ドイツ・メルケルさんのお人柄
元ドイツ首相のアンゲラ・メルケルさんは、2021年12月の退任まで、16年間に及ぶ長期政権を維持しました。
彼女のお人柄について4つのポイントを紹介します。
①宗教
メルケルさんはキリスト教ルター派のプロテスタントです。信条には「他者奉仕」があります。
2015年末、ドイツはシリア難民を約100万人受け入れることを決定しました。
国内には反対意見がありましたが、メルケルさんは受け入れを決断しています。
決め手には、他者奉仕を大事にする考えがあったのだと思います。
②両親
父ホルスト・カスナーさんはポーランド生まれのベルリン育ち、職業はキリスト教ルター派プロテスタントの牧師です。
母ヘルリントさんも同じくポーランド生まれです。
カスナー(メルケルさんの旧姓)家のバックボーンには第二
次世界大戦で多くの被害を受けたポーランドがありました。
一家はもともと、西ドイツの都市ハンブルクで生活していましたが、ホルストさんはメルケルさんが幼児の時に東ドイツへ移住を決意します。
彼はキリスト教的な価値観と、東ドイツの社会主義的な価値観を融合することを目指していました。
③育った環境
メルケルさんはマツの森に囲まれ湖がある自然豊かな場所で育ちました。
付近には農場と、牧師の研修施設、障碍者のためのプロテスタント系施設があり、メルケルさんを含む子供たちはいつも一緒に仲良く遊んだそうです。
しかし、楽しい事ばかりではなく、東ドイツでは国家保安省(略称「シュタージ」)の役人が市民を監視し、情報管理をしていました。
シュタージは一部の一般市民を非公開協力者となるよう説得し、監視網を拡げていました。
後に、メルケルさんの近しい友人や、政界の上司が「実はシュタージの協力者だった」ことが判明したことがあり、彼女は大きなショックを受けました。
ベルリンの壁崩壊が1989年で、メルケルさんが35歳になるまで東ドイツでは監視だらけの不自由な環境でした。
メルケルさんはこの環境に器用に適応し、あまり目立たずに、控えめに生きる術を身に付けました。
この性質は、政治家となった後も強力な武器として活きることになります。
④科学
メルケルさんは子供の頃から成績優秀で、特に数学とロシア語が得意でした。
ライプツィヒ大学では物理学を専攻し、博士課程を修了しました。
その後、東ドイツ科学アカデミーに職を得て国のために研究に取り組みますが、設備が不十分で思い通りにいかず、やや憂鬱な日々だったようです。
科学的な手法や考え方は、メルケルさんが所属政党の報道官を担っていた際や、ドイツ首相となった後も正確性という点で高い評価を得ました。
<感想>
頭脳明晰で、道徳心を重視するメルケルさんが時代の激流を乗りこなし、権力まで操ったという奇跡のような現象ですね。
個人的には、彼女の人権問題を重視する姿勢に、誠実さを感じました。
遅ればせながら、アンゲラ・メルケル元ドイツ首相に、「お疲れ様でした」と言いたいです。
<参考文献>
・「メルケル 世界一の宰相」
(著:カティ・マートン 訳:倉田幸信/森嶋マリ)
・「アンゲラ・メルケル 東ドイツの物理学者がヨーロッパの母になるまで」
(著:マリオン・ヴァン・ランテルゲム 訳:清水珠代)
・「世界最強の女帝 メルケルの謎」
(著:佐藤伸行)