『事業目的勘定と評価範囲・評価対象プロセス』検討シートの作成
Ⅰ.はじめに
Ⅰ-1.自己紹介など
初めまして(?)Xにて日々ゲームとアニメの話をしております、組織内会計士のkazuと申します。
現在は、上場企業でJ-SOX担当をしています。
この記事は、会計系 Advent Calendar 2024 8日目の記事です。
第7日目は、アヒル会計先生の以下の記事でした。
Ⅰ-2.本稿の想定利用者
本noteは、主に『上場企業やその準備企業で内部統制(特にJ-SOX)担当になったけど、過去の経緯などが残っておらず、今後どう進めるべきか悩んでいる』という方に向けて作成しています。
Ⅰ-3.J-SOXとは
★省略★
Ⅰ-4.なぜ事業目的勘定(※)の整理などが必要か
2024年4月1日から開始する事業年度から適用されている、改訂内部統制基準・実施基準において、内部統制の評価の範囲をどのように決定するかについて会社側に検討を要求するとともに内部統制報告書にも記載を求めています。
具体的には、3月決算会社は半年後の2025年6月に公表する内部統制報告書から、下述の追加事項を加味して開示することが要求されています。
以下、内部統制基準の引用。(太字が、2023年の基準改訂点です)
『
4.財務報告に係る内部統制の報告
(1) 経営者による内部統制の報告
経営者は、財務報告に係る内部統制の有効性の評価に関する報告書(以「内部統制報告書」という。)を作成するものとする。
中略
(4) 評価の範囲、評価時点及び評価手続
① 財務報告に係る内部統制の評価の範囲(範囲の決定方法及び根拠を含む。)特に、以下の事項について、決定の判断事由を含めて記載することが適切である。
イ. 重要な事業拠点の選定において利用した指標とその一定割合
ロ. 評価対象とする業務プロセスの識別において企業の事業目的に大きく関わるものとして選定した勘定科目
ハ. 個別に評価対象に追加した事業拠点及び業務プロセス
後略』
引用おわり。
2023年改訂では、太字の部分が追加されたために従来より記載要件が踏み込んだものとなっており、同時にかつては金融庁のQ&Aに記載されていた記載例である『12.内部統制報告書の記載内容』が全面削除になっています。
これはつまり、ボイラープレート的な内部統制報告書から脱却し、各社で実態に応じた記載内容を検討し、監査法人と協議の上で、内部統制報告書を作成する事が要請されていると理解が出来ます。
図1
図2
本noteでは、内部統制基準改訂点のうち上述イ.ロ.ハ.から。イにはサラッと触れながら、ロ、ハの検討シートの例などを考えたいと思います。
ポジションペーパーとまで高尚な内容にはなっていませんので、検討シートと呼んでいます。
※:また、本noteでは、『評価対象とする業務プロセスの識別において企業の事業目的に大きく関わるものとして選定した勘定科目』の事を、短く『事業目的勘定』と呼んでいます。
Ⅱ.監査する側の視点を加味しよう
Ⅱ-1.上場企業が適用される基準や枠組み
上場企業は、金融庁から公開されている内部統制基準や実施基準に準拠し、最終目的の内部統制報告書の提出と内部統制監査報告書の受領に向けて、J-SOXを進めます。
また、内部統制基準や実施基準によって十分に言及されていない部分については、事例集やQ&Aを用いて補足しています。
この後工程として、監査法人が上場企業の内部統制を監査する際には、内部統制基準・実施基準の監査にかかる部分を基本としながらも、財務報告内部統制監査基準報告書第1号『財務報告に係る内部統制の監査』(長いので、以後、『内基報1』と呼びます)や、各監査法人内の内部統制監査の指針のようなものに準拠して監査を実施します。
一般的な事業会社においても、何か書類を作成する際にも、後工程の部門から来るフィードバックがあるなら、次回の検討時には予め自部門の検討でも含めておくと思います。これは監査法人の監査を受ける場合であっても同様だと思います。
こういうと「監基報とか死ぬほどあるんだから無理だよ」というツッコミが入ると思いますが、こと内部統制、とりわけJ-SOXに関する内部統制監査については、財務諸表監査に比べると影響を受ける監査の基準や監基報は多く無いため、比較的手が出しやすいのかなと感じます。
本noteでは、『2025年3月期の内部統制報告書の充実』という目的から、内基報1をつまみ食いする方法を記載しています。
なお、各監査法人内の内部統制監査の指針は法人外秘なのであらかじめ会社側も把握することは不可能なため、検討外としています。
Ⅱ-2.内基報1とその改訂について
内基報1とは、2023年の内部統制基準の改訂に、財務報告の内部統制監査基準報告書という現在の立ち位置に移行した、
