[アリ坂]キャット
クル嶋さんが、
「私ねぇ、あれが好きなのよ。
あれ甘くて美味しいじゃない。
見た目も可愛いし、最高よ。
あれに匹敵するものって
今のところ無いわね。
あれが一番だと思う、うん……って、嘘よ。
あれは別に好きって言うか、普通。
ちょっと気分的に
人を騙してみたかっただけよ。
どういう類いの嘘?
とか言わないで。
あなたが頭を悩ますほどのことじゃないわ。
って言うか、あれって何?
とか思わなくていいの。
そこは自分なりのあれを
想像しておきなさい」
と、お喋りしていた頃、
アリ坂はヤマ地さんが飼っている猫と
お喋りをしていた。
アリ坂はなんか、
電気代がどうのこうの言っている。
だが猫は、
「ニャー」
としか返さない。
まぁ猫だしね。
だって猫だもん。
アリ坂も、それでいいのだろう。