BOKU
それが許されるんなら
僕だって禁忌を破りたいし、
大人数でひそひそ話をしたいし、
要人を置き去りにしたいよ。
でもそれが許されないから、
こうやって大切な人を
墨汁まみれにしているんじゃないか。
僕と君とは違うんだよ。
僕は君みたいに恵まれた人間じゃない。
恵まれた人間じゃないから、
こうやって僕は
大切な人の大切なまで
墨汁まみれにしているんじゃないか。
分かるだろ?
そういうことなんだよ。
話はそう単純なものじゃない。
さっ、
もうあっちへ行ってくれ。
僕はこれから、
大切な人の大切な物を
墨汁まみれにしなきゃいけないんだから……。