『1.本報告書は、企業会計審議会の要請に基づき、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」及び「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」を実務に適用するに当たって必要となる内部統制監査の実務の指針として公表するものである(A1項からA11項参照)』(1項参照)
上述、第1項の通り、「内部統制監査の実務の指針」であることから、会社の作成した内部統制報告書(および、その前提となる各検討調書や評価調書)を監査法人が監査する際に考慮している指針です。
内基報1は、他の監査基準委員会報告などと同様に、前半に『要求事項』と呼ばれる監査人が実施するべき事項と、後半に『適用指針』と呼ばれる前段の『要求事項に至った背景や、詳細な検討事項、それまでに棄却された考え方』などが記載されているので、まずは『要求事項』を読んだうえで、『適用指針』を読む流れで進めば理解が進みます。
本noteでは、2024年11月15日に改正の公開草案がでたこともあり、せっかくなので、本改正案の記載をもとに検討を実施したいと思います。
「財務報告内部統制監査基準報告書第1号「財務報告に係る内部統制の監査」の改正」(公開草案)の公表について (掲載日2024年11月15日号数1号[意見募集期限]2024年12月16日)
なお、直近の改訂公開草案の概要については、先日、てりたま先生がnoteにまとめられていましたので、割愛します。
↓
Ⅱ-3. 緩ーく内基報1を使ってみよう
さて、実際に会社サイドで内基報1を考慮するにあたって、最初から網羅的に加味できればよいですが、いきなりハードルを上げるのはかなり大変ですので、今回は緩くハードルを下げ、まずは情報が欲しい部分から検討しようと思います。ざっくりとは以下の手順を想定しています。
①内基報1をPDFで開く
②検討したい内部統制基準の語句で検索する
③要求事項を読む
④要求事項に関連する『適用指針』を読む
⑤後述Ⅲの検討シートに随時、必要な検討要素を書き込んでいる
⑥実際に検討を進める。
⑦ ②に戻る
このうち、一部を実際の画面と合わせて示します。
①内基報1をPDFで開く
緩く使用する場合には、PDFなど文字検索ができる形で開くのがおすすめです。
図5
②検討したい内部統制基準の語句で検索する
今回でいえば、2025年3月期の内部統制報告書の記載に向けた改訂対応が最優先と考えられるため、例えば『評価範囲』などの文字で検索してみましょう。
図4
検索を実施すると、『要求事項』の29項から『4.評価範囲の妥当性の検討』の項目があり、内部統制監査で評価範囲のお話をするときは、監査人はまずはここを読むのでは?とあたりが付き、次に、この要求事項に関連する『適用指針』を読むことでより詳細な検討要素を把握できるわけです。
Ⅱ-4.(参考)割と本気で検討する場合
ちなみに、私はですが、今回の基準改訂を受けて下図の様なExcelを作って、論点毎に行を作成して、『a.評価の基準→b.評価の実施基準→c.監査の基準→d.監査の実施基準→e.(できるところから)内基報1』と層別に列を作成して、横軸で一気通貫で視認できる様にしています。
図5 内部統制基準に対するポジションペーパーの例(実際には右端のほうに、結論も記載しています。)
Ⅲ.検討シート(案)
ここから、具体的に、監査基準・実施基準の内部統制報告書に記載するべき、評価範囲決定の判断事由イ.ロ.ハ.を整理するための、検討シートを作成します。
もちろんですが、このシートは本などに乗っているわけではなく、私のオリジナルなので、当然ながらこのシートに準拠する必要もないですし、いろいろなアプローチの一つですので、同じような資料を作っている会社さんもあるでしょうし、全然違った形で評価範囲決定の判断事由を整理している会社さんもあると思います。
Ⅲ-1.全体観
①前提
・P社グループは、日本に本社を置く製造業のP社を中心としたグループ
・子会社A~Hおよびその他の会社はP社が100%親会社である。
図6.P社グループ会社の構成概要
図6のグループ会社の構成は後に回すとして、
まずは、検討シートの全体感を示します。
検討シートのB列~G列までは 有価証券報告書ベースの連結BSPL数値の5期推移を記載します。これは、過去と現在の自社におけるPL・BSの構成比を比較することで、過去に決定した方針と変える必要があるか否かを気付く安くするために作成しています。
また、H列I列には、売上高や総資産などのキーとなる指標や割合と比較するべく、構成比を出せるようにしています。
K列には、比較的見やすい位置に、この勘定科目をどう扱うかについて、結論を記載しています。ただ、この結論までは、以降のⅢ-2~Ⅲ-4までの検討事項を反映した結果となるので、検討シートを作成してる早期にはまだ記載できません。
M列以降は、質的な影響を記載していますが、これはⅢ-4にて後述します。
図7.検討シートの全体感
