イッシュ神話の謎
※ポケットモンスターブラック・ホワイトのストーリーに関するネタバレを含みます
ポケットモンスターブラック・ホワイトをプレイしていて気になった点について、作中の文章を元に、自分なりに考えたことをまとめてみたいと思います。
(※ブラック版をプレイしたので、基本Nがゼクロム、主人公がレシラムを従えた前提で話を進めています。
※ひらがなモードの文章を元にしているため、漢字モードと少しニュアンスが異なる場合があります。)
セッカシティの謎
セッカシティで街の人達に話を聞いていた時に、とある事が少し引っかかりました。
このように、この土地では、「理想」「ゼクロム」に関する伝承ばかりが強く伝わっています。
しかし、ソウリュウシティでシャガとアイリスから聞いたイッシュ建国神話では、「どちらが勝った」「どちらが強かった」などという話は一切出てきませんでした。
それなのに、なぜこの土地でのみ、ゼクロムの話が優位に伝わっているのか。
おそらく、その原因となるのは、セッカシティの側に立つ「リュウラセンの塔」です。
リュウラセンの塔について
リュウラセンの塔について、タウンマップにはこう書かれています。
「いつ、誰が建てたかもわからない(それほど古い)」「イッシュで最も古い」
この文章より、私は今まで、この塔が建てられたのは「双子の英雄」がいた時代であり、レシラムとゼクロムがまだ「1匹のドラゴンポケモン」だった時代だと考えていました。
古代の城について
また、作中でアララギ博士が「リュウラセンの塔とリゾートデザートで見つかったふるいいしは、同じ時代を示す成分が含まれている」という旨の発言をしていたため、古代の城もまた、双子の英雄が居た時代に建てられた物だと考えていました。
そして、古代の城が滅びた理由は、シャガ達が語った神話の中にあった「レシラムとゼクロムがイッシュ地方を稲妻と炎で滅ぼした」事だと考えていました。
しかし、これだと「セッカシティにゼクロムの伝承が優位に伝わっている」謎が解けません。
そこで、1つの仮説を立てました。
それは、
「イッシュ建国神話は2つあった」
というものです。
この根拠について述べていきたいと思います。
イッシュ建国神話について
先ほどから何度か引用している「シャガとアイリスが語る神話」ですが、アイリスは最後にこう言っていました。
「だって ゼクロムも レシラムも
みんなのために がんばって
あたらしい くにを つくったんだもん!」
私はこれを、「レシラムとゼクロムが、双子の英雄と共に新しい国を作った」事を意味しているのだと勘違いしていました。しかし、もしそうだとするとアイリス自身の発言に矛盾してしまいます。彼女は初め、こうも言っていたのです。
「その いっぴきの
ドラゴンポケモンは
ふたごの えいゆうと ともに
あたらしい くにを つくり
ひとと ポケモン
しあわせな ひびを すごしていたんだ!」
つまり、「双子の英雄」が国を作った時はまだ、レシラムとゼクロムは「1匹のドラゴンポケモン」だったのです。
そのため、「レシラムとゼクロムが頑張って作った新しい国」は、「双子の英雄」が亡くなった、かなり後に出来た物だと考えられます。
そして、ここで語られる「新しい国」を、レシラム、ゼクロムと共に作った「英雄」がいたのだと考えられます。それこそが、セッカシティで口伝えられていた「英雄」だったのではないでしょうか。
「双子の英雄」が「1匹のドラゴンポケモン」と共に作った「新しい国」
「英雄」が「レシラムやゼクロム」と共に作った「新しい国」
どちらも「イッシュ地方」「英雄」という言葉が使われているため紛らわしいですが、「イッシュ建国」は2回行われていたのです。
そして、その2つの建国神話がごちゃ混ぜになった状態で後世に伝えられていたのです。
セッカシティに伝わる「理想を追い求めた英雄」の話と、シャガ達が語る「双子の英雄」の話は、そもそも全く違う出来事を表していた。だからこそ、セッカシティに伝わる英雄譚には偏りがあったのでしょう。
(ややこしいので、この2つを区別するためにここでは「双子の英雄」と「英雄」といったふうに呼び分けます。)
2つの「新しい国」
また、「英雄」も2人おり、それぞれがレシラム、ゼクロムに認められ、イッシュに2つの国を作ったものと考えられます。
ライトストーンとダークストーンが発見された場所から察するに、
ゼクロムに認められた英雄は、リュウラセンの塔の付近に、
