ショートショート よっぽど

「スッキリしない天気が続きますね」
とスッキリした髪型をした
近所のおばあさんに話し掛けられた僕は、
おばあさんのスッキリした頭を触りながら、
「そうですねぇ」
と同意した。

そして僕はそのまま、
「天気予報も天気予報士も
 明日は晴れるって毎日言っているのに、
 この天気ですからね。
 意味分かりませんよ。
 泣きそうです僕は。
 この天気が続くことによって、
 僕が何か困るってことはないんですけど、
 なぜだかなんだか泣きそうです僕は。
 あんまり僕、
 泣く人間じゃないんですけどね。
 でも、なぜだか泣きそうなんです。
 だからよっぽどですよ、この天気は。
 よっぽどです」
と、おばあさんにその心境を語った。

そしたら、
おばあさんは真剣な顔で、
「へぇ~、それは辛いねぇ」
と僕の気持ちに寄り添ってくれ、
僕の手を払いのけつつ、
「泣きそうって言うのは、
 あなたが言うように、よっぽどよ。
 ご本人の本心として
 本人であるあなたが言うんだから、
 よっぽどなのよ。
 本当、辛いことになったわねぇ、残念。
 残念ね。
 もしあれだったら、ここに連絡しなさい。
 今私がデタラメに書いた電話番号だけど、
 もしあれだったらね、連絡するのよ。
 きっと良いところに繋がるわ」
と言って、
どこに繋がるのか分からない電話番号を
手渡してきた。
そして、
「残念。残念ね」
なんて言いながら、
おばあさんは去って行った。

って訳だけど、
なんだこの電話番号?
要らねーよ、こんなの。
はぁ……もう泣こっ。


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