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【楽曲感想petit】廻花「スタンドバイミー」

推しがXの
#廻花_スタンドバイミー
(https://x.com/hashtag/%E5%BB%BB%E8%8A%B1_%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%9F%E3%83%BC?t=TehRIN1FE5chswtPTqyvmQ&s=09)
で感想を募集していたので、自分の心の動きも記録するために、noteに書いてから投稿します。はなまる。

歌声のこと

ことしの1月にはじめて廻花の声でこの曲を聴いたとき、
「自分の声の魅力をなんて自分でわかっている曲なんだ」
としみじみしたように思います。
正確には、この一曲に、というよりも、廻花が書く曲にはすべてそう思う。

YouTubeで出た「テディベア」もそうだった。
「ひぐらしのうた」もそう。

廻花の声は、だれよりもやわらかで、壊れそうに繊細で、すこしだけさみしそう。
そういう曲を、大事に大事に、誰が触れても壊れてしまいそうな心の奥底のガラスの部分を取り出すように歌うとき、「ああ、彼女はこういう曲を歌うひとなんだ」とすごくすとんと腑に落ちる。

「スタンドバイミー ミぃぃ ミぃぃぃぃぃぃ」と音が伸びる。
秋のライブの舞台でダンサーさんたちがこの音に乗せてくるくる回っていたのを忘れない。
掠れそうな、囁くようなスタンドバイミー。
とびきり傷つきやすい人の心の大切な部分に、この音なら静かに入っていって、そこに座れる、とおもう。

内容のこと

廻花が書く歌詞の感性が好き。
この世で好きな詞を書く人を何人か挙げるとき、五本指を折る間に、今年デビューしたばかりの廻花を納得して入れたいと思うくらい好きだ。

小さな頃は わからなかった
伝う体温に 写しきった記憶
小さな頃は 僕を守った
おとぎ話がほこりをかぶって

廻花チャンネルの歌詞より

この歌詞を、ライブで初めて見たとき、まだ断片的な理解をしていて、なんとなく、
「幼い頃のあたたかな思い出が、側にいてくれて、スタンドバイミー、守られているっていう曲だ」
と思っていた。

でもちがう。
2度目のライブを観、リリースされた曲を聴いてあらためて気づいた。

もっと、複雑で透明な感情なのだ、たぶん。
小さな頃の記憶ももう確かではなくて、大人になってしまった今では陳腐になった気もしていて、では今の自分に寄り添うものは?と思うとなんにも無い気さえして。
でも、願うのだ、祈るように。スタンドバイミー。

かなしみだって嬉しいのだ。君の姿になってそこにいてくれるなら。

どっちが正解の曲なのか、みたいなことではない。
2度聴いたら、2つの感情が生まれた。きっとこれからもまた。

たぶん、廻花がつくりたいのは、そういう、よろこびにもかなしみにも決めきれない、小っちゃな万華鏡のような世界なのだと思う。

ライブのこと

花譜 4th one-man live 「怪歌」
そこで、廻花は自分がつくる曲を
「どこにいるのかわからないときの曲を、今度は自分で書いてみたい」
と言った。

花譜 4th one-man live リビルド「怪歌(再)」
そこで、廻花は
「廻花が書く曲は自分のほうを向いていると思っていたけど、こうしてみんなに聴いてもらうようになったら、それだけじゃなくなるね」
と言った。

全然こちらに合わせなくていいよ、好きなアーティストがやりたいことやってるのが嬉しいんだから、と思う。
一方で、そう、そういうところまで含めてあなたなのだから、素敵だよ、とも思う。どっちだってうれしい。そしてどっちかだけだってもんでもない。廻花自身がたぶん自覚しているように。

私は昔から、ひとりごとみたいな、誰かが普通の会話じゃ聴いてもらえない心のひだをひたすら打ち明けるためにあるアート作品のことがとっても好きだ。自分のそういう心のひだも、すくい取ってくれる気がするから。
花譜の音楽の聴き方も、結構こっち側なんじゃないかな、と話に聞いていて思うことがある。
だから廻花の音楽のこと、最初からこんなに好きだなと思ったんだとも思う。

でも、リスナーにあいさつするために書いた「かいか」も、素晴らしい完成度で長く愛されるべき作品だし。
いかにもライブで盛り上がりそうな「東京、ぼくらは大丈夫かな」だって早くも、最近の私のお気に入りの一曲になっているし。

本人が自分で「決めないようにしよう」って言ったのが、楽しみだ。
次はなにがでてくるのか、次の彼女はどこにいるのか。

私は遠くでゆるりと廻花の声を聴いている人として、ときどきこの世界にふれては驚嘆したいと思う。

映像のこと

映像を観てから感想を書こうと思って溜めていたのですが、え!? なにこの、MV素晴らしい。今までの廻花PVの中でも一番好きです。それぞれ違う意味でどれも好きではあるのですが……

画面を満たす鮮やかな青色に、目の前にあるのにどこか掴みきれなくて夢のような青春が映し出されていてすごくいい。
眩しさとともに疎外されているような寂しさがちらつきます。

音合わせで滑るスケートボードも素晴らしい。
あの子はあんなに気持ちよさそうにこの時間をスケートしているのに、私はずっと地面に立っているだけだ。みたいな感覚が画面沿いに湧いてくる。

さらに、「大人になんてなりたくないな」……の印象的なつぶやきに重なるセックスシーン。
喜ばしいことのはずなのに、やっぱり心だけ取り残されたみたいな寂しさが爪痕をのこす。

最後にしゃがみこむ少女は……生理痛ですか?
おとなになるからだ、こどものままの心、泡のような見逃すと消えていく感情を刻み込むように残したMVでした。曲の解釈としても、それにとどまらない一個作品としても素敵だった。

これからも応援しています。
私の愛するものを生み出す皆が、それぞれに大切なものを守ったまま、いつもとびきり幸せでありますように。

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