幼なじみのさくら#4 (完結)【顎が笑う】
さ:今日は一緒に帰れない
〇:え、ちょっと;;;
そのまま電話が切れた。
さくらに思いを伝えたくて電話をしたが、一方的に切られてしまった。
すぐに電話をかけ直したが、さくらは出ないし、メッセージも既読にならなかった。
さくらの行動が理解できないまま、キャンパス内を探し回ったが時間が過ぎるばかりで見つからない。
くっそ、どこ行ったんだよ。
思いつくところは全部あたってみたので、さすがにもう大学にはいないんだろう。
さくらの家に直接行くしかないか・・・
でもさっきの様子だとまっすぐ帰ったらオレが来る事なんて分かるだろうし、どこかに寄り道してるのかもしれないな・・・
普段さくらが行きそうな所はいくつか思い浮かぶけど・・・
今はそうじゃない気がする。
今のさくらが何を考えているのか分からない。
それでもあそこなら会えるんじゃないかと思った。
一か月前一緒に遠回りして帰った土手を歩くと、ちょこんと座って遠くをみつめるさくらを見つけた。
闇雲に大学を探すんじゃなくて、ちゃんと考えたらもっと早く見つけられたかもしれない。
ここだったんだな・・・
どうしたってさくらからの告白を思い出してしまう。
さくらはオレの話なんか聞きたくないのかもしれない・・・困らせてしまうかもしれない・・・
それでもオレは・・・
今の正直な気持ちをさくらに伝えたい。
・・・・・・
・・・・・・
小さな背中を驚かさないようにゆっくり近づいて声をかける。
〇:さくら・・・
さ:えっ;;;〇〇;;;
あたふたしながらも立ち上がるさくら。
〇:探したよ
さ:えっと用事があるから;;;か、帰るね
〇:ちょっと待てって。なんで逃げるんだよ
さ:逃げてないもん
そう言って立ち去ろうと背を向けるさくらの右手を掴む。
〇:話し聞いてくれって
・・・・・・
・・・・・・
さ:やだっ!!聞きたくないもん!!
〇:さくら?
さ:聞きたくないよ!!
〇:なんでだよ
・・・・・・
さ:だって・・・
さ:だって聞いたら今までみたいに一緒にいられなくなっちゃう
さ:そんなのやだよ・・・絶対やだ・・・
さ:私はまだ〇〇の隣にいたいの・・・
〇:さくら・・・
さ:だから聞きたくないっ。告白の返事なんか
・・・・・・
肩を震わせてそんな事を言うさくらの背中があまりにも儚く見えて
いなくなってしまいそうで・・・
気づいたら背中から抱きしめていた。
さ:ふぇっ?
〇:さくら・・・
・・・・・・
〇:オレが聞いてほしいのは告白の返事じゃないよ
・・・・・・
〇:さくらからの告白は無かった事にしてもらえないかな
・・・・・・
〇:オレの方から告白させてほしいから
さ:えっ・・・
・・・・・・
・・・・・・
さくらの肩がこわばっているのが伝わってくる。
さくらが今どういう顔をしているのかは分からないけど、オレの声が届いているのは間違いない。
それだけ分かれば十分だと思い、一切の飾りも無く気持ちを伝える。
〇:好きだ
・・・・・・
・・・・・・
〇:さくらはいつも一緒にいてくれて、オレに元気をくれて
〇:オレはもらってばっかりだけど、もうさくらが隣にいない人生なんて考えられない
〇:これからもオレの隣にいてほしいし、オレもさくらを支えたい
〇:ずいぶん遠回りしたけど、もう迷わない
〇:さくらはオレにとってただの幼なじみじゃないから
〇:これから先ずっと一緒にいてほしい
〇:さくらが好きだ
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
さ:・・・ほんとに?・・・私でいいの?
〇:さくらがいいんだ・・・
・・・・・・
・・・・・・
さ:私と一緒で・・・〇〇は幸せになれる?
〇:絶対なれる。さくらと一緒に幸せになりたい
・・・・・・
・・・・・・
オレの腕をほどいて、そのまま数歩進んでから振り返る。
夕日が眩しくて、さくらの表情が分からず不安になる。
〇:さくら?