Ⅲ-2.『イ.重要な事業拠点の選定において利用した指標とその一定割合』に関する検討
イ.に関連する内基報1の記載を見ると、以下のように記載されています。
「
《(3) 業務プロセスに係る内部統制の評価範囲の検討》
《① 重要な事業拠点の選定》(A66項及びA67項参照)
33.監査人は、経営者が企業集団の経営管理(権限委譲の状況や事業上のリスク、プロセスや経営管理手法の同質性等を含む。)の実態に応じて事業拠点を識別しているかどうかを検討しなければならない(A68項参照)。
34.監査人は、経営者が採用した重要な事業拠点の選定指標が、企業集団における各事業拠点の事業活動の規模を表す指標として妥当であるかどうかを検討しなければならない(A69項及びA70項参照)。
35.監査人は、選定された指標に対する一定割合の決定を含む、経営者による重要な事業拠点の選定手法や選定結果が適切であるかどうかを検討しなければならない(A71項からA75項参照)。
」
結構重要なポイントなのですが、ここだけでもnote1つかけると思いますので細かい点は後日にするとして、ここでは、33項、34項を意識して、
『P社グループは、中期経営計画において、3年後に連結売上高を1,500百万円とすることとしており、営業利益よりも売上高にフォーカスした計画を策定していることから、P社グループとしては、『連結売上高』を重要な事業拠点の選定において利用する指標とする、また、その一定の割合は国内外の主要拠点を基準とした3分の2としている。』と簡易に設定します。
Ⅲ-3.『ロ.評価対象とする業務プロセスの識別において企業の事業目的に大きく関わるものとして選定した勘定科目』に関する検討
ロ.に関連する内基報1の記載としては、以下が挙げられる。
『
あ
《② 重要な事業拠点における業務プロセスの識別》(第36項参照)
《ア.企業の事業目的に大きく関わる勘定科目の選定》
A76.内部統制評価の実施基準では、一般的な事業会社の場合の「企業の事業目的に大きく関わる勘定科目」として、売上、売掛金及び棚卸資産が例示されている。「企業の事業目的に大きく関わる勘定科目」は、財務諸表を利用する一般投資家等の利害関係者が、企業の主たる事業の経営成績・財政状態等を判断するために重要と判断して着目する勘定科目と考えられる。
A77.売上、売掛金及び棚卸資産は例示であり、製造業や物品販売業等の一般的な事業会社の場合においてもこれらの三つの勘定科目を重要な事業拠点における「企業の事業目的に大きく関わる勘定科目」として機械的に選定するのではなく、個別の業種、企業の置かれた環境や事業の特性等に応じて、経営者が適切に判断して選定する必要があることに留意する。
A78.一般的な事業会社以外の場合には、業種の特性に基づいてどのような勘定科目が「企業の事業目的に大きく関わる勘定科目」に該当するかどうかについて、慎重な判断を行う。売上や売掛金に相当する勘定科目は企業の収益獲得活動そのものに関連するため、一般に「企業の事業目的に大きく関わる勘定科目」に該当することになると考えられる。どのような勘定科目が企業の事業目的に大きく関わるかは、業種の特性に基づいて判断することになる。その際、主たる事業活動に不可欠な要素の内容と規模を考慮することも考えられるが、それによってのみ判断するのではなく、勘定科目の不正リスクの存在の程度を勘案することに留意する。例えば、連結損益計算書上、売上総利益を開示している事業会社においては、売上総利益に影響を与える勘定科目を「企業の事業目的に大きく関わる勘定科目」とすることを検討するほか、売上総利益を開示していない業種においても、営業費用に占める人件費の割合が高いサービス業などにおける人件費、設備が事業資産の大きな割合を占める業種における有形固定資産などを虚偽記載が発生するリスクを
検討の上、「企業の事業目的に大きく関わる勘定科目」と経営者が判断することは考えられる。また、複数の事業セグメントから構成される企業グループにおいては、事業セグメント単位で「企業の事業目的に大きく関わる勘定科目」が異なる可能性もある。なお、企業集団が異なる業種の重要な事業拠点で構成される場合、それぞれの重要な事業拠点が属する業種の特性により企業の事業目的に大きく関わる勘定科目を経営者が慎重に検討することが適当と考えられる。
