「ジェンダー不平等は災害に対して社会を脆弱にする」
青森資源循環協女性部会が「〝男女共同参画〟と〝防災〟」テーマに研修会を実施
さまざまな分野での女性活躍が目立つ昨今ではありますが、日本の職場等における男女格差はまだまだ大きいのが現状です。
世界経済フォーラムが発表した2023年版ジェンダーギャップ指数では、日本は146カ国中なんと125位。しかも、前年の116位からダウンという、由々しき事態となっています。
なかでも男社会と言われてきた廃物処理業界で、女性活躍推進を目指して業界団体である全国産業資源循環連合会(全産連)に女性部協議会が立ち上がったことは以前にも取り上げましたが、全産連傘下の都道府県協会にもいくつか女性部会が立ち上がっており、それぞれ独自の活動を行っています。
そんな中の一つ、青森県産業資源循環協会女性部会が先日青森市内で興味深い内容の研修会を開催しました。
そのテーマは、「〝男女共同参画〟と〝防災〟」。皆さんは男女共同参画と防災を結び付けて考えたことありますでしょうか?恥ずかしながら私はありませんでした。
防災に男女共同参画の視点が必要
講師を務めたのは一般社団法人「男女共同参画地域みらいねっと」代表理事の小山内世喜子さん。
1994年以来ジェンダー平等を目指して活動を続ける小山内さんは、2011年の東日本大震災以降「男女共同参画と防災」をテーマに地域防災人材育成や男女共同参画の視点を取り入れた防災教育、避難所運営訓練などに取り組んでいます。
2012年からの12年間で65カ所、7,000人以上を対象に多様性配慮の避難所運営訓練を実施。この10年間で120回、延べ8,000人に対して防災地域人材育成事業を行っています。
小山内さんは、「東日本大震災の時に防災に男女共同参画という視点がなかったことで、本当に大変なことがたくさんありました。
災害はいつ起きるかわからない、皆さんにとっても目の前にあるもので、そうした時に同じ困難を繰り返さないためにも、防災に男女共同参画の視点が必要だということで取り組んでいます」と話しました。
阪神・淡路大震災で、兵庫県の死者数は女性は男性の1.4倍だった
途中参加者にこんな質問も。
「阪神・淡路大震災で、兵庫県の死者は男性よりも女性が多かった。〇か×か」
皆さんどちらだと思いますか?…正解は〇で、女性が3,680人、男性が2,713人と女性の方が約1,000人多く、1.4倍だったそうです。
要因としては単純な筋力や体力の差異、人口高齢化の男女差などもありますが、高齢者の介護や乳幼児等のケアの役割を担っていることでの逃げ遅れ、さらには男女の賃金格差による住居等の違いなども影響したと、小山内さんは指摘しました。
日本だけでなく、たとえばイスラム圏では、女性が人前で泳ぐことはもちろん一人で外出することも制限されていて、洪水などが発生すると土地鑑がなく泳げない女性が犠牲になることが多いようです。
自分事としてとらえて、一人ひとりが行動に移すことが社会を変えることにつながる
小山内さんは、「国連防災世界会議でも指摘されていますが、ジェンダーの不平等は、社会を災害に対して脆弱にする大きな要因となります」と強調しました。
災害が起こった際に設置される避難所も、女性の意見を反映しないことで「プライバシーが守られない、性暴力のリスクが高まる」といったことが実際に多く起きていると言います。
「災害時には平常時における社会の課題が顕在化する」と指摘した小山内さん。
確かに男女共同参画と防災は切り離すことのできない問題です。
小山内さんは、「ジェンダーの問題を解消していき、せめて146カ国中80位くらいになれば脆弱性改善に向けて進むのではないかと思います。自分事としてとらえて、一人ひとりが行動に移すことが社会を変えることにつながります」と訴えました。
この内容は男性にもぜひ聞いてほしい
研修会を総括した同女性部会の田中桂子部会長(ローズリー資源代表取締役)は、「今回は女性部会の研修会として実施しましたが、この内容は男性にもぜひ聞いてほしいので、今後親会(青森県産業資源循環協会)の研修にも取り入れられると良いと思っています。
また、40代以上の私たち働く世代や経営層は学生の時にこうした勉強をしたことがなく、今の若い世代の方がしっかり学んでいるのが実情。
協会等でしっかりと学んで、それぞれの企業でもできることを実践していければ良いと感じています」とコメントしました。
「女性ならではの」といった言葉は今では禁句となっていますが、これまで男性主導で行われてきた業界の研修会と違った視点の、有意義な研修会だったのではないかと感じました。