ショートショート メザメ

「虫も殺したことないくせに」
と言われたので、
「はぁ何? はぁ?」
と思った私は
直ぐさま虫を捕まえてきて、
その人の目の前で虫を握り潰した。

……
……
……
……
……ああ、なんて爽快感!
この手に残るむごたらしい感触!
最高じゃん!
これ完全にクセになる奴だ!
ヒャー!
気持ちぃ!

今、握り潰したのは
ミンミンとうるさいセミだけど、
次はカブトムシにいっちゃおうかな。
カブトムシは大きいし、
セミとは比べものにならないくらいの
爽快感だろうな。
これはもうカブトムシ、
いっちゃいましょうかね。
て言うか、
全部の虫いっちゃいたい。
もう一気にその欲望で
私の中がいっぱいになっちゃった。
もう完全に目覚めちゃった。
もうホントヤバいヤバい、
私の中のヤバい何かが完全に目覚めちゃった。
もう完全にお目覚め。

今度、
好きな人の前でやってみようかな。
引かれそうで恐いけど、やってみようかな。
ていうか全然引かれてもいいや。
好きな人の引く顔も見てみたいしね。
それで私のことが苦手になるなら
それでも私は別にいいし、
つまりは
それまでの人だったってだけだよ。

うん、だから、うん。
うん、やってみよ!
手に握れるだけ
虫をたくさん両手に持って、
好きなその人の前で
勢いよく虫を握り潰しちゃおう。
絶対の絶対、
信じられないくらいのエクスタシーが
私の全身を駆け巡るはずだよ。
はぁ……ゾクゾクしてきた。
やっちゃおう……。
やっちゃおう!


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