A78.一般的な事業会社以外の場合には、業種の特性に基づいてどのような勘定科目が「企業の事業目的に大きく関わる勘定科目」に該当するかどうかについて、慎重な判断を行う。売上や売掛金に相当する勘定科目は企業の収益獲得活動そのものに関連するため、一般に「企業の事業目的に大きく関わる勘定科目」に該当することになると考えられる。どのような勘定科目が企業の事業目的に大きく関わるかは、業種の特性に基づいて判断することになる。その際、主たる事業活動に不可欠な要素の内容と規模を考慮することも考えられるが、それによってのみ判断するのではなく、勘定科目の不正リスクの存在の程度を勘案することに留意する。例えば、連結損益計算書上、売上総利益を開示している事業会社においては、売上総利益に影響を与える勘定科目を「企業の事業目的に大きく関わる勘定科目」とすることを検討するほか、売上総利益を開示していない業種においても、営業費用に占める人件費の割合が高いサービス業などにおける人件費、設備が事業資産の大きな割合を占める業種における有形固定資産などを虚偽記載が発生するリスクを検討の上、「企業の事業目的に大きく関わる勘定科目」と経営者が判断することは考えられる。
』
図8.事業目的勘定の設定
Ⅲ-4.『ハ.個別に評価対象に追加した事業拠点及び業務プロセス』に関する検討
ハ.の個別に評価対象に追加した事業拠点および業務プロセスについては、2023年の内部統制基準の改訂から、『リスクが大きい取引を行っている事業又は業務プロセス』の部分について、詳細な例示が9つ示された。
この9つについて、関連する内基報1については、A84が、その他 見積の不確実性などの事項を勘案する方法として、A85などに記載がある。
例えば、リース資産 については、金額的重要性が 選定した比率である『連結総資産額の5%未満ではあるものの、リスクの大きい取引として、新リース会計基準の適用が予定されていること、また、見積の不確実性があること』から、個別に評価対象に追加する事業プロセスと決定している。
図.9.金額的重要性が低くても、基準に従って判定をしている例
以下、関連する内基報1のさだめ
『
《ア.リスクが大きい取引を行っている事業又は業務に係る業務プロセス》
A84.リスクが大きい取引を行っている事業又は業務としては、財務報告の重要な虚偽記載に結び付きやすい事業上のリスクを有する事業又は業務(例えば、金融取引やデリバティブ取引を行っている事業又は業務や価格変動の激しい棚卸資産を抱えている事業又は業務等)や、不動産、金融資産の流動化又は証券化取引等複雑な会計処理が必要な取引を行っている事業又は業務、複雑又は不安定な権限や職責及び指揮・命令の系統(例えば、海外に所在する事業拠点、企業結合直後の事業拠点、中核的事業でない事業を手掛ける独立性の高い事業拠点)の下での事業又は業務を行っている場合等が考えられる。
《イ.見積りや経営者による予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセス》
A85.例えば、引当金、固定資産の減損損失又は繰延税金資産(負債)など見積りや経営者による予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセスは、財務報告に及ぼす影響が最終的に大きくなる可能性があると考えられる。各種引当金については、引当の対象になる事象(例えば、貸倒引当金の場合の金銭債権の総額)の状況等についても留意する。見積りや経営者による予測を伴う勘定科目の計上は、通常、決算・財務報告プロセスに関係している。
《ウ.非定型・不規則な取引など虚偽記載が発生するリスクが高いものとして、特に留意すべき業務プロセス》
A86.例えば、通常の契約条件や決済方法と異なる取引、期末に集中しての取引、過年度の趨勢から見て突出した取引等非定型・不規則な取引を行っている場合には、定型的な販売、購買、支払といった反復継続する取引を処理する業務プロセスと同水準の内部統制が適用できないリスクがあることから、虚偽記載の発生するリスクが高いものと考えられる。
《エ.個別に評価対象に追加する業務プロセスの評価》
A87.財務報告への影響の重要性を勘案して、事業又は業務の全体ではなく、特定の取引又は事象(又はその中の特定の主要な業務プロセス)のみを評価対象に含めれば足りる場合がある。
A88.A84項からA86項では、ある事業拠点の重要な虚偽記載のリスクが高い業務プロセスを個別に選定することが前提となっていることから、同様の業務プロセスが他の事業拠点に存在しても当該他の事業拠点での取引量が少なく財務報告への影響が軽微である場合は評価対象としないことができる。財務報告への影響の判断に当たっては、例えば、一定の金額的な重要性を超える勘定科目残高や取引量を有する事業拠点の業務プロセスを一律に評価対象にすることを求めているわけではないが、監査人は、重要な虚偽記載をもたらす可能性が高い業務プロセスを経営者が適切に選定しているかどうかに留意する。
Ⅲ-5.本検討シートの効用
本検討シートは一度作成すれば、終わりなのではなく、毎年、可能であれば毎四半期に検討を実施し、過去の検討結果が現在でも妥当かどうか、当期において変更する必要がないかについて、
過去の検討過程に照らして首尾一貫した検討を可能とするものです。
Ⅳ.まとめ
Ⅳ-1.結局、内部統制報告書はどこまで書くの?
