罠 〜 I
とある日の大臣室
大臣 「あのコメンテーター、降ろされたそうじゃないか。」
秘書官「ああ、あの朝の情報番組のですね。」
大臣 「そう、政府やわが党になかなか厳しいツッコミを入れてた奴。」
秘書官「失言が元で謹慎、番組降板となりました。」
大臣 「まぁ、こっちとしちゃあ煩いハエがいなくなってせいせいしたがね。」
秘書官「おっしゃる通りです。」
大臣 「それにしても、きちんと裏どりしてなかったのか。」
「日頃、あれほど的確な指摘をしていたのになぁ…」
秘書官「猿も木から落ちるという事でしょう。」
大臣 「本当は、何かあるんじゃないか?」
秘書官「さすが、大臣。鋭い洞察力には感服いたします。」
大臣 「前置きはいいから、何があったんだ。」
秘書官「実は、同じ局の親しい同僚にガセネタを吹き込ませました。」
大臣 「それで、あんなに確信を持って断定発言したのか。」
秘書官「あのコメンテーター、局で敵が多くて足の引っ張り合いでしたからね。」
大臣 「官房機密費を使ったのか?」
秘書官「とんでもない、ちょっとアドバイスしただけです。」
大臣 「そりゃ、安上がりで邪魔者を始末できたな。」
秘書官「お任せください。そういう事には長けておりますから。」
大臣 「そうか、次は誰を始末してもらおうかな。フッフッフッ。」