・・・・・・
・・・・・・
さ:今度は、全部受け止めてくれないとやだよ//////
さ:えいっ/////
既視感のあるシチュエーションにようやく察しがついて・・・
勢いよく飛び込んでくるさくらを、正面からしっかりと受け止めた。
いつも通りさくらと家路につく。
いつもと違うのは、並んだ影が手を繋いでいる事くらいだ。
なんだか綺麗すぎる光景に現実感が無いなーなんて思う。
これが夢でないと確かめるように、手に少し力を込めると嬉しそうに目を細めてぎゅっと握り返される。
〇:オレたちずいぶん遠回りしたのかなぁ・・・
さ:そうだね。〇〇は寄り道ばっかりだったし
〇:確かに・・・
それについては返す言葉が無い。
さ:うそうそ。ちょっと意地悪言ってみただけ。でもさ・・・
さ:今まで一緒にいた時間より、これから先一緒にいる時間の方が長いよね/////
〇:あぁ/////
さ:じゃあ遠回りした分、いっぱい幸せになろうね/////
恥ずかしそうに笑うさくらが、あまりにも愛おしくて・・・
絶対に幸せにすると誓いを込めて、繋いだ手に力を込めた。
さ:あっ、ちょっと電話してもいい?かっきーに報告したくて
〇:あぁ。賀喜さんすごい心配してくれてたし、早く安心してもらわないとね
賀喜さんがいなかったら、オレはいつまでもさくらに思いを告げられなかっただろう。
面倒な役を自ら買ってでて、オレに発破をかけてくれた賀喜さんには心から感謝だ。
どっかのタイミングで、あらためてお礼言わないとな・・・
!!!!
ふいに繋いだ手がギュウっと握られて、横を見るとさくらの顔がぐいっと近づいてくる。
さ:なんでっ!!?
〇:えっ;;;何っ?
さ:なんでかっきーが心配してたって知ってんの!!?
〇:あっ;;;やべぇ
さ:どぉーゆぅーことぉー?
〇:えっーと;;;
さ:んぅぅー
ゼロ距離で睨みあげられて、逃げ場など無かった。
可愛すぎて全然怖くはなかったけど・・・
賀喜side
今日は散々余計なお世話をやってきた。
やりすぎなくらいに。
後悔はしていないけど、自己満足でしかないし2人にとっては迷惑この上ない事だと思う。
結局部外者の私には何もできないって分かってるのに・・・
!!
さくからの着信に気づき、緊張しながらスマホを手に取る。
さ:かっきー?
賀:さく・・・
さ:今時間大丈夫?報告したい事があって・・
賀:う、うん
どうかいい報告であってほしい。
どうか2人の思いが通じ合ってほしい。
そして・・・さくに心からの笑顔が戻ってほしい。
ぎゅうっと目を瞑って、祈るような気持ちでさくの言葉を待つ。
・・・・・・
・・・・・・
さ:今どこ?
賀:・・・・・・
さ:かっきー今どこにいる?
賀:えぇっ!!?ど、どこって;;;家だよ、家っ;;;
さくの想定外の発言にプチパニ状態に陥る。
それでも嘘は言ってない。実家だって家だし;;;
さ:じゃあ今から行くね
賀:ん;;;
さ:帰ってきてるんでしょ?
え;;;
まさかまさかの;;;
〇:賀喜さんごめん、ばれちゃった;;;
〇〇の声が聞こえる。
賀:えぇぇえーー!!!
急展開すぎて、実家の自室に相応しくない音量が出る。
さ:ひどいなぁー、帰ってきてんのに連絡くれないなんて
賀:えっと;;;これは、その;;;
さ:ふふっ。うそうそ、顔見てちゃんとお礼が言いたいの
・・・・・・
さ:だからこれから会いに行くね。〇〇と一緒に
賀:さく・・・
もう、その言葉だけで十分だった。
自意識過剰も甚だしいが、余計なお世話が報われた気がして嬉しくなる。
これから2人と会うのか・・・
なんかちょっと緊張するっていうか、こういう時どんな顔して会えばいいの?
なんて思って鏡に目をやる。
見知った顔が、あんまり幸せそうにこっちを見ているもんだから
「自分の事じゃないのにそんなに嬉しいの?」
なんてからかってやると、顎がフッと笑った。
【終わり】
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?