上述Ⅲのように、内部統制の事業目的勘定や評価範囲、個別評価事業拠点や勘定科目を検討し終わったとして、結局、内部統制報告書はどこまで書くのでしょうか?
結論としては、『会社の方針による』という身もふたもない一言で終わってしまうかとは思います。
例えば、他社事例などはあまり気にせず自社が正しいと信じる形で開示したい会社と、業界として・上場企業としてあまり『浮きたくない』という会社とでは、開示の書きぶりもずいぶん異なるかと思います。とはいえ、後者の場合であっても、内部統制基準・実施基準は改訂されているので、今は亡きQ&A上の過去の記載要領そのままだと、金融庁から指導もされる可能性があるので、事前に監査法人と相談して落としどころを探る、という形になるとは思います。
ここで、「結局、監査法人と相談して決めるなら、Ⅲの検討シートなんていらないのではないか?」という批判もありうるとは思うのですが、
内部統制基準・実施基準上で、明確に「内部統制報告書には、決定の判断事由を含めて記載することが適切」とまで言われていることから、どこまで書くかが決め切らないにしても、『社内で検討して、一定の答えを持っておかなくてよい』というものではありません。
Ⅳ-2.スケジュールはどんな感じが想定できるの?
監査法人に書きぶりを相談するとして、スケジュール的に逆算しますと、
6月中旬…内部統制報告書の記載検討時…開示支援会社や監査法人側に様々な会社の内部統制が集まってくるので、自社の記載が飛びぬけているか否かを確認できる。
↑
その前に
↑
3月中旬まで…期末監査で監査法人の繁忙期が開始する前に、自社の内部統制報告書の書きぶりについて、どういうパターンがありうるのか、できるだけ複数パターンを作成し、監査法人にドラフトを提出しておくとよいと思います。(期末に入ってしまうと、監査人側も忙しくなってしまい、6月の開示情報のドラフトは後回しにされてしまいますので。)
↑
その前に
↑
3月の上旬までに…社内である程度、内部統制報告書の書きぶりについて、上位者や他部署に事実確認も含め確認してもらう必要があります
↑
ということは、その前に
↑
(既に終わっているかとも思いますが)2月の上旬ごろまでに…内部統制報告書の前提となる、検討シートを監査法人に確認してもらい、考え方に大きな認識相違がないかについて、再度確認してもらう
というスケジュールが必要かと思われます。
Ⅳ-3.今後、内基報1がさらに改訂されたときには、どういう風にアプローチするの?
内基報1の改訂が公表される際に同時に出される新旧対比表を利用します。
新旧対比表のPDFの中で、上述の『Ⅱ-3. 緩ーく内基報1を使ってみよう』の②のように、必要な語句で検索すると、まずはその語句で影響のある改正事項が検出できるので、らくちんです。
なお、私の場合は、上述、『Ⅱ-4.(参考)割と本気で検討する場合』で記載した検討Excelと、新旧対比表PDFを使用しています。検討Excelには、内基報1の各プロセスが列挙されているので、新旧対比表の項番号に基づき、検討Excelを更新しています。
Ⅴ.あとがき
大見得をきって、12月8日公開にしておりましたが、時間が足らず、主要な部分Ⅲ.検討シート(案)がうっすい感じになってしまい本当に申し訳ありません。
とても悔いが残るので、年末に完全版をリリースして、別途Linkを張りたいと思います。頑張ります。
以上、読んでいただき、ありがとうございました!