ショートショート カラス
「出来るだけのことはやりました」
と、そんな真っ直ぐな目で見つめられても、
それを言われた僕は、
全てを疎かにしてきたから、
出来るだけのことをやった
とは言えない人間だ。
だから反応に困る。
困りに困る。
とは言え、
何か反応はしなくちゃいけないから、
「あ、うん、オッケー」
と反応した。
近頃は、
素晴らしい人間と接することが多くて
嫌になる。
前は、
カラスに石を投げるのが趣味の小野くんとか、突然、
狂ったように
カラスの鳴き真似をしたくなる衝動持ちの
小野寺くんとか、
他人の自転車のカゴに
カラスの羽を大量に入れるのが好きな
小野町くんとか、
自分と同レベルの人間とばっかり
接していたから
嫌になるなんてことはなかった。
彼らは今、全員、
行方不明者になっているから、
生きているのか
死んでいるのか分からないけど、
出来ることならまた会いたい。
近頃の素晴らしい人間達じゃ、
僕の素敵な話、
例えば、
カラスに追い掛け回された話とか、
馬鹿デカいカラスを見つけた話とか、
カラスと言い合いになった話とか、
に乗ってきてくれないんだよ。
全く会話が盛り上がらない。
そういう感じだから、
最近の僕は元気ないよ。
つまらない人と化してる。
終わりだ。
何が終わりか分からないけど、
終わりだ。
あ~あ、
終わり終わり。
終わり!