった。





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〇:お待たせ、行くか

美:うん、いこいこ。はいっ

ソファーに座ったまま両手を伸ばしてくる。

これはオレが手を取るまで立たないやつだ。

美:ねえぇ、早くぅー

美:ちゃんとたたせてくれないと一緒にいけないよぉー


なに言ってんだこいつ;;;

まあでも、仕方がないか・・・

これがみくだもの・・・


小さくて白い手を引くと、ふらっとバランスを崩しながら立ち上がる。

わざとらしいムーブで・・・


美:おっとっと

片足でトトトンとオレに飛び込んでくる。

危機感を感じて細い両肩をロックして距離を確保する。

目の前で唇を突き出しているみくとの距離だ。


美:むちゅぅー///

〇:おい;;;

美:んぅぅーーー/////



美:ちっ

〇:舌打ちすんなっ;;なんなんだよ;;;

美:なにって・・・

美:ジコチュー

〇:は?

美:事故に見せかけたチュー///

〇:見せかけたって言ってるじゃねえか

美:てへっ///

〇:てへっ、じゃないだろ;;;

美:ふふふふ、照れちゃってー。嬉しいくせにー

〇:勘弁してくれ、ほんとに・・・

平日の朝はこんな感じで大抵みくに絡まれる。




ちなみにヨメだのなんだの言うが、そういう類の出来事は特に何もない。

たぶんオレの反応が楽しくて絡んできてるだけなんだろう。

ただただ昔から一緒にいる。そういう関係だ。


みくは可愛い。

うん、可愛いとは思う。

それと努力家で誰からも好かれるいいやつだ。

うん、それもそう思う。

人前で見せる空気を読まないような言動や行動も、人一倍空気を読んで場を和ませようと敢えてやっている事も分かる。

そういう優しいやつだ、みくは。

うん、それは分かってる。

それでも異性として好きかと言われると正直分からない。

一緒にいる時間が長すぎて兄弟とか親戚に近い感覚なのかもしれない。




美:ねえねえ、〇〇

美:もっと素直になって

美:もっと私に甘えていいんだよ///

美:きゅんきゅんっ///


今日も楽しそうだ・・・

うん、やっぱり分からない。



【続く】



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