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moon クリアレビュー

 ゲーム界隈では、「アンチRPG」として評価の高いmoon。自分が知るところでは、UNDERTALEで有名なToby Fox氏や、地元・北九州が生んだロックバンドのボーカル、ポルカドットスティングレイの雫さんなどが絶賛していた気がします。好きな人はめっちゃ好きみたいな、人を選ぶゲームのイメージもありますし、「伝説のゲーム」なんて大仰な紹介をしていた記事も見た記憶が。

 そんな評価の高いmoon、プレイステーションのソフトというのもあり、長らくプレイできる環境にありませんでしたが、突如Nintendo Directで発表、発売されたのがもう5年前。発売と同時に購入したものの、ちょうど同時期にドラクエ10にどっぷりハマり、プレイを始めたのは3年前。

 基本的に私は、今やっているゲームをクリアしないと次のゲームを買わないようにしている人間です。そんな私がクリアをすることなく、何度も途中で投げ出してようやくクリアにこぎつけたのが今回。熱狂的なファンが多いゲームですが、忖度なしのレビューをしていこうと思います。


○ラブを集める冒険

 本作の舞台は、ムーンワールドと呼ばれるゲームの世界。ある日、勇者は王様に呼ばれドラゴンを倒しに行くように命じられるという、RPGのお約束のようなイベントから始まります。

 しかし主人公はその勇者ではなく、なぜかこのゲームの世界に飛ばされてきたプレイヤー自身。勇者の足跡を追うように、ムーンワールドを探索することになります。

 そこで出会うのは、罪もないのに殺されてしまったモンスターの死骸や、勇者によって家を荒らされ困り果てた住人。殺されたモンスターの魂を成仏させたり、困った住人を助けてあげたりすることで「ラブ」をゲットし、世界をラブで満たすことがこのゲームの目的です。

モンスターを成仏させることで「ラブ」とお金が。

 主人公は、ラブを集めることでレベルが上がり、一度に行動できる時間が増えるように。レベルが低いうちは半日くらいしか行動できず、自宅周辺の捜索が精一杯ですが、行動時間が増えると遠くまで足を伸ばせるようになります。最後の方は、丸4日間くらいは食わず寝ずでもやっていけました。

 ラブを集めるには、先述の通りモンスターの魂を成仏させるか、住人の困り事を解決する必要があります。時にはアイテムが必要だったり、特定の時間帯や曜日に訪れなければならなかったり、パズルのような謎解きがあったりと、一筋縄ではいかないことも。この謎解きが難しくて自分は、3年も積んでいました。

 一応ヒントを出してくれるキャラクターもいるのですが、「この人が困っているよ」とラブを入手できそうなイベントがある場所を教えてくれる程度のもの。教えられた場所に行っても、じゃあその謎をどう解くのか、そもそも今の進行度や所持アイテムで解けるものなのか、ということはわかりません。

場所じゃない、謎解きのヒントを教えてくれ。

 そうこうしているうちに、解ける謎がなくなりゲーム自体を放置…ということを、何度も繰り返しました。これがクリアに3年もかかった理由です。

 もちろん、特定のアイテムが必要だったり、謎を解くためのヒントが遠くにあるような意地の悪い謎もありますが、基本的にはその場でよく観察すれば何とかなるものも多いです。時間を置いたら案外すぐひらめくこともあり、「どうしてこんな事がわからなかったんだ…」と思うこと多数。

 この手の謎解きゲームは、攻略サイトを見てしまうと作業ゲームになってしまうので、できるだけ答えは見ずにプレイしたかったのですが、終盤どうしても分からなかった謎は調べてしまいました。

 調べた謎はクロロホルムの売っている場所と、花火のヒントが書かれていた奇盤の在処。なんであれだけ町をしらみ潰しに探し回っていたのに、夜のキュリオに話しかけなかったんだろうと猛烈に後悔しました。

なぜ夜は営業してないって思い込んだのか…。

○「アンチRPG(笑)」という印象

 この見出し、決してmoonを馬鹿にしているわけではありません。

 本作が「アンチRPG」と呼ばれるのは、やはりRPGのお約束のような行動をしている勇者を悪者のように描いているからでしょう。悪のドラゴンを倒すという大義名分のために、罪なきモンスターを殺し、民家からアイテムを強奪し、ムーンワールドの住人に横柄にふるまっています。

