幼なじみのさくらと蓮加と後輩の菅原#6 【なりゆき】
咲:私とつきあってください
菅原が泊まった翌朝、リビングで告白をされる。
告白と言ってもこれはオレの罪悪感を減らす為に菅原が提案してくれている事だ。
咲:私は好きになってもらえませんか?
咲:ダメですか?
〇:ありがとな。オレも菅原の事好きだよ・・・・・・でも
突然目を見開いた菅原の目線を追うと、いつもの朝のようにさくらと目が合った。
〇:お、おはよう、さくら;;;
咲:お、おはようございますっ;;
仲良く声が裏返ったオレと菅原の顔を交互に見てから
つつつっと歩いてきて菅原の手をとる。
さ:さつきちゃん
咲:は、はい;;;
さ:〇〇の事・・・よろしくね
咲:え
さ:よろしくお願いします
真剣な表情で言った後にゆっくりと頭を下げるさくら。
咲:は、はい;;
菅原の返事を聞いてからふっと短く笑って洗面所に向かう。
そんな細い背中を見届ける。
咲:先輩、すいません;;
〇:いや、さくらが戻ったらちゃんと話すから・・・
咲:はい・・・
少ししていつもと変わらない表情のさくらが戻ってくる。
〇:さくら・・・さっきの話だけど
さ:さつきちゃん寝れた?
咲:はい、あ、いえ;;
さ:そーだよね、ごめんね
咲:えっと;;
さ:蓮ちゃんなかなか寝なかったでしょ
咲:はい
〇:さくら、あのさ
カチャ
蓮:んー、おはよー
3人の視線が珍しく早起きの蓮加に集中する。
蓮:ん、どした
さ:おはよ蓮ちゃん、ふたり付き合うんだって!
蓮:えぇっ、そうなの咲月!?
咲:あぁっ;えっと;;;
〇:待ってくれ;;それなんだけど
蓮:咲月ならお似合いだと思うよ
咲:え?
蓮:〇〇よかったねー
蓮:どぉぉーん!!
!!!
勢いよく突っ込んできて過去一重いタックルをくらう
〇:痛ってえぇ
蓮:咲月泣かせたら許さないぞっ
〇:いや、だからさ;;
蓮:まあ〇〇はそんな事しないか・・・
さ:うん・・・
蓮:あっ、そしたらルームシェアは終わりかな
蓮:隣の部屋でエッチな事されるのはさすがに気まずいでしょ
咲:えぇぇ///
さ:ちょっと蓮ちゃん;;;
蓮:あはは、でも咲月だって心配になっちゃうじゃん
さ:そうだね
蓮:いつまで続けられるかなって思ってたけど・・・
蓮:いい機会かもね・・・
さ:うん・・・
蓮:まあ、すぐってわけにはいかないけどさ
さ:次の更新の時くらいかな
咲:あ、あの;;;
蓮:さぁつきぃー-
いつもさくらにやるように菅原に抱きついて体を弄り出す蓮加。
咲:えぇ;;蓮加さん!?
咲:く;;くすぐったいです///
さ:ふふ、蓮ちゃんの朝ルーティーンだからね
咲:あぁっ;;;
蓮:咲月も細いのに柔らかいね
咲:え、なんか;;ああぁぁ///蓮加さん///・・・
蓮:ふふふふ
朝に似つかわしくない声が菅原から漏れると満足そうにオレを見てドヤる。
蓮:まだ〇〇もこんなに触ってないでしょ
〇:菅原で遊ぶなって;;;
蓮:ふふーん、顔洗ってくるー
〇:管原大丈夫か?
咲:あ///ぁはいっ、はっ///・・・
蓮加の洗礼を初めてくらった管原が息を荒くして涙目でこっちを見ながら答える。
あまり大丈夫ではなさそうだ。
なんだったんだ、あれは。
なんだかんだで結局誤解は解けないままだ。
それでもあまりにもあっさり受け入れる2人になんだか脱力する。
オレが気にしすぎていただけだったのか。
ん?
