印象に残ってるトンチキ現場の話をする。
とあるグループのおたくをしていた頃の話です。
トンチキ現場とオタク
おそらく自分が勝手にそう呼んでいただけだけれど、定期的に「トンチキ」な現場が与えられていたあの頃。
この「トンチキ」の解釈は人それぞれだとは思うのですが、自分の中の「トンチキ現場」とは「そもそもそこでライブやるひとっているんですか?」という場所で歌って踊ったり「なぜその面子に呼ばれた?」というメンバーで歌って踊ったり、「もはや歌っても踊ってもなくない!!???」みたいな謎のイベントを開催したりお呼ばれしたり……という、とにかく脳内に「!!!???」のマークが駆け巡る、予定調和とはかけ離れたことが起こるたのしくて愉快な現場を指しております。
そう、トンチキって、たのしい。
不思議なもので、イベントが告知された瞬間は「は?なんやそれ?」と怪訝な顔でスマホの画面を見つめていたはずなのに、気が付いたら新幹線や飛行機のチケットを取っていて、気が付いたら当日現場で「意味わからん現場だ!トンチキじゃ!!!」とゲラゲラ笑っている。それがトンチキ現場。
感情のジェットコースターで情緒をめちゃくちゃにされる、どこかクセになってしまう、それがトンチキ現場。
ちなみに、似て非なるものに公演中ずっと「???」のマークが脳内に駆け巡るけれどもそのままスン……と終わっていき、イベント終了後に「今日のこれは……なんだったんだ?」と首を傾げてオタク同士で顔を見合わせる、虚無現場と呼んでいた振り返ってもただただ虚無が広がる記憶もありますが、それとはまた別。
今回はそんな「トンチキ現場」について懐かしんでみたいと思います。
富士急ハイランド「特設ステージ」の罠
それはある冬の日。唐突に、本当に唐突に、運営が「富士急ハイランド・特設ステージでライブをします!」と告知をしたことからそのトンチキ現場は始まりました。
いや、単に「富士急ハイランド」でのライブであればまったくトンチキなことはなく、むしろ数多くの著名なアーティストがあそこでライブをしているような、野外ライブ会場としてはメジャーな場所であるとは思います。しかし、なぜだか、トンチキ一直線になってしまったのでした。なぜか。
(ふと思い立ち、当時の告知を見返していたのですが、告知日が12月14日でライブ開催日が12月20日でした。なんと6日前に「富士急に来いよ」の告知だった。なかなかなスケジュールで生きていましたね。怒っていいと思う。)
さて、告知からなんとなく愉快な雰囲気を感じ取り、誘われるように集まってみれば(東京駅からの直通バスで行った気がします。意外と近かった!)、そこは富士急ハイランド。
個人的には久々の富士急ということで、いろいろ乗りたい!という気持ちも生まれたけれど、本題を思い出しまずは現場の確認へ。
すると「イベント特設会場はこちら」みたいな案内板があって、それに従って園内を歩いて行くと……たどり着いたそこには、スケートリンクがありました。
スケートリンクが、ありました。
悪い予感がしつつも、いや、いやいやいや、そうは言ってもこのスケートリンクの横とかにステージ組んでそこで歌って踊るんでしょ?そうでしょう?と自分に言い聞かせながら、リンクの周辺をぐるっとひとまわりして捜索するも、ステージらしきものはなにもなく。代わりに、見たくないものを見つけてしまう。
スケートリンクに張られている氷の、そのど真ん中。
浮き島のようになっている小さなスペースに、明らかにライブ用のスピーカーとマイクが設置してある………。
今現在の状態はよくわからないけれど、当時の富士急のスケートリンクは、大雑把に言うと円形になっていて、そのリンクのなかをみんなが基本的には好きなように滑っていいようになっていたきがします。
遊園地の中のスケートリンクということもあって、ファミリーもたくさんいるような、そんな場所。
そして、そのリンクの中にはいくつか謎の小島があって、そこだけは氷ではなくて地面が芝生になっている。
島のサイズは……普通車3台が停められるくらいな、そんな大きさだったと思います。
小さくはないけど、いや、ふつうそこはステージにしようとは思わんやろ、くらいの大きさ。
しかしながら、まさに今そのうちのひとつの島に、スピーカーが鎮座していたのでした。
そして、マイクも、すでにスタンバイしている。
これはつまり、そういうことなわけで。ふつうそうはならんやろ、をやってくるのがここの運営なわけで。
スケートリンクの真ん中にステージが設置されていることを知ってしまった瞬間、まずは岸辺からそこのステージまでの距離をなんとなく目測で測ってみました。
うーん、岸辺からスケートリンクの中も、見えなくはない。広めのライブハウスの最後列よりかは、近い。
でも、決して「とても近い」というわけではない。うーん。いちおう双眼鏡は持っているけれど、うーん。どうしたものか。
などと考え込んでいたら、急に見知らぬ女性に話しかけられました。たぶんオタクのおねーさん。
「ライブ見るんですか!?じゃあぜったいスケート靴借りて中で見た方がいいですよ!!!」
