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Tinderで出会った男が、心理戦仕掛けてきた話②

衝撃キッスから一夜開け、ポカンとしたまま、また一夜を反芻しながら休日が終わった。
あれ以降お互いメッセージを送ることはないまま、月曜日を迎えた。

私は仕事をしながら、彼のことを思い浮かべる。
まあ、本当にいっときの夢をみたのだろうと、いつもの通りに訪れる仕事の業務をこなし、休憩時間に昼食を摂る。
自分から連絡をすることのない私は、彼から連絡がきたらいいのに、と淡い期待を抱いてしまい、都度Tinderを開いては彼のプロフィール画像を見て、キスまでの流れを思い返す。これを何度も繰り返し、いかに自分の行動が気持ち悪いか、今になって分かる。

夜に再度Tinderを開くと、彼からメッセージが届いていた。

「花さん、よかったら連絡先交換しますか・・・?」

まじか。

本当に連絡がきた。

そう。私たちは深夜に散歩に行き、長々と話し込み、キスで解散したのだ。お互いにもう再会はないかもしれないと考え、連絡先は交換しなかった。
このとき彼はすでに東京へ帰っている最中のようだった。

上がる口角を抑えきれなかった。
もちろん返事は、「交換しましょう。」

「出会いたい」という名目ではなかった私だったが、甘く、楽しく、刺激のあった、たった1日のことを忘れられなかった私は、彼とどうなりたいのか?そんな疑問も湧いた。

LINEを交換した日の夜、彼と電話をした。

「こうしてまた話せることができて嬉しい。」
「もう会えないかもしれないじゃないですか。・・え?そんなことない?また会ってくれるんですか?」
「好きだな、と思っても付き合えないじゃん?この歳になって好きだけじゃどうにもならないことってあるってわかった」

彼は思ったことをすぐに口に、素直に口に出す性格のようだった。

「キスしたじゃないですか」

え、そこ言及する?自分からしてきたくせに、なんか「私がした」みたいな口ぶりじゃん・・・。
というか、「好きだな」ってなんだ?え、私のことが??
そんなすぐに人のことを好きになるのか?女慣れしているなこの人。と、私の心がつぶやく。

私は、彼のキスは、「記念キス」だと思っていた。

もう会えないかもしれないから、「とりあえずキスだけしとくか」というノリで軽く接吻を交わしたのだろう。

(今冷静になってnoteを書いているけど、ほんまに遊び人じゃないかこれ??なんでこんなに悩んで、ときめいてたんや・・・。

すみません、普通に自我出ました笑 でもこうして整理するのって大事だなと・・・。書いているうちに気づくこともあるし、たまにこういう脱線もするかもしれません)

そして①では書かなかったのだが、彼は初めましてにも関わらず、帰り際に「好きになってる」と伝えてきたのだ。

顔。彼の顔は凄まじい効果がある。彼の顔が、私の好みでなければ、きっと私はすぐにブロックしていたし、キスなんて許していない。初めましてなのに「好き」と伝えてくる人に惹かれないし、ましてや警戒するのが普通だ。
彼には普通の意識をとられてしまう。許してしまう。そんな気がした。
きっと彼は、そんな私をも見透かしているのだろう。「別に嫌がられていない」「むしろ嬉しそう」そんな風に感じていたのではないだろうか。そして、その行動には自信がある。すなわち彼は、今までも他の女の子にも同様のことをし、嫌がられていないのだ。きっと、これまでさまざまな女の子に「許されてきた」のだろうと感じた。ふむ、ここまで頭が理解しているのに、感情というものには勝てない弱い意志を持つ自分を恨む。27歳にして好きな顔のタイプが現れ、今になって沼に落ちるのか?こんないとも簡単に?

葛藤とは裏腹に、彼はよく電話をかけてくれるようになった。
私は拒む理由もなく、むしろ嬉しいと感じてしまい、その電話の誘いを断ることはほぼなく、平日の夜にもほぼ毎日電話をしていた。
電話の内容もさまざまだったりする。お互いの過去の恋愛の話であったり、Netflixで話題になっているドラマや昔観ていたアニメ、聴いている音楽、仕事の話など、多岐に渡りほぼ毎日話していた。時折初めて会った日の話のことをされたり、私に「好き」と伝えたりして、その加減が絶妙に上手いなと思った。今思えばこれも心理的な作戦の一つではあのかなと思った。

彼は本当によく喋る。彼は自分の話をすることが好きだ。私の話も聞いてくれるけど、自分の話に戻されてしまうことがよくある。説明をしてくれたり、自分の話をするのは上手い。私は自分から自分の話をしたり、自己開示が得意ではないので話してくれる分にはとても楽に感じていた。

夜に電話をすることが日常的になってきた頃、次に関西へ来る日を伝えられた。「デートしませんか?」ときた。私はこの時点で彼のことがかなり気になる存在となっていた。早く会いたい、そう思っていたので、もちろん会う約束をした。

こうして私は、1ヶ月ぶりに彼に会うことになった。
次に会うとき、彼はどんな表情をしているのだろう。
私はすでに彼に惹かれていた。




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