動揺と心配の混じった菅原の眼が「どうしましょう;;」と言っていて・・・
「大丈夫だ」と小さく頷いた・・・
それから昨日と変わらない4人の時間を普通に過ごして、夕方前に菅原を駅まで送る。
咲:先輩、ごめんなさいっ!
ベランダから手を振る蓮加とさくらが見えなくなってからしっかりと頭を下げてくる。
咲:私が急にあんな話するから
〇:いや・・・オレが色々考えすぎてたのかも、もっと早くそうするべきだったんだ
咲:でも
〇:今までなんとか現状を変えないとって思ってたのに何もできなかった
〇:オレ達、いやオレが一歩先に進めたのは菅原のおかげだ
〇:だからありがとう
〇:成り行きでなんとなくっていうわけにはいかないから
〇:あらためて言わせてほしい
〇:菅原・・・
〇:こんなオレでよかったら付き合ってくれないか?
咲:・・・先輩
ぐぐぅっと唇を噛んだ後に顔を伏せる。
・・・・・
・・・・・
〇:ごめん、好きな人が決められないって言ってたやつが言っていいセリフじゃないよな
咲:あぁ、違いますっ;;そうじゃなくって;;
慌てたように顔を上げて、両手でオレの袖をきゅっと掴む。
咲:あ、あのっ・・・
咲:私・・・頑張ります
咲:ちゃんと先輩に好きになってもらって
咲:ちゃんと先輩の彼女ができるように
咲:ちゃんと先輩がいつも笑っていられるように
咲:私・・・頑張ります・・・
咲:だから・・・
咲:私を先輩の彼女にしてください
目に涙を浮かべながらオレの為にそんな事を言う管原。
もう何度目かの告白をようやく受け入れる覚悟ができた。
^^^^^^
咲:先輩、おはようございます///
〇:おぉ、おはよう///
・・・・・・
・・・・・・
いつもの月曜の朝の挨拶だが、いつもと違う距離感に気づいてしまう。
菅原自身も同様にそれを感じているんだろう。
お互いの考えてる事が分かってしまう。
でも嫌ではない。むしろ・・・
蓮加とさくら以外でこういう感覚を味わう事は初めてだった。
咲:な、なんか照れますね///
〇:そ、そうだな;;;
咲:すいません、いつもは先輩が視界に入ったらすぐに声が出てたんですけど・・・
咲:今日は声より先に足が動いちゃいました///
チロっと舌を出しつつ顔をこれでもかと赤らめる。
うわっ;;なにこの可愛いやつ///
って後輩か///
いや・・・彼女か//////
〇:えっと、教室行くか//////
咲:はい・・・
いつもだったらわざと先を歩くオレを管原が追いかけてくる構図だ。
並んで歩いてる事を意識してしまうのも仕方がない。
そして今こう考えてる事もたぶん管原に伝わっているんだろう。
咲:先輩・・・
〇:ん
咲:手とか繋いじゃいます?
!!
〇:いやいや、大学内でそういうのはナシだろ///
咲:私はアリだと思いますけど///
いつものように後ろの席を陣取るといつものように隣の席を陣取る。
咲:先輩
〇:ん?
今までと変わらない呼ばれ方に、
今までに無かった色々な感情が込められている気が勝手にして緊張してしまう。
咲:蓮加さんとさくらさんどうですか?
〇:え?
咲:変わりないですか?
〇:ああ、別に何もないしいつも通りだぞ
〇:オレが色々気にしすぎだったんだろうな
咲:そんな事はないと思いますけど・・・
〇:ん?
咲:いえ、とにかく元気ならよかったです
咲:先輩達が気まずくなっちゃっうのは嫌ですから
まっすぐな眼でそんな事を言う菅原。
オレよりもオレ達の事を真剣に考えてくれている事が分かった。
^^^^^^
〇:お疲れ、菅原
咲:え、先輩っ?
平日5限終わりに講堂前で声をかけると
てててててっとかけ寄ってくる。
咲:どうしたんですか?
