[アリ坂]要らない
アニーサが右に左にキレの良い動きを見せて、ゼェゼェと息を切らし、
汗をボタボタと落としていた頃、
アリ坂は真剣な面持ちで実演販売を見ていた。
その実演販売の人が言うには、
「三日三晩、
脳裏に焼き付いて離れないくらい、
よく切れる包丁」
らしい。
その実演販売の人が言うには、
「あの有名な死刑囚も大絶賛!」
なんだとか。
その実演販売の人が言うには、
「最近イライラすることが
多くなってきた人にオススメ!」
なんだって。
その実演販売の人が言うには、
「この包丁で、なんでも切って、
ストレス発散しちゃってください!」
とのことだ。
ただ、アリ坂は見るだけ見て買わなかった。
実演販売を見ている途中、
「欲しい!」
だなんて、
アリ坂はリアクションをしていたが、
結局、買わなかった。
結局、買わないのかよ。
まぁ、いいけど。