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幼なじみのさくら#2【久しぶり】

(賀喜side)

さすがに我慢の限界だ。

私が大学入学を機に地元を離れてからも、3日に1回は連絡を取り合ってたのに・・・

もう2週間たつよ。

はぁー・・・

もう何度目かの溜息をつきながら、中学時代のやり取りを思い出していた。

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賀:さくって〇〇の事好きでしょ。告白しないの?

さ:そんなの無理無理

賀:お似合いだと思うけどなー

・・・・・・

さ:そういうんじゃなくて、今まで通りの関係でいたいかな・・・

賀:え?

さ:ただの幼なじみだから・・・

・・・・・・

さ:〇〇にとって私は・・・

・・・・・・

さ:私じゃ〇〇を幸せにできないと思う

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自分の気持ちを押し殺して、幼なじみの幸せを願うさくに私は何もする事が出来なかった。

そんな中学時代のやり取りから4年経って、急に今から告白するって連絡がきた。

確認したわけじゃないけど、相手が〇〇である事は間違いないだろう。

中学時代の2人は本当にお似合いだった。

高校も大学も一緒で、今も変わらず隣にいるのは、やっぱりただの幼なじみではないからだと思う。

今なら告白できそうっていうくらいだから、きっとタイミングも良かったんだろう。

良い報告がくるに違いないと思っていたのに、2週間たった今でも連絡がこないというわけだ。

報告がないって事はそういう事なのかもしれないけど・・・

それにしたって、連絡ぐらい欲しいと思うのは普通の事だろう。

返事を待ってるのかもしれないし、もしかしたら告白自体できなかったのかもしれない。

さくにはさくのペースがあるし、私が口を出すべきじゃない事くらいは理解している。

ここはさくからの連絡を待つしかない。

そう頭では理解しつつもスマホと睨めっこする日々が続いていた。

最近では毎晩、起爆スイッチを押すように発信の画面に指を限界まで近づけるという謎の行為に及んでいる。

それくらいさくの事が心配で仕方がない。

はぁー。

今日も今日とて、寸止めアンドため息。

こんな事になるなら当日中にこっちから電話してしまえば良かった。

変に時間が空いたから、さくも電話しづらいのかもしれないし・・・

それでも付き合えたんなら、絶対報告くるよなーって考えると・・・

さく・・・心配だよ・・・

賀:あぁー、もぉー

どうしていいか分からずに声を上げて、両手で顔をムギューと潰す。

あれ?

指の隙間からスマホの通話中の画面が飛び込んでくる。

え?

慌てて耳にあててみると。

さ:かっきー?

2週間ぶりの大好きな声が弱弱しく響く。

やばっ、寸止めしくじってた;;;

賀:えっ;;さく?

さ:うん・・・

賀:え、えっと;;;久しぶり。元気してた?

賀:別に用事があったわけじゃなくてさ;;;ほんとに

賀:どうしてるかなーとはずっと思ってたけど;;;

賀:今はほんとに間違えてかけちゃっていうか;;;

突然の事に思考が追い付かず、口が勝手に回り続ける。

さ:かっきーごめんね・・・ずっと連絡しないで

賀:さく・・・

さ:ずっと連絡しなきゃって思ってたんだけど、なんて言ったらいいかわかんなくて

賀:うん・・・

さ:遅くなっちゃったけど報告させて

ゆっくりと申し訳なさそうに話すさく。

良い結果が出ていない事は明らかだった。

さ:告白はできました

さ:できたんだけど・・・

さ:今なら告白できるかもって事で頭がいっぱいになってて、その後の事考えてなくて

さ:〇〇がどう思うかとか・・・・

さ:〇〇の驚いた表情見て気づいたの。今じゃなかったって・・・

さ:あの日に〇〇は他の子に告白してフラれちゃってたの

賀:え、そうなの?

さ:うん、本当に自分勝手で最悪のタイミングだったなって

さ:そんな時に告白されたって困るだけだよね

さ:それに気づいたら、もうどうしたらいいかわかんなくなっちゃって

さ:なんとなくそのまま誤魔化して、なんでも無いふりして今まで通りにしてます

賀:え?じゃあ返事聞いてないの?

さ:うん・・・

さ:だって聞いたら一緒にいられなくなっちゃうから

賀:そんなの、わかんないじゃん!!

さ:ううん、わかるよ。これ以上困らせたくないし、ちゃんと分かったんだ

さ:私みたいに自分の都合を優先して、〇〇の気持ちを考えられないようじゃダメだなって・・・

さ:〇〇を幸せにできないなって・・・

さ:だから今まで通り幼なじみとして、側にいたいの・・・

賀:さく・・・

さ:なんかかっきーに話したらすっきりした。もう大丈夫かも

・・・・・・

さ:聞いてくれてありがとね。あとかっきーとの約束守れなくてごめん

賀:ねえ、さく

さ:じゃあ、また電話するね

賀:ちょっ;;;さく;;;

そのまま電話が切れる。

さく・・・

なんで・・・

言いたい事はたくさんあるのに。

電話をかけ直す事はできなかった。

さくはすっきりしたって言ってたけど、私に話す事で無理やり整理をつけたんじゃないだろうか。

4年前と同じだ。

あらためて自分の無力さを痛感する。

そもそも何かできるって思ってる事が勘違いなのかな・・・



ーーーーーー

(〇〇side)

さ:気持ちをぶつけています。告白です

〇:えっと・・・オレ達ってただの幼なじみだよね?

さ:全然違うもん

〇:えぇぇっ!!!

さくらが俺に告白?

どういうことだ?

だってさくらは・・・

ハテナが多すぎて、整理がつかない。

さくらは幼なじみで初恋の相手だ。

そしてオレが、唯一告白できずに終わった恋の相手でもある。

そんなさくらからの告白が嬉しくないはずなんてなくて、

それでも違う人に告白してフラれたてのオレが何を言えばいいんだろう。

・・・・・・

・・・・・・

いくら考えても正解が分からない。

腰に巻き付いて必死に気持ちを伝えてくれているさくらを抱きしめる事もできなければ、その細い両腕をほどく事もできずにいた。

どうしたら・・・

そんなオレの気持ちを察したのか、さくらがすぅっと離れる。

・・・・・・

・・・・・・

さ:・・・びっくりした?

〇:え、うん・・・

さ:帰ろっか・・・

・・・・・・

・・・・・・

そのまま言葉を交わさず家路についた。



そんなやりとりから一カ月ほど経つ。

オレたちの関係は何も変わっていなかった。

今まで通りただの幼なじみだ。

変わったのはオレの気持ちくらいだろう。

さ:〇〇ー、帰ろー

〇:あ、ああ・・・

今まではフラれる度にそれなりにへこんだりしてたけど・・・

もうあの日からさくらの事で頭がいっぱいでどうしようもない。

告白の返事をするタイミングも分からなければ、返事をするべきなのかもわからなかった。

さ:ねえ、聞いてる?

〇:え、うん・・・

さ:どうする?

〇:えっと、ごめん。なんだっけ

さ:もぉーー、やっぱり聞いてないじゃん。お腹空いたからコロッケ買ってかない?って言ったの!!

〇:ああ、うん・・・


やっぱり以前と変わらない。気にしてるのはオレだけみたいだ・・・

さくらの中ではあれは無かった事になってんだろうか・・・



そんなふうにモヤモヤしながら大学に通う日々が続く。

今日はさくらはまだ授業あったはず。

1人で帰るかなんてぼーっと考えていると、背中をチョンチョンとつつかれる。

〇:ん?

振り返ると中学卒業以来の同級生が立っていた。

「〇〇、久しぶりだね」




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