レシラムに認められた英雄は、リゾートデザートの付近に、
それぞれの国を作ったのでしょう。
そしてレシラムに認められた英雄が建てた王城こそが、古代の城だったのです。
このように、古代の城でも偏った伝承が聞けるため、セッカシティで聞ける伝承が理想に寄っていたのも、国が作られた中心地だったからでしょう。
古代の王国が滅んでしまった原因はわかりません。
「激しい 戦いで 傷つくと 岩のように 固まり 黙考して 心を 研ぎ澄ませる」とされているヒヒダルマが、城の周りで多数固まっている事を考えると、痛ましい出来事が起きたのかもしれません。
レシラムとゼクロムがストーンになった状態で発見された事から考えると、新しい国を作ってもなお争いを続ける人々は、2匹に愛想を尽かされてしまったのでしょうか。
リュウラセンの塔が建てられた目的
では、リュウラセンの塔は一体何のために作られたのか。アララギパパはこう言います。
「リュウラセンのとう は……
イッシュの くにが できるまえの
おおむかしから そびえたち
さいじょうかい では
でんせつの ドラゴンポケモンが
りそうを おいもとめる
にんげんが あらわれるのを
まっていた…… そう つたわっておる」
この発言から考えると、リュウラセンの塔を建てたのはゼクロムと思われます。
おそらく、レシラムと共にイッシュ地方を滅ぼした後、新しい国をつくるため、自分と共に理想を追い求めて国を作る「英雄」を待つために建てたのでしょう。
イッシュのくにができるまえ、という言い方のため、リュウラセンの塔は「双子の英雄」が国を作る前から存在した、という風に考えてしまいそうになりますが、実際はむしろ、双子の英雄が作った国が滅ぼされた後に建てられていたのです。
英雄とN、ゲーチス
セッカシティ付近に国を作った英雄ですが、BW本編のメインキャラクター、「N」「ゲーチス」との類似点が見られます。
「敵には稲光で刃向かう」「多くの民は憧れひれ伏し」というのは、まさにゲーチスが、Nとゼクロムを使ってやろうとしていた事です。
BWでは「異なる価値観や存在を受け入れる事」「自分と違う存在を認め、それでも一緒にいる事」の大切さが、作中で何度も何度も繰り返し描かれています。そんなBWにおいて、ゼクロムの力で無理矢理「敵」をねじ伏せ、民をひれ伏させたという「英雄」は、作中で悪役として描かれていたプラズマ団とリンクする存在として置かれているのではないでしょうか。
またBWでは、Nとゲーチスが過去の王族の血を引く者である事を仄めかすような描写がチラホラあります。これらの事から、おそらくNとゲーチスはセッカシティに国を作った英雄の子孫であると考えられます。ゲーチスは自身の祖先の行いを知り、Nに同じ事をさせる事でイッシュを牛耳ろうとしたのでしょう。
余談ですが、その英雄の名こそが「ハルモニア」だったのではないでしょうか?
自分と意見の異なる存在を敵と見なし、容赦無く稲光で焼き払った者に「異なる物同士がぶつかり合う事なく和合している状態」を表す「ハルモニア」という名が与えられたと考えると、なんとも皮肉な話です。
ソウリュウシティのバージョン違い
ブラック版とホワイト版で大きく異なるソウリュウシティ。これもまた、セッカシティの英雄によるものではないでしょうか。
ゼクロムがリュウラセンの塔を建てたブラック版では、理想を追い求めるセッカシティの英雄が、そばにあったソウリュウの民にも理想を追い求めさせた。その結果、新しいもの・よりよいもの(=理想)を追い求める今のソウリュウシティになった。
反対に、レシラムがリュウラセンの塔を建てたホワイト版では、真実を追い求めるセッカシティの英雄が、そばにあったソウリュウの民にも真実を追い求めさせた。その結果、昔から続いてきたもの・確実に良いと言えるもの(=真実)を追い求める今のソウリュウシティになった。
リュウラセンの塔やセッカシティのすぐ側にあったソウリュウシティは、英雄の影響を色濃く受ける事になったのではないでしょうか。
英雄と主人公
イッシュの土地関係から見ても、Nが暮らした城はリュウラセンの塔の近く、主人公が暮らしたカノコタウンは比較的古代の城の近くにあります。
また、カノコタウンのすぐ側にある18番道路は、わざわざ「リゾートデザートと 地続きだったと 指摘する 研究者も いる」と書かれています。この文章は主人公と古代の城を作った英雄との繋がりを表しているのでしょうか?