経験値のために殺される罪なきモンスターたち。

 ただこれらの描写によって、本気でRPGを批判しているかと言われると、そのような印象は受けません弟子あ。RPG以外にも環境活動家やフェミニストなど、ゲーム全体を通していろんなものを皮肉っているので、RPGもその中の一つなんだろうなと。

 アンチなんて大仰な言葉が使われているので、破壊と殺戮を是とする作品ばかりのゲーム業界に一石を投じる哲学的な作品かと思いましたが、むしろ小粋なジョークや遊び心たっぷりの「アンチRPG(笑)」といったような作品でした。ただ、エンディングで「奇盤」の意味が分かった時は、思わずなるほどと思いました。

 むしろ、moonに影響を受けたと自称するUNDERTALEにこそ、シリアスにRPGのことを考えろよという雰囲気を感じました。プレイヤーにRPGのお約束をさせ、ラストでNPCにその行動を批判させる。初めてプレイしたのは7年前ですが、しっかりと罪悪感を感じましたし、きちんとGルートまでプレイさせていただきました。

この辺りの言葉遊びはmoonを感じますね。

 UNDERTALEより先にmoonをプレイしていれば、「アンチRPG(笑)」なんて不届きな事は思わなかったのでしょうか。

 この辺り、CLANNADのアニメを見る前にリトバスのゲームをやってしまったがために、CLANNADで泣けなかったあの時の気持ちを思い出してしまいます。リトバスは葉留佳さんのルートと、美魚ルートがよかったなあ…。

○個人的MDランキング

 本作は、特定のフィールドでしかBGMは流れておらず、それ以外のフィールドではゲーム途中で手に入るMDを自分で選び、好みのBGMを流すことができます。

 手に入るMDは全36種類。自分は35種類しか見つけられませんでしたが、その中の個人的ベスト3を発表しようと思います。一応音源はYoutubeでも見つけたのですが、おそらく違法アップロードで掲載するのは憚られるので、気になる人は自分で探してみてください。

・第3位

 第3位は、「KILLAH BLUES」。改めて聞き返してみると、音数が少なくて寂しい感じもしますが、そのくらいの方がBGMにちょうどいいのかもしれません。電子ドラム?の音やDJがレコード回すキュイキュイ音がいい感じに入っていて、フィールド探索やテクノポリスあたりを探索するのにはうってつけの曲でした。

・第2位

 第2位は、QYPTHONEの「POP MAY DAY」です。

 これが一番聞いた曲かもしれません。なんかマザーシリーズの序盤の町で流れてそうな感じがしていいですね。明るい感じにみょんみょんした音が入っているのが、moonという作品にもマッチしている気がします。

・第1位

 栄えある第1位は、セロニアス・モンキーズの「FLOWER WALTZ」です。セロニアス・モンキーズは、本作でもう一曲手がけていますが、その曲も結構好きです。

 前述の2曲に比べて、自分の中ではあまりmoonっぽさを感じない曲ですがシンプルに好きです。余談ですが、この曲をかけていたおかげでクリアできた謎もあったというのを後で知りました。この曲を好きでよかった。

○終わりに

 熱狂的なファンが多いイメージの本作ですが、プレイした感想としては、「ちょっとした遊び心が見える普通の謎解きゲームだなあ」という感じです。謎解きは普通に楽しめました。

 ただ、やはり30年近く前のゲームなだけあって、不便だなあと思うところはちょこちょこありました。アイテムの出し入れや売却などはもうちょっとスムーズにならんかなあとか、移動スピード遅いなあとか。ワープは一方通行か…などなど。

 まあ、レベルが上がるにつれて行動時間が延びるというシステム上、移動回りの不便さは仕方ないことではありますが。移動が不便な分、序盤にレベルが上がって行動範囲が広がるワクワク感は高まりますしね。

 間違いなく言えることは、万人にお勧めできるゲームではないということ。3時間歩き回っても、一つも謎を解く手がかりが見つからないことに耐えられる人はプレイしてもいいかもしれません。

 余談ですが、自分が見た攻略サイトに目安クリア時間が20時間前後って書いてあったんですが、MENSA会員がプレイでもしたのでしょうか。自分は45時間かかりました…。

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