本当にまったくもって知らない人だったけれど、次の瞬間には反射的に答えていました。
「ほんとっスか!!???借りてきます!!!!!」
ライブを見るためにスケートの練習をしようの巻
見知らぬお姉さんからの助言により、スケート靴を借りることになったわけだけれど、自分の記憶ではほとんどスケート経験がないので、おそらくきっとたぶん突然滑れるわけがない。
というわけで、通常は1枚しかない刃が倍ついていてお得!な2枚刃の靴をレンタルしました。なにやら1枚刃より段違いに安定するらしくて、キッズ向けのサイズもたくさん展開されているみたい。これなら安心安心。
と、思ったけれどそれでも最初はなかなかスイスイとは滑れなくて、滑るというよりかはスケート靴で氷の上を引っ掻きながら歩く感覚のほうが近かったような気もします。少しずつずりずり進むみたいな感じ。
でも最後まで結局一度も転ぶことはなかったので、富士急が二枚刃の靴を用意してくれていて本当によかったです。あれがなかったらたぶん自分はライブが始まる前に心が折れていたと思います。
ちなみに、久しぶりの富士急だったし、本当はライブが始まる前に園内をお散歩しようかな~とか思っていたけれども、けっきょくライブが始まる直前まで、スケートの練習をすることとなりそれは叶いませんでした。
いくら転びづらい靴を借りたといっても、これで1時間だか2時間だかのライブを立ちっぱなしで耐えなければいけないし、万が一いつもと違う立ち位置で現れた場合は下手から上手へ素早く動けなくてはいけない(くれぐれも周りに迷惑をかけてはいけませんが)。
というわけで、我ながらけっこう練習しましたし、ライブが始まる前にはすでに程よく疲れて、すでにへとへとになった。スケートっていい運動になるんですね。
これは結果論ですけれども、あのときスケートをしなかったらたぶんこの先の人生も自分から「よし!スケートしよう!」とは思わなかったとおもうので、あのタイミングで一度スケートを経験できたのはなんやかんやいい思い出になったな~とはいま振り返っては思います。
当時は「なんでここに来てスケートしなきゃあかんの!?」ってキレながら叫んでいたけれど。今となっては!今となってはね!!!
いざ本番。500回くらい「寒くない?」って聞かれた
練習に練習を重ねて定刻。やっと本番が始まりました。
始まってすぐ、出演者全員がステージ上から「スケートリンクって寒くないですか!?」と心配してくれました。それはそう。
けれど思い返してみても、そのときはそんなに寒さを感じていなかった気がするので、スケートで程よく体が温まっていたのかもしれません。スケートってすごい。
そして、ようやっと登場した推したち。
たしか衣装がいろんなライブ衣装の合わせ技で(ジャケットはこのライブ、中のシャツはこのライブ……みたいな。おそらく寒さ対策だったと思うのですが)、普段はあんまりそういうことしないグループだったので登場の時点で「スケートがんばってよかった……」って思った記憶があります。オタクってほんとチョロ。
曲は2曲+MCさんとのトーク。出番はそれだけ。20分あるかないかの、それだけ。
けれど、いま思い出してもたった2曲だったとは思えないほど濃い思い出だったので、それほどスケートリンクの印象が強かったのだなとしみじみ感じます。
スケートリンクの上で、スケート靴を履いて、ペンライト振り回すのすっごくたのしかったです。たぶんこの先もうしないであろう経験。
そして、推したちが歌っている間、スケートを滑っているファミリーたちが「なんだなんだ」って集まってくるかんじも、なかなかに新鮮で、よかったです。
まさかこんなスケートリンクのど真ん中で歌って踊るやつらがいるとは思うまい。オタクでさえ予想だにしていなかったのだから。
ライブはあっという間でした。そりゃ2曲だもん。
当然ながら、都内からの移動時間+スケートの練習時間のほうがぜったいに長かったと思うのですが、そんなことを感じさせないほどの充実感でした。
トンチキ現場、かくあるべし。
ちなみに、すべてのステージが終わった後、クリスマスも近いということでスケートリンク上でプレゼント交換会が行われました。
これは事前にお客さんがなにかひとつプレゼントを事務局に提出して、それを音楽に合わせてぐるぐる回していって、止まったところにあるものをもらえるというもので。
スケートリンクの上でオタクみんなで輪になって、持ち寄ったプレゼントをぐるぐる回したのすごいシュールで最後までトンチキたっぷりでよかったです。
まとめもなにもないけれど
というわけで「何故かスケートリンクの上でスケート靴を履いたトンチキ現場」の思い出でした。
お読みいただきありがとうございました。
あの日を振り返ると、あの氷の白さをありありと思い出しました。やっぱり、なんやかんや、たのしかったです。
終始「!?」で脳内がいっぱいな1日でしたが、やっぱりどうあがいてもたのしくてしかたなかった思い出ですので、トンチキ現場好きだったな~というまとめになってしまいます。
よろしければ皆様のトンチキ現場の思い出もぜひお聞かせください。