咲:今日先輩4限終わりだし、サークル無しですよね
〇:ああ///そうなんだけどちょっと課題やるのに残ってたから
〇:もうちょい待ってたら菅原終わるかなって///
咲:えぇぇえ;;;;
〇:ごめん、迷惑だったか?
咲:きゅん///
〇:は?
咲:あ;;すいません。なんか気持ちが口から出ちゃいました///
咲:今のは無しで///
〇:なんだよそれ///
授業終わりを待っていただけなのに、たっぷりと顔を朱に染める菅原。
ほんとに面白いっていうか、すごいな・・・
いつも全力でオレに気持ちを伝えてくれて、オレばっかり救われている。
ちゃんとオレも菅原を支えたい。
そう考えるようになるのに時間はかからなかった。
それでも普通に好きで告白して付き合った関係ではない。
あらためて付き合ってほしいとは言ったが、菅原がオレの為に提案してくれたのが始まりだ。
ましてや蓮加とさくらが好きで決められないという前提でお付き合いが始まっている。
当然と言えば当然だが、恋人として管原との関係をガツガツ進めるという事にはならない。
菅原は付き合いだしてから今まで以上に笑顔でオレを気遣ってくれる。
それでも心配そうな顔をする事も増えていた。
とにかく菅原に安心してほしい。
オレはもう大丈夫だし少しずつでも管原との関係を進めたい。
そんな事を考えながら2人の時間を過ごしていた。
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ーーーーーー
蓮:ねえねえ、咲月とちゅーとかしたの?
休日の昼に蓮加に詰められる。
最近はもっぱらこうだ。
〇:してないわ;;
蓮:えー、いつすんのよー
蓮:もう一か月以上たつでしょ。付き合って
〇:まあ、そうだけど///
蓮:一か月記念とか何したの?
〇:いや、何も・・・・
蓮:えっ!デートとかは?
〇:別に大学でほぼ毎日あってるし・・・
蓮:マジ?
〇:そーいえばまともなデートってした事ないかも
蓮:ありえないかんねっ!!!
〇:えっ;;
蓮:咲月が優しいから続いてんだからねっ!そんなのっ!!
さ:まあまあ・・・蓮ちゃん落ち着いて
蓮:咲月可愛そうじゃん!ちゃんとデートしてこい!そんでチューくらいしてこい!!
〇:なんだよ、蓮加には関係ないだろ;;
・・・・・・
・・・・・・
蓮:・・・・まあそうかあ
・・・・・・
・・・・・・
さ:蓮ちゃん・・・
蓮:そうだよね・・・
・・・・・・
・・・・・・
蓮:ごめんごめん、んじゃゲームの世界に転生しますぅー
さささっと自分の部屋に帰っていく蓮加。
〇:なんなんだいったい
さ:・・・蓮ちゃんも心配なんだよ
〇:そうだけど、気にしすぎだろ
さ:まあ、ちょっとそうだよね・・・
さ:でもさ・・・
さ:蓮ちゃんの気持ちも分かってあげて
〇:気持ちって言われてもな、こっちにも色々ペースがあるから
さ:うん・・・そうだね・・・
〇:とにかくさくらはいつもどうりで助かるよ
・・・・・・
・・・・・・
〇:さくら?
・・・・・・
・・・・・・
さ:ねえ
さ:本当にそう思ってる?
〇:えっ
・・・・・・
・・・・・・
さ:私にも関係ないかもしれないけど・・・
さ:ちゃんと咲月ちゃんと幸せになってよね
さ:私達がどういう気持ちで応援してるか・・・・
〇:さくら・・・・
さ:ごめん、何でもない・・・
立ち上がって部屋に向かうまでに涙がつうと滑るのを見た。
オレは最低だ・・・
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気付いたら家を出ていつもの場所にいた。
休日のオフィスビルの屋上。
ここは罪悪感と向き合うには都合がいい場所だ。
蓮加・・・
さくら・・・
いったいどういう思いでオレとの生活を続けてたんだ・・・
オレはいったい何を・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
「そんなにぎゅーってしたら痛いですよ・・・」
無意識に左腕を掴んでいた右手の甲に小さな手が重なった。
いつかの日と